わまのミュージカルな毎日

主にミュージカルの観劇記を綴っています。リスクマネージャーとしての提言も少しずつ書いています。

キャストの皆様への思い(後編)

2011年07月03日 | 太平洋序曲2011年公演
さて、語りきれそうですかね。ここから、長くなりそうな・・・

石鍋多加史さん。
ソンドハイム氏ご自身が一番好きな「木の上に誰か」。「太平洋序曲」の一番のテーマも入っているといえる一大ナンバーを本当に素晴らしく歌いきって下さいました。白い布をかけられて、亡くなったことが示唆されるのですが、きっとあなたの見たことは、次の世代へと語り継がれました、と声をかけたくなるそんな印象です。この歌のメッセージがきちんと伝わってきました。
ちょっとコミカルな神官も大好きです。政治をもてあそんでいる感じがしました。今の政治家を揶揄していらしたのでしょうか?

畠中洋さん。
あまりにもご活躍の場面があり過ぎて語りきれないぐらい。
私が大好きなフレーズ「他に何か」。その痩身のお姿からは想像もできない厚みのあるお声で「他に何か」。そう、何もない・・・と思わずつぶやいてしまいたくなります。
女将はもう語ったと思うので、飛ばして。フランス司令官。もう、花道を行ったり来たり。それでも、息も上がらず歌いきる畠中さん。もう、すごいとしか言いようがありません。
そして、ラストの殺陣。それまでのご活躍を見ているのですが、やはり畠中さんは日本人なんだなぁと思う場面です。もしかして、最多国際人?殺陣の場面では、一度ぐらい万次郎に勝たせてあげたい、と思うのは私だけ?

やはり、残ってしまった初演組。
11年間いろいろ観てきていますので、いろいろな舞台でのことが思い出されて、「太平洋序曲」で暴れまわると形容した方がふさわしいぐらいのご活躍ぶりに、嬉しいだけでは片づけられない思いなのです。
深呼吸して、心を落ち着けて書きます。

岡田誠さん。
岡田さんのバリトンがなくては絶対にこの舞台はあり得ないです。
「木の上に誰か」も「プリティ・レディ」も。あの低音があるからこその美しいメロディです。
そして、思うのはこの9年で、ものすごく演技力がついたということです。勿論、歌も以前より素晴らしいのですが、歌の色がすごく増えたと感じです。
「菊の花茶」は以前も楽しかったです。「木の上に誰か」が本当に変わりました。武士のしたたかさが出ました。それゆえに、歴史の目撃者は見るだけではないということがすごく重く感じられるようになりました。
語り部を呼ぶ場面は、観客に背を向けているのですが、セリフがこもることなく以前にもまして美しいのにはびっくりします。意外に、気付かないのですが、後ろ向きでセリフを言い、観客に伝えるのは難しいことなのです。

さけもとあきらさん。
畠中さんと双璧をなす忙しさ。歌詞も忙しいものばかり。
「ボーラ・ハット」で畠中さんもさけもとさんも、ちょこちょこ出てきていろいろやるのですが、これって本当に難しいと思うのです。演技や歌の邪魔にならないように、うまいタイミングで出なければならないですから。きっとこのお二人は「ボーラ・ハット」を歌ったも素晴らしいと思います。
さけもとさんと言えば「四匹の黒い竜」にして「菊の花茶」にしても、目の動かし方がとにかく素晴らしい。前者は、思わず後ろになにかあるのか、と思ってしまう強い眼差し。後者は、目だけでセリフを語ってしまいますからね。そうそう、結構ツボだったのが「菊の花茶」で原田小姓を突き飛ばすところ。原田さんも凄いです。本当に緊迫感が溢れる場面にするために、身体を張っていると思いました。でも、見ているときは、おっ!!!!!ぐらいしか思っていませんので、苦笑。
イギリス司令官はもうお話しすることもございません。が、一体普段、どれほど早口でお話しする方なのかという興味が湧いてしますよね。(まあ、私の人生経験からいうと、そういう方は、普段のんびり屋さんなんですけどね。)

園岡新太郎さん。
泥棒さんなのに、いいよ、盗んで、と言ってしまいたくなるような、悪党ぶりかと思えば、幕府に選ばれたすごい武士。はたまた、語り部。強く、厳しく師匠であり父親。その変幻自在の演技。艶やかなお声。江戸時代に絶対にいるこういう侍。という素晴らしい剣術。殺陣じゃなくて、剣術だと思うのですよ。迫力すごいですからね。
先日も書きましたが、なにがすごいって、園岡さんは一人で舞台を仕切る場面が多いのです。一歩間違えば、緊張感が緩んでしまうのです。それがないばかりか、すっかりリラックスした観客を、また大混乱の幕末ワールドに引き戻して下さるのです。
この幕末を描く作品に絶対にいらして下さらなくてはならない方だと私は確信しています。

さて、トリは・・・
佐山陽規さん。
勿論語りたいのはあの場面にこの場面なんですが、その前に・・・
亜門さんも人使いが荒いというか、苦笑。「黒竜」のときに孔子の話が挿入されるのですが、そのときに、屏風の狭い位置にじっとしているのが火消し役の佐山さん。02年の時からツボだったのですが、まさか、今回も佐山さんがおやりになるとは!きっと若手に譲ると思っていので、初日に「佐山さんだ!」とわかった時に、一人大笑いしてしまいました。本当にすみません。
「ボーラ・ハット」の机運びだって・・・と思って香盤表をみると、他にやる人がいない?
勿論、これは佐山さんに限った事ではありませんが、あの場面、黒服で登場するためには、ロシア司令官から刺客ではなく、黒服への着替えという作業が増えるわけです。本当に、袖にいるのに休む暇がない!
さて語ると言えば「菊の花茶」。セリフの中にメロディーがある歌。その上言葉遊びもしている。そして、演技・・・私は、この作品の歌詞を殆ど暗記しています。楽譜はさすがに頭に入っていませんが、この音が出たら歌、という感じはわかってるのです。この歌は出を間違えたら、一生もとに戻れないほど淡々とした歌です。で、あれもうすぐ出なのに、というそのぎりぎりのところまで、将軍の妻の叫び声を聞いて止めて・・・ぱっと歌に入るのです。この切り替えが凄い。演技の中に歌があるのですよね。
ロシア司令官は相当いろいろなところで語りましたが、他国の司令官があんなに頑張るのに「コートに触るな」の一言で、おいしいところを全部持っていきますからね。

語り尽くせない「太平洋序曲」です。
明日(正確にはもう(十数時間後)に千秋楽を迎えます。
気持ちの整理はもちろんします。
でも、これからも再演にむけて、悪あがきを続けていこうと思うのです。
その、エネルギーを全身に浴びてこようと思います。

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