わまのミュージカルな毎日

主にミュージカルの観劇記を綴っています。リスクマネージャーとしての提言も少しずつ書いています。

Composiesta 第3回

2005年10月26日 | 観劇記
すみだトリフォニーホール 小ホール

「Composiesta」はコンポジエスタと読むそうです。作曲の「composition」と昼寝の「siesta」を組み合わせた造語とのこと。
若い作曲家が新作を発表する場でした。殆どがいわゆる現代曲です。
今回は8点の新作が発表されました。
出品者でもいらっしゃる元川威夫さんが、他の作曲者に今回の作品の内容についてインタビューをしてから、演奏を聴くという形式で進んでいきました。
アンケートがあり、書くつもりでいたのですが、演奏の間に客電が落ちてしまうのでメモ程度にしか書けませんでした。新作の発表ということなので、もし、出品した方に参考になればと少し感想を書いてみます。

少し、私事を。
ピアノとバイオリンは長年レッスンを受けていました。子育てが少し楽になったらまた演奏活動を再開したいと思いつつ、本業があまりにも忙しく、今はもっぱら聞いたり、見たりする側に徹しています。

今回、新作発表ということで、曲についての感想を中心に書こうと思ったのです。しかし、司会の元川さんもおっしゃっていましたが、曲は演奏され、聴く人がいて存在し、評価されるわけです。ですので、演奏家の力量も曲に対する感想を大きく左右すると思います。また、私自身、この曲ならどう演奏するかな、という点に重点がいきますので、感想も紙の上にある楽譜へのものではなく、演奏に対してに偏ってしまうかもしれませんが、どうぞご了承下さい。

1. Air~Electoronica+
作曲、ピアノ演奏 山田香さん
コンピュータで作った音をCDに吹きこんで、それとピアノのコラボレーション。
曲は揺らぎのような音の運びで、美しい空気を感じさせるものでした。ただ、もっとコンピュータ音をメインにするような部分があったほうが、もっと変化があって良かったのではと思いました。そして、奏法の問題だと思うのですが、せっかくの風のような音の運びが途切れることがあり、曲の良さを伝えきれていないと感じました。

2.外郎(ういろう)売り
作曲 鈴木一真さん、フルート 一戸敦さん
楽譜代がたくさん並んでいて、まず、日本語で鈴木さんが「外郎売り」を朗読してくれます。そして、次に、フルートで演奏します。ですから、立っている位置で、日本語ではどんなことを言っていたところかがわかります。
とても楽しい試みだと思いました。オペラが誕生したドイツやイタリアは言葉自体が音楽的であると言われ、日本語はかなり単調だと言われています。しかし、こうして聞いてみると日本語もとても音楽的であることがわかります。でも、少し気になったのは、日本語を音楽にするとこの作品のように渋い感じなのだろうか、ということでした。リズムに関してはとても共感できましたが、旋律は日本語の透き通った感じがもっとあるといいなぁと思いました。

3.SONATINE pour trompette et piano
作曲 井上透馬さん、トランペット 渡辺隆太さん、ピアノ 堤雅那子さん
井上さんは、渡辺さんに演奏してもらうつもりでこの曲を書かれたそうです。なるほど、と思いました。とても、かっこいい演奏でした。同じ主題を縦方向と横方向に展開させていくという手法での作曲だそうです。こういう作曲の仕方は知らなかったのですが、現代音楽の難しさをちょっと感じました。私にとって、音楽は楽しむものであるので、心からあふれ出たものだと思っていました。そうではなく、パターン化していくというのでは、少し私の楽しみ方とは違うのだなぁと感じました。

4.Dazzling drops
作曲 南寛子さん、フルート 神田勇哉さん、ビオラ 藤原歌花さん、ピアノ 川原彩子さん
題は訳すと「きらびやかな雫」だそうです。曲の説明で、流れる水の方を意識しているとおっしゃっていましたが、確かにそうでした。雫を感じられなくて、せっかくつけた題名が勿体無いと感じました。流れに乗っている曲はそれで魅力的ですが、やはり、水が雫であったときの雰囲気が感じられるともっとよくなると思います。

5.点から線へ
作曲 加藤めぐみさん、バイオリン 竹内弦さん、ビオラ 滝本麻衣子さん、チェロ 本倉信平さん

6.積極的消費による環境保護
作曲 元川威夫さん、オーボエ 本多啓佑さん、ビオラ 吉田篤さん、チェロ 横山二葉さん
5と6を聞いて、現代音楽について考えるところがありましたので、ここで触れたいと思います。
加藤さんは、演奏家にいわゆる現代曲用奏法を求めることをやめていらっしゃいました。
また、元川さんはクラッシクな音の運びになっても、それが自然であれば、あえて現代曲の音運びには直さなかったとおっしゃっていました。
加藤さんの曲は、確かに聴きやすい曲でした。が、現代曲の演奏法を特に演奏家に求めないとしても、どうしてもそちらの方になっていました。もう少し、バイオリンが音をしっかり響かせて弾いてくれたら、さらに印象は違ったと思います。後半は美しい音色を響かせて演奏していたので、その違いがはっきりしていました。
元川さんの曲も、割とクラシカルな感じでしたが、やはり奏法が現代曲用なのです。もう少し、単純な演奏の方が、この曲にはあっていたと思います。
現代曲が面白くないとは私は感じていません。ただ、自由な、と言う建前と、奏法の画一化がちょっと矛盾してしまい、本当に音を楽しむことを忘れていると感じました。弦楽器の伸びやかな音はやはり聞く側の心を豊かにするのです。あまりにも現代奏法にこだわると、なんだかこもった音しかでなくなりそうで不安です。現代音楽が生まれてからかなり経ちますから、さらなる現代音楽へと変化してもいいのではと思っています。その際に、音楽は日常を豊かにする存在でありつづけることを忘れないで頂きたいと思います。

7.Gone with the Cloud
作曲 栗橋寛子さん、ピアノ 友清祐子さん
主題がありますが、その記憶を出来るだけ消したり、遠ざけることを目指されたそうです。
雲が流れていくような曲でした。とても、さらりとしていました。

8.よしおとジョンとイゾルデ
脚本・演出・ピアノ 田中敦さん、作曲 福井崇、ソプラノ(イゾルデ) 木村聡子さん、テノール(ジョン)  村上勧次朗さん、バリトン(よしお)  佐山陽規さん。

まず、あらすじのようなものです。
よしおはジョンに「返せよ。」と言います。どうやらジョンはいろいろとよしおから物を取っているらしい。しかし、ジョンは盗っていない、自分を信じて欲しいと。
イゾルデが次に、自分の内面について歌い、なぜかお餅になってしまったのです。
よしおとジョンがやってきて、なぜ餅があるのか考えます。すると、餅がしゃべります。イゾルデなのかと2人は思いますが、餅は最初は自分が誰だかわからないようなことをいいます。よしおは、餅でもイゾルデを愛していると歌います。自分も餅になりたいとまで。
餅は、自分がイゾルデであることを自覚します。餅になったイゾルデはよしおに優しい言葉をかけますが・・・
ジョンは本物のイゾルデと幸せになっていたのでした。

というよう感じだったと思います。
何しろ、この作品の直前までは、ちょっと怖い顔をして一つ一つの音を聞き逃さないようにと緊張して聞いていたのですが、この作品はコメディだったのです。なかなか気持ちが切り替えられなく、作品に感情移入するのに時間がかかりました。と言うわりには、大笑いしていましたが!
作品としては、題名からして三角関係なのかと想像できます。お餅になってよしおを騙すというのは、ちょっと単純すぎるのかなぁと思いました。時間が短いので、そういう突拍子もない運びも仕方がないのかもしれませんね。
曲については、現代曲をずっと聴いてきた耳にはとても心地よい、割と普通の旋律でした。ジョンが歌った、自分を信じて、という内容の歌はとても気持ちと旋律が一致する曲でした。何曲かは、かなり現代曲的で、こういう音の運びなのかと不思議な気持ちになる部分もありました。
イゾルデの曲は全体に非常に高音で、日本語を響かせるには少々難しい旋律なのではないかと思いました。
もう一つ、ジョンとよしおが二人で歌った曲だと思うのですが、フレーズと日本語があっていない、具体的にいうと、拍子の頭であり、その上フレーズの最高音に単語の途中の音が来ている箇所がいくつかありました。翻訳の場合、仕方がないと思いますが、最初から日本語の場合、直せるはずなので、私としてはとてもがっかりしてしまいます。勿論、わざとそういう運びをして、何かの効果を期待するということがあるのかもしれませんが、今回はそういう効果はとくに見当たりませんでした。
歌が伴う場合、日本語への意識はもっともっとあって欲しいと思います。

この作品については、演奏家である歌い手の皆様を、他の作品でも観ていますので、ついつい、この方たちが歌われてもかなり違和感があるという部分があり、作品への感想が厳しいものになってしまいました。

新作なので、作品の仕上がりがギリギリだったとお聞きしました。勿論、台本と譜面を見ながら、でも、演技もするという演じ手には過酷な舞台だったと思います。
上で触れました、フレーズと日本語が合っていないというところも、佐山さんや村上さんは途中で切れている単語を自然に繋ぐように歌われているのです。が、続くとやはり気になってしまいます。

短時間の上演、短期間での仕上げと言うことで、3人の役柄の背景をよく理解できない部分はあります。まあ、それは観客の想像に任せるという作品なのかも知れません。
コメディなのですが、パァーと明るいというよりは、内側に向かうおかしさです。
イゾルデはあくまで普通の女性という気がしました。あまり深く描かれていないので、木村さんも手探りだったのではないかと感じました。
ジョンはかっこいい、要領のよい男性という感じでしょうか。村上さんの優しく伸びやかな歌声で、イゾルデでなくても女性は誘惑されるかも思いました。でもちょっと冷たいところがもっと前面に出ても役柄が際立ったかもしれません。まあ、あくまでも、私には、ジョンは要領が良過ぎると感じたゆえの感想ですが・・・
このジョンの要領の良さに対し、人が良過ぎるというのか、疑うことを知らないというのか、よしおには笑ってしまいました。でも、お餅になったイゾルデだからお餅でもいいのか、お餅はお餅として好きなのか、ちょっと謎めいたところもありました。まあ、一途に愛を貫き通すというところは同じなのかもしれませんが。この役を佐山さんがなさったわけです。よしおの歌や台詞に特別笑いをとる部分があるわけではないのですが、普通疑うでしょ!と思うことに対し、真面目に考えるので、そこが笑いのツボになっていました。お餅に対して切々と愛を語る歌は説得力があり、お餅になったイゾルデにもよしおの気持ちが届き、お餅が生き続けるという奇跡も起きるだろうと感動もするのですが、もう可笑しくて可笑しくて、大笑いをしてしまいました。よしおという役柄は3人の中でははっきりしたものだったと思いますが、短時間であれだけの複雑な旋律の歌をこなし、内向きのコメディを演じるのは大変だったのではないかと、今、舞台を振り返ると感じます。

作品内容はもう少し練ったほうが良いと思いましたが、演じ手のそれぞれの力量で、行間を埋めた作品という感じです。

などなど、しっかりと分析したようなことを言いましたが、正直なことを言いますと、久しぶりに佐山さんの生の舞台を拝見し、歌声をお聞きし、ああ!なんてステキなお声なんだろう、と劇場に響く歌声にただただうっとりとしていたのでした。その一方で、その歌声に大笑いしているわけで、私自身に、一体どんなファン?と突っ込んでいました!

かなり長くなりましたが感想は以上です。

アスペクツ・オブ・ラブ

2005年10月10日 | 観劇記
2005年10月10日マチネ  自由劇場 2階4列目下手

フランスの作家デイビッド・ガーネットの小説をアンドリュー・ロイド・ウェバーがミュージカルにした作品です。
ミュージカル・ナンバー「Love Changes Everything」はとても心に残ります。このナンバーがどういう風に作品に絡んでいるのかを知りたい、というのが劇場へ向かう一つの理由でした。

あらすじ。
約17年間にわたる、2人の男と3人の女の恋模様を描いています。
アレックス(石丸幹二さん)は17歳のとき、女優ローズ(保坂知寿さん)とひょんなことから叔父の別荘で甘い生活を送る。様子を見に来た叔父ジョージ(村俊英さん)にローズは心惹かれる。ローズは舞台に戻るとアレックスと別れる。
二年の兵役を終えアレックスは叔父のところへやってくる。ローズが叔父と住んでいることを知る。叔父ジョージはアレックスとローズがやり直すことを望み、ベニスにいる元の愛人ジュリエッタ(大鳥れいさん)のもとに向かう。ところが、ローズはジョージの後を追う。
失意のアレックスは兵役へ戻る。
叔父のジョージとローズは正式に結婚し、娘ジェニー(八幡三枝さん)が誕生する。
12年の時が流れ、アレックスはローズに再会。ジョージとジェニーが住む、あの懐かしい別荘に招かれ、一緒に過ごすようになる。日々美しくなるジェニー。ジェニーはアレックスに恋する。戸惑うアレックス。ジェニーとアレックスの関係を心配したジョージは発作を起こし死亡。
葬儀の場でアレックスとジュリエッタは話しにだけ聞いていた相手に初めて出会い、互いに心惹かれる。アレックスに一緒にいて欲しいと願うジェニー、そしてもっと深くそれを願うローズを振り切って、アレックスはジュリエッタとの新しい生活へ踏み出していく。

こう書くと、すごいお話です。勿論、こんなお話と知って観劇したわけです。というか、こんなお話だから余計にあのステキな音楽がどういうふうに絡んでいるのか、知りたくて仕方なかったのです。
観劇して、とてもいろいろな感想が生まれる作品だろうなぁ、ということを感じました。それゆえに、ちょっと現実離れした内容でも、多くの人々に愛されるのだと思います。私、という一人の人間でも、観る時が違えば、まったく違う感じ方をすると思います。「アスペクツ・オブ・ラブ」という題名は、愛がいろいろの局面を持っているという意味だけではなく、受取る側もいろいろな局面に出会うということを意味しているのかなぁなどと思います。

悪者と言い切れないとは思いますが、ローズの気まぐれやわがままが人間関係を複雑にしていることは間違いないと思います。そういう役を演じるのは、一歩間違うと本当に嫌な人間になりますが、保坂さんの作り出されたローズは、自分に正直に生きている女という、比較的肯定的な印象でした。
ローズに振り回されるアレックスの石丸さんは、青年のときと、大人になってからの雰囲気の違いがステキでした。とても好感がもてました。
おいしい役はジュリエッタですね。最後の展開は違和感がありますが、ジョージとローズのわがままを許す大人の女性として描かれています。大鳥さんの雰囲気にぴったりです。

ウェバーさんのミュージカルですから、全編歌です。台詞でもいいのではというところまで歌です。その台詞でもいいのでは、という部分での演じ手の力量があまりに差があり、今ひとつ舞台に引き込まれないところがあったのは残念でした。
でも、それの方が良かったかもしれません。あまりに引き込まれると、ちょっと抜き差しならないお話に巻き込まれますから(笑)。

幸せを感じる一瞬、もしかしたら誰かを不幸にしているのかもしれません。
でも、人を愛する気持ちは簡単にはとめられないものです。
人生はなかなか難しいですね。