わまのミュージカルな毎日

主にミュージカルの観劇記を綴っています。リスクマネージャーとしての提言も少しずつ書いています。

フレディ~少年フレディの物語~

2003年03月21日 | 観劇記
(06年7月に整理し、掲載したものです)

2003年3月21日ソワレ アート・スフィア7列目センター

2000年夏の初演から回を重ね、「フレディ~少年フレディの物語~」(以前は「葉っぱのフレディ」という題名)は、100回公演となり、私もこの記念の公演を観劇しました。そこで気合を入れて感想を書こう!と思ったのですが、この作品はあまりにも素晴らしく、感想を言葉にするのが本当に難しいのです。 なぜ、難しいのかと考えていましたら、先日、音楽を紹介する小冊子を読んで、はっとしました。
 「文字はどうしても音楽に勝てない。つまり、文字は考えるもので、音楽は感じるものであるということ。」
 まさに、「フレディ」というミュージカルは、「感じる」作品だと思います。
 そんな作品に対して、文字で、それも下手な文章で感想を書くことにどれほどの意味があるのかと思いつつ、ミュージカルは一応「歌詞、台詞」という文字の部分もあるので、「感じる」だけではなく、少しは考える余地もあるかと感想を書いてみたいと思います。

 あらすじです。
 10歳の少年フレディは原因不明の病気になり病院に入院する。フレディより年上(15歳ぐらい)で、先に入院していたダニエルと仲良くなる。ダニエルはカエデの絵を描きながら、季節の移り変わりを見つめ、フレディにもそのことを語ってくれます。フレディのパパもママも心配しながら、フレディの回復を祈ります。フレディの友達クレアもアルフレッドも退院を心待ちにします。しかし、フレディはカエデの葉が枯れる冬、クリスマスを迎え、死と向かい合うことになってしまいます。
 以上です。

 私は、この作品に、2回目の公演だった01年春、今回と同じアートスフィアで出会いました。昨年の春にも観劇しました。この3回の観劇でキャストが少しずつ変わりましたが、主役の島田歌穂さんが変わらないこと、そして作品のすばらしさが大きいので、どの舞台も完成度の点では、他の作品の追随を許さないという感じがします。
 そして、少しずついろいろなことを変え、さらに良い作品になるようにカンパニーがいつも前向きであることに、頭が下がる思いがします。

 変わったことは、以下のようなことです。
 第一は、題名ですね。「葉っぱのフレディ」から「フレディ~少年フレディの物語~」に変わりました。舞台の内容が予想できる内容になりましたね。「葉っぱのフレディ」だと絵本のイメージが強すぎて、葉っぱしか出てこないような感じですから。この絵本もすごくいいですから、是非一家に一冊!

 第二は、歌詞が少し変わりました。「もう一人の僕」というところが「もう一人のフレディ」になっていました。「フレディ」を強調したいということはわかりますが、あえて変えなくても、と思いました。もうひとつメインテーマである「命の旅」が題も歌詞も「命の詩(うた)」になりました。ミュージカルだし、歌を口ずさむという点では、「詩」というほうがいいですね。

 もうひとつは、演出がかわりました。といっても、これは私の記憶もあやふやですし、いつも感激してしまうということは、どれもいいということなんでしょうね。 間違いなく演出が変わっているのは「イブのこもりうた」の場面です。この歌は、フレディの病状がかなり重く、クリスマスも病院で迎えなければならないという悲しい場面での歌です。イブは世界の人々が心優しく過ごせるようにと歌うのです。フレディの話ではありますが、この作品が地球上の生命あるものすべてに思いを馳せていると感じる場面です。この歌は、パパ(佐山陽規さん)、ママ(友里倖子さん)、アルフレッド(杉江真)さん、クレア(史桜さん)の四人が美しいハーモニーを聞かせて下さるのです。そして、今回は、サークル席というのか、中二階の最前列に二人ずつ立たれて、歌うという演出になっていました。私は、一階席ほぼ中央に座っていたので、これぞ「ステレオ」というか、降り注ぐ歌声に心地よさを満喫させて頂きました。

 変わらないというか、これがあるからこの作品が好きという点を少しお話します。
 脚本がいいですよね。子どもが観劇するということを想定しているのでしょう。前半はコミカルでフレディはいたずらばかりします。また、子どもたちの大好きなゲーム、それも最新のゲームを取り上げます。フレディとダニエルの会話に登場する攻略本はまさに我が家に数ヶ月以内にやってきたものが登場するので、苦笑しつつも子供たちが舞台にひきつけられていくのがわかります。  フレディのいたずらに共感する子どもたち。そして、大人はパパやママの不安に共感していきます。フレディの元気な姿が段々なくなっても、「さよならは、別れの挨拶」、「変わることは普通のこと」という言葉に、「死」を受け入れるフレディを、子どもも大人も応援したくなります。そして、「死」を思うより、「生」を見つめなおすことができるのです。そこが、この作品のとても素晴らしいところだと思います。

 この脚本にとてつもない厚みを加えるのが、音楽です。17のナンバー(内何曲かはリプライズ)が、心に深くしみ込んでいきます。
 音楽自体も素晴らしいのですが、演奏がアコースティックにこだわっている点も私は本当に好きです。島健のピアノもいいですし、他の弦楽器も効果音まで出すのですから!!!音楽と演奏の素晴らしさが、ちょっともの悲しく、心を閉じてしまいそうな話への扉をそっと開いてくれる、そんな感じがします。

  「変わらない」そして「変わる」が交錯するのがキャストです。 初演からずっと出演なさっているのは、アルフレッドの杉江真さん、クレアの史桜さん、ナースの安井千波さん、あっ、勿論フレディの島田歌穂さんも、です。 ダニエルは昨年の春から堀米聰さんになりました。パパとママは公演毎に結構変わりますね。
私としては、歌穂さんがしっかりとした色を出していらっしゃるので、キャスト変更でまるで違う印象ということはありませんでした。
 そして、昨年の春とキャストが変わったのはママの友里さんだけでした。歌声には安定感があり、ごくごく普通の母親という感じで好感が持てましたが、もう少し最初のほうは明るく振舞ってもよいのではと思いました。
 堀米さんのダニエルは、ますます磨きがかかりましたね。前半の明るさが、生きることのすばらしさや、楽しさをより伝えてくださり、ラストへ向けて、観客が悲しいだけではなく、がんばろうと思う気持ちを持てるような演技でした。
 杉江さん、史桜さんは安定しています。でも、とても新鮮なところがとても不思議です。クレアが「いつか大人の恋をしても、フレディとのことを忘れない。」と歌うときの史桜さんがとても好きです。女の子の素直な思いがいつ聞いても新鮮です。


 この作品を観劇する動機のひとつは、佐山陽規さんが出演なさるからなわけですが、普通のパパと感じつつも、とても魅力的です。そして、なぜそんな風に感じるのかを考えるのですが、言葉にすることが難しいほど感動させてくださるのです。的確な表現とは思えませんが、佐山さんの演じられているパパといっしょにフレディのことを思う時間を共有したと感じるからでしょうか。

 100回記念でしたので、歌穂さんからのご挨拶がありました。途中で言葉に詰まってしまった歌穂さん。100回の重み、イラクでの戦争が始まり、命の重さを感じての涙だったと思います。
 この作品がオリジナル・ミュージカルとして上演され続けることを期待する気持ちがこの拙い文章で伝わっているか、本当に不安になります。100回を迎えたから次は1000回ね、と語呂合わせの言うつもりはありません。心から、いろいろな年齢層に、そして全人類に観劇してもらいたいです。今すぐ見て欲しい人はあの二人です。もし、劇場で隣同士に座って観劇したら、すぐに戦争やめる気になるだろうなぁ・・・。

 記念のTシャツまで頂き、満足しきってアートスフィアを後にしました。  

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