わまのミュージカルな毎日

主にミュージカルの観劇記を綴っています。リスクマネージャーとしての提言も少しずつ書いています。

34丁目の奇跡

2005年11月29日 | 観劇記
05年11月29日ソワレ 
かめありリリオホール 10列目センター

心から楽しめるミュージカルでした。今年、私が観劇した作品は、結構重い内容のものが続いていたので、久しぶりに肩の凝らないウキウキするような作品に出会えて嬉しかったです。

あらすじです。
ところはニューヨーク。時はある年の11月。
サンクスギビングディのパレードが盛大に行われようとしていた。この日から約一月、クリスマスまでは街がとても華やかになる時期で、大人も子供も浮かれているのだった。が、10才位の女の子スージー(橋本愛奈さん)は、同じアパートに引っ越してきたばかりのフレッド(別所哲也さん)に、パレードを見に行こう、と誘われたのに、「出来を評価するためになら見に行ってもいい。」と子供らしくない答えをする。
一方、パレードの中心を飾るメーシーズ・デパートの名物サンタクロース役はなぜか酔いつぶれて、パレード出られそうにない。その事態を取り仕切っているスーザンの母ドリス(愛華みれさん)は、そばにいた白い髭の老人(宝田明さん)に代役を頼む。
ドリスは評判の良いその老人にクリスマス商戦に勝とうと今年のサンタクロース役を依頼した。その老人は、自分が本当のサンタクロースで名前はクリス・クリングルだと名乗った。クリングル氏は子供たちとすぐ仲良しになる。「サンタクロースなんて信じない」と言っていたスーザンとさえ仲良くなってしまう。メイシーズにない商品は競争相手のお店に売っているよ、と教えたりもした。お客は、「さすが、メイシーズ!」と感心する。
メイシー社長(佐山陽規さん)も一旦は、顧客を取られると考えるが、ドリスの助言で考えを換え、クリングルを終身雇用することにする。
スーザンはフレッドに仮のパパになってと頼むほど、フレッドを好きになっていた。
昼間スーザンとフレッドを見かけたことを同僚のシェルハマー(六角慎司さん)に聞いたドリスは、フレッドに近づかないで、と啖呵を切るが、どこか惹かれあう二人。
クリングルは、就職前の健康診断で、自分がサンタクロースだと言い、診断している医者(藤森徹さん)の不評を買い、精神病院に送られてしまう。
精神病院から退院させようと、ドリスは裁判所に審問を開くように嘆願する。弁護士がいるかと聞かれ、フレッドが司法試験に受かり、弁護事務所に就職すると言っていたのを思い出し、「います」と答える。
審問は開かれることになったが、落胆し、もう病院から出ないというクリングルのもとに、スーザンがやってくる。「私のプレゼントのお願いを叶えてね。」と頼むのだった。力がわいてきたクリングルは審問を受けるとこにした。
弁護士初仕事のフレッド。メイシーズの仲間の努力。新聞にも大きく取り上げられたこの前代未聞の「この人は本物のサンタクロース」なのか、という審問(裁判のようなもの)の結論はいかに。

とここであらすじはやめます。普段は大いにネタバレで書いてしまいますし、この作品は何度も上演され、映画もあるので、書いてもいいかな、と思ったのですがやめておきます。私にとってこれから先の展開がとても面白かったし、舞台もとても良かったので、是非是非「サンタクロースは本当にいるのか?」の結論は劇場で聞いて頂きたいと思います。

もうひとつフレッドはスーザンの本当のお父さんになってくれるかという方は、クリスマス・シーズンの作品ですからね、子供にはステキなプレゼントがあるわけです。

別所さん、愛華さん、宝田さんでの舞台は昨年に続いて2回目だそうです。(私は昨年は観ていません。)
プレビュー公演にしては、キャストの皆様はとてもしっくりと役をこなされていたと思います。様々なところにジョークが織り込まれ、とても軽やかな舞台運びです。でも、今の私達がどこかに忘れてきてしまった大切なことを考えさせてくれる、深みのある内容でもあります。
フレッドは軍務を終えて帰ってきたばかりという設定です。もともとのオリジナルは1947年に製作された映画ですから、第二次世界大戦を念頭においているのだと思います。フレッドは「大切な人を守ることは、戦うことだ、と思っていたが・・・」と人を信じることや、人間同士の違いを認め合うことの大切さに気がつくのです。
このときからもう60年の歳月が流れようとしているのに、人間は何度過ちを犯し続けるのでしょうか。
という場面もありますが、それもさらっとしているので、楽しい、どうなるんだろうとわくわくしながら観劇しました。

宝田さんは本物のサンタクロースです。私はもう子供ではないけれど、どうしても一つ欲しいものがあるんです。お願いを聞いて頂けないかなぁ、と真剣に思っています(笑)。

別所さんは、コメディもいいなぁと思いました。お芝居は「間」だと思っている私ですが、コメディは特にそうですね。アドリブなのか脚本に書いてあるのかわからないジョークをさらっと言って、観客の笑いをとっていらっしゃいました。お子さん達にも大うけでしたね。

とても華やかな場面もある舞台ですが、なんと子役を入れて15人で作り上げている舞台なのです。ですから、殆どのキャストが出ずっぱりです。早代わりも相当大変なことでしょう。でも、とてもまとまったいい舞台でした。もっと大きなカンパニーでやることも出来そうな作品ですが、こういう編成もいいですね。おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさが感じられます。

そんな楽しい舞台で、大好きな俳優の方に出会えるのは本当に嬉しいものです。佐山さんのご活躍に、ステキだなぁと思ったり、大笑いしたり。まあ、大雑把に言うと、一幕は見て楽しみ、二幕は聞いて楽しむ、という感じでしょうか。
髭をはやした、とても威厳のあるメイシー社長なのかと思いきや、二幕の裁判所ではとても楽しい歌を歌って下さいます。さらに・・・は審問結果に繋がるのでお話しませんが、歌が続きます。
順番が逆になりましたが、一幕はもう大変です。社長の役以外にいろいろとコスプレ(?)をなさるのですから!お髭を付けたままでないと早代わりが間に合いませんから、探すのは簡単なのですが・・・
数日前に書いたブログに『俳優の皆様は、本当にいろいろなことに挑戦され、ファンを楽しませてくれます。でも、時々、「・・・」(絶句)と言うときもありました。が、今回の今さんに出会って、「これ以上怖いものはあるはずがない。もう何でもど~~~んと来い!!!」となりました。』と書きましたが、まだまだ私の修行は足りないようで、「ど~~~んと来い」とはなりませんでしたね。「・・・」(絶句)と目を疑ってしまいました・・・いえ、華やかな場面、とても可愛い衣装がお似合いでしたということにしておきたいと思います(笑)。
話があらぬ方向へ行ってしまいましたが、あんな楽しい社長がいらっしゃる会社は繁盛するだろうなぁと思えるほど、ステキなメイシー社長でした。

いろいろ小難しいテーマや上演の目的を表明しての舞台もそれなりの感動があります。でも、こういうオールドファッションの、これぞブロードウェイ・ミュージカルという作品には、作り手の変な気負いはなく、どちらかというと作り手が楽しもうという気持ちが伝わってきます。立ち上がれないほどの感動はなくても、ワクワクドキドキする心弾む作品でした。
このカンパニーはこのあと地方を回り、12月中旬に東京へ戻り、25日までアートスフィアで上演の予定です。私も、また、観劇したいなぁと思っています。

椅子の上の猫

2005年11月13日 | 観劇記
05年11月13日  マチネ公演 シアター・アプル10列目やや下手

思い切りネタバレしていますので、これから観劇なさる方はご了承の上お読み下さい。

あらすじ
失恋した、傷心の類子(匠ひびきさん)は馴染みのゲイバー「マダム・G」のママG(川崎麻世さん)のマンションに居候する。「マダム・G」は10周年を迎えるので、その記念のショーを企画している。類子はママの衣装作りを手伝いながら、ショーにも参加することになる。Gの以前の恋人で今は共同経営者ユリ(大浦みずきさん)は、類子にいろいろ忠告する。
類子は自立しようとするが、それを邪魔するG。類子を猫のように扱おうとする。
10周年のショーは成功するが、類子はGのもとを去っていく。

本筋はあらすじに書いたとおりです。が、ここにゲイバーの店員?として、深沢敦さん、野添義弘さん、今拓哉さんがいるのです。常連客の入澤正明さん、アルバイトの冨田真之介さんというカンパニーでした。

本当に楽しかったです。本筋は暗い話ですが、ゲイ達には大笑いさせて頂きました。
その話は後にして、本筋に絡んだ感想を。
類子を演じた匠さんですが、こういう役はあまり得意ではないんだなぁと思いました。もと宝塚の男役さんですから、猫というには程遠いのです。頼りない女の子が自立するという感じがないのです。切なさがあまりにも足りませんでした。
これに対し、ユリの大浦さんは、本当にステキでした。サラッと演じながらも、何かあるんだなぁと思わせる、その何かを漂わせるところの上手さ。さすがです。ショーでのタンゴもうっとりでした。

というわけで、よくよく考えたら、お話としてはあとから考えさせられるということもなく、ありそうなお話でしかなかったのですが、とにかく劇場にいた間は、本当に楽しかったです。

私は、今拓哉さんの舞台ということで観に行きました。
男性が女を演じることに違和感がないとはいいません。が、歌舞伎も好きですから、そういう状態は見ています。また、私のこよなく愛する「太平洋序曲」は歌舞伎の手法を取り入れていますから、男性が女を演じました。歌舞伎より、もっと男性を感じる女役ですしね。そして、今拓哉さんの女装は「SHOCK」で見ていますので、ある程度の予想はしてました。
しかし、しかし、しかしです!!!
「SHOCK」と違って露出度が高いのです。衣装が最初からタンクトップにズボン。まあ、脚は出されないのかと思いきや、スリットの思い切り入ったドレスでも登場。ショーの中ではピンクの看護婦さんの衣装やフレンチカンカンの衣装も。そして、ショーの中では一度だけ男性の服装でも登場。でも、それが、前の開いたベストに、短パン、色は黒だったのです。
髪は、鬘です。ボブっぽいストレート。お化粧がキレイ。顔だけなら、女性だと信じます。
体格ですぐ今さんとわかるわけですが、もう最初の登場で、椅子から転げ落ちそうになりました。「椅子の上の猫」じゃなく「椅子から転げ落ちる観客たち」という題名かと思ってしまいました。
その服装だけでも大笑いなのですが、今さんの演じる愛ちゃんにぞっこんの銀行員高原さん(入澤さん)とのやりとりが本当に面白いのです。ゲイと付き合う男性ってこういうところに惹かれているんだろうなぁと社会勉強をさせて頂いた感じです。今さんのいじめ方がカラっとしていて、でも甘えるようなところもありで、これをステキと言えないとしても、上手いとは思いました。
今さんには、本当に、いつも驚かされます。今回は今まで以上の驚きでした。
しかし、今さんの女装姿を見ながら、うう~~~気持ち悪いとならず、やっぱりかっこいい、と思える私もすごいなぁと思いましたよ!

俳優の皆様は、本当にいろいろなことに挑戦され、ファンを楽しませてくれます。でも、時々、「・・・」(絶句)と言うときもありました。が、今回の今さんに出会って、「これ以上怖いものはあるはずがない。もう何でもど~~~んと来い!!!」となりました。
これって褒め言葉?!?!?

かなり壊れてしまったわまでした。


クリスマス???

2005年11月07日 | 雑記
もう忘れるぐらいに久しぶりの雑記です。
今日、東京ディズニーランドに行ってきました。
毎年一回ぐらい行っています。何となく、童心に戻れるので、私にとっては混んでいてもすごくいいストレス解消の場です。
しかし、混んでいました。月曜日なのに!!!
皆、学校や仕事はどうした?と叫びつつ、私達親子も、学校は休み、仕事はやりくりし来ているわけで、まあ、お互い楽しみましょうという感じでした。

混んでいたのは、クリスマス特集が今日から始まりだったからのようです。
私は何も知らなくて、駐車場のお姉さんに「メリー・クリスマス」と言われ、「???」でした。だって、11月の上に、今日は半袖でも十分なほどの暑さ。
何度も行っているのに、クリスマス時期は初めてでした。
天候のせいで、いまひとつの感はありますが、華々しくていいですね。

昨日の「雨物語り」があとをひいていたのか、子供にかなり甘くなってしまいました。普段はお土産をダメダメと言っているのですが・・・
可愛いプーさんのついたツリーを買ってしまいました。
おかげで、家の中もいきなりクリスマスとなっています。

雨物語り

2005年11月06日 | 観劇記
05年11月6日マチネ  銀座小劇場
劇団カントカークトの第三回公演「雨物語り」に、第二回公演に引き続き小鈴まさ記さんが出演なさるということで、観劇しました。

アングラが流行っていたとき、知人が劇団に入っていたので殆どの公演を観ていました。私もとても若かったし、華やかな舞台が好きな時期だったためもありましたが、あまり楽しい観劇ではありませんでした。そういうことを差し引いても、つまらなかった原因は、細かい設定は各公演で違うのですが、伝えたいことがいつも同じなのです。まあ、それがあの時代のアングラだったのかもしれませんが、途中まで観ると、最後の展開がわかってしまうのです。
作り手が同じだと、どうしても似たような展開になってしまうのは仕方がないとしても、どのような題材をどう味付けし、次の作品も楽しみと観客に思わせるのか、それがまず小劇場の劇団の課題だと思います。

前回のカントカクートさんは政治の話でした。とても原案がよかったので、今回も楽しみでした。そして、今回は「家族」にテーマが移り、親子の在り方を考えさせる内容になっていました。前回とはまったく違うテーマ、切り口でしたので、また次回が楽しみです。

あらすじを。
雨が降っている。
雨森幸介は27才。父親の幸太郎と2人で暮らしている。と思うと実は父親は幽霊。幸介にしか見えていない。一人暮らしの幸介を気遣い、幼馴染で、今は有名なニュース・キャスターとなっている花岡夏美が時々家にやってきては、世話を焼いている。幸介はもっぱらフリーター。そして、小説を書いている。しかし、発表するつもりはなく、夏美と幽霊の父にだけ読んでもらっている。
いつものように夏美が幸介の家に来ていると、夏美の婚約者だという五条もやってくる。幸太郎は幸介と夏美がうまくいくことを願っているので、姿が見えないことをいいことに五条に意地悪をする。
夏美が雨でびしょびしょになっていた高校生の巽一哉を幸介の家に連れてくる。この一哉の父は著名なジャーナリストで夏美の憧れの人だった。幸介の小説を通し、なんとなく息が合う幸介と一哉だが、ゆっくり話す間もなく五条が祈祷師を連れてやってくる。この家に悪霊がいるというのだ。この場は父の幽霊のことはばれずに済んだが、祈祷師が一哉のかばんの中に幸介の小説を入れてしまう。
一哉が自宅に戻ると、変な人がやってくる。一哉は麻薬の密売をしているのだ。父親の一義が戻ってくる。ギクシャクとしている2人。一義は小説を見つけ「お前が書いたのか?」と聞く。「そうだ。」と答えてしまう一哉。
幸介の家に一哉が来る。夏美もやって来る。そして、五条がまた祈祷師を連れてやってくる。祈祷師は塩をもって悪霊をやっつけるという。父の幽霊をかばう幸介。何しろ、塩に触るとこの世にはいられなくなってしまうからなのだ。そのため、皆に父親の幽霊がいることをばらしてしまう。祈祷師は、死んでから7年以上この世にとどまるとその霊は天国へは行かれなくなること、霊がこの世にとどまることはとても苦しいこと、それをしてもとどまるには余程の心残りがこの世にあること、を幸介に伝える。父親がいることに疑問を感じていなかったのか、幸介はとても驚く。
一哉がやってくる。父親との関係が上手く行っていないことを告白する。幸介はもう一度父親とやり直す努力をするべきだと伝える。
幸介は、幽霊の父親に「何が心残りで、この世にいるの?」と聞く。父親は、お母さんに合わせる顔がないから、と答えた。
巽一義のもとに、一哉の高校の担任が来た。登校日数が不足していること、麻薬の密売にからんでいることを伝えに来たのだ。一義は担任に一哉が書いたという小説を見せた。担任は「15年間の国語教師の面子にかけて、一哉君の書いたものではありません。」と一蹴する。担任が帰ったところへ一哉が帰宅する。何とか父親と話し合おうとする一哉だが、「嘘をつくな。」と一言残して父親は出て行ってしまう。
小説の本当の書き手が幸介だと知った一義は幸介の家を訪ねる。「是非、出版しよう。」と勧める。しかし、幸介は拒否する。なぜか・・・
幸介は、母親が交通事故で亡くなった日の話しをする。留守がちな父。その日も遊園地に行く約束をすっぽかされた幸介は、母親に八つ当たりをしてしまったのだ。「お母さんなんかどっか行っちゃえ。」と言った幸介の言葉に家を出た母親は、そのまま帰らぬ人となったのだった。幸介は自分のせいで母親が亡くなったと、自分を責め続けていたのだ。書くことでやっと心のバランスをとり、生きているのだ、と。だから、誰かに読んでもらいたいとか、有名になりたいとかではなく、生きながらえるために書いているのだと幸介は言う。
そこへ、刑事に追われ一哉が入ってくる。刑事は一哉を「屑だ」と決め付けた。その言葉に怒るのかと思われた一義だが、意外なことを告白する。
「大雨の日に、幸介君のお母さんを車で轢いたのは、私です。屑は私の方です。」と。
17年間わからなかった母親殺しの犯人がわかった。しかし、あんなに憎んでいたはずの犯人が目の前に現れても幸介は一義を憎む気にはなれなかった。それどころか、自分を責める気持ちが整理されたような気がしたのだ。
そのとき、神父様(神様か?)がやって来て、幸太郎に「もう、天国に行かれますね。」と言う。幸太郎は幸介に「自分の感じたまま生きていきなさい。」と言葉を残して、本当に旅立っていった。幸太郎を引き止めていたものは、幸介の自分を責める心だったのだ。
雨が上がった。幸介と夏美は幸せそうに、外へ出かけていった。

と、こんな感じでしょうか。一度しか観ていませんので、多少場面が前後しているかもしれません。申し訳ありません。

最後の場面は、本当に泣かされました。親が子を思う気持ち、子が親を思う気持ち、どちらも強く美しいのです。でも、そのすれ違いも起こります。どうやって、解決しようか、焦れば焦るほど溝は大きくなるのです。本当に難しいですね。
また、人間の生きている意味や人を裁くのは誰か、など、次々と人間社会の永遠のテーマとも言える事柄について深く深く語っていました。
原案は角田裕志さんだそうですが、本当に素晴らしい発想です。幽霊という存在を作ることによってコメディの雰囲気も生まれますし、より深くいろいろなことに対して考えようとさせてくれるのです。
前回の「国会ランチ」以上に、人物のキャラクターもはっきりとしていて、まとまりのある脚本だったと思います。何しろ、私は「希望」があるお話が好きなので、涙しながらも、私もがんばろうと思いました。さらに、子供がいる私にとって、共感することもとても多かったです。そして、反省することも・・・(苦笑)。

何度も言いますが、俗に言う「本」(原案や脚本をまとめて)は、本当にとても素晴らしいのです。しかし、舞台の運びとなるとかなり辛口になってしまいます。演出ではどうにもならないであろうと想像してしまう演じ手の実力の差があまりにも大きいのです。
舞台は、現実であれば長い長い時の流れを、数時間に凝縮するわけです。ですから、無駄はないわけですし、無駄があっては困るのです。どんな短い台詞、時にはちょっとした動きだけで、観客に何かを伝えなければならないはずです。というか、そうして頂けないと、観客は演じ手とともにその場に生きていくことが出来ないのです。小劇場だからかもしれませんが、私には、無駄な動きが多いように思われました。そうなると、「ここ」というときがぼやけてしまうのです。
お芝居は「間」だ、と簡単に言ってしまいますが、言ってみれば呼吸の間隔ではないでしょうか。この「間」が、演じ手と観客とで一致してくると、劇場内の一体感がもっともっと増すと思います。あくまでも、観客を入れての公演なのですから、演じ手のペースではなく、観客のペースを考えて舞台を運んで頂きたいと思います。

さて、小鈴さんについてですが、今回は祈祷師、麻薬を買ったいかれた兄ちゃん、担任の先生、刑事、神父(神様?)と5役をこなされ、どの役も場面を転換させるという重要な役を受け持たれました。グハハハ・・・と、笑わずにいられない変な役から、小鈴さんってやっぱりビジュアルがステキとぐっと来る役まで、ファンを楽しませてくださいました。
台詞の明瞭さにとどまらず、何を伝えるのかがはっきりわかる台詞回しに、さすがだなぁと思いました。舞台美術も担当されたそうで、すっきりとしたステキな舞台を作っていらっしゃいました。が、もう少し、じっくりと役作りをしていただきたいのです。劇団のメンバーではなく、ゲストという形でのご出演ですから、こういう役になりやすいのは仕方のないことかもしれませんが、また、出演なさる機会がありましたら、是非、お願いしたいです。