わまのミュージカルな毎日

主にミュージカルの観劇記を綴っています。リスクマネージャーとしての提言も少しずつ書いています。

音楽座「ラブ・レター」

2015年06月12日 | 観劇記
音楽座ミュージカル「ラブ・レター」
6月7日東京千秋楽を観ました。
東京芸術劇場・中ホール、下手寄りかなり前方。

一昨年秋の初演も観ました。
正直言って、今まで私が観てきた音楽座の中で一番残念だった作品。
それがどう再構成されているのかを楽しみに伺いました。

確かに、しまりのある舞台になっていました。
吾郎役の広田さんの演技プランがしっかりしたことに負うところが大きいと
感じています。
死んでしまっている白蘭に対する思いが、
他人
妻(配偶者)
愛する人
という風にしっかり変化しているのがよくわかりました。
特に、写真を見たときに、「生きている時に会いたかった」ということの
表現がすごく良かったです。
男の人らしい反応だよね、と女の私は思ってしまうのですが、
どんな入口にしても、白蘭への愛情が芽生える瞬間です。
その瞬間があるからこそ、その後の後悔、社会の矛盾への怒りが
伝わってきます。

というわけで、さすが広田さんだなぁという思いもある反面、
物語全体としては、どうなんだろう???
演出してもどうなんだろう???
と思うところもたくさんな舞台であることには変わりなかったです。

あまり新宿をおさなかったことはよかったと思います。
ダンスの場面も減っていたように思います。
それもあって、落ち着いた感じはしました。

原作にとらわれ過ぎていることはわかっていますが、敢えて・・・
震災を持ち出す必要があるのでしょうか?
「人はいつでもやり直すことができる」
この言葉は、今、復興から置き去りにされている人々に対して
励ましの言葉になるのでしょうか?
「やり直すことができる」
という言葉はとても勇気の湧くメッセージです。それはとても素敵な
コンセプトだと思います。が、それは、それ単独で充分伝わることなのでは
ないかと感じています。
もう一点は、吾郎が殺されてしまうことですね。
とても違和感があります。
吾郎もやり直した人になってもよかったのでは???

ミュージカルというよりは、ストレートプレーに近いこの作品。
しかし心に残る歌もあるのです。
が、なぜ、そこで合唱をいれてしまうの???
ナオミ(宮崎祥子さん)が「時間の浜辺」を歌い始めて、ナオミの身の上を思い図ろうと
する時に、なぜか別の声が???
正直、入り込んだ気持ちが現実に引き戻されてしまいました。
興ざめでしたね。

治田さんのファンなので、こんなことは言いたくないのですが、
なぜ女性看護士??????????
意地悪な女を男性がやるというのはすごく納得できるのです。
あの看護士いい人ですよね。
登場場面をコメディにしたかったわけでもないですよね。

登場場面が少ないのに、舞台をキリっと締めて下さったのが
井田安寿さん。
葬式の後に吾郎に手紙を渡す場面。
ゾクゾクしました。
どうなのよ、白蘭の無念さがわかったの?
と言わないのですが、それだけではなく、白蘭だけではなく、
女たちの現状を理解しているのか?と、問いかけているようでした。
ある意味、吾郎はそれがわかったわけですよ。
それだからこそ、吾郎には生き続けてほしかったのです。


というわけで、相当辛口の観劇記となってしまいました。
音楽座には、日本を代表する素晴らしいミュージカルを作り続けて
頂きたいので、こうなってしまいます。
まして、浅田氏とのタッグは「メトロに乗って」がありますからね。
期待が膨らんで当然ではないでしょうか?
また、別の作品で、音楽座らしさを表現して頂きたいと思います。
次作を楽しみにしています。

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2 コメント

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笑いの重要性 (シューベー)
2015-06-13 23:45:20
私の感想ですが・・・
看護婦(阿部まりあ)の場面はもっとコメディーに
した方が良いと思いました。
因みに阿部まりあは浅田先生の「きんぴか」に
出て来る新宿の女性キャラクターです。

Rカンパニーは「現実は魂が受ける試練」として
観客にも試練を突き付けてきますので
「浄化」はあるものの、
観終わった後に「苦しみ」「不満」「無常」などが残ると思います。
お金を払ってわざわざ現実の苦しみを体感するので、
エンターテイメントではなく
「試練」という重いテーマの芸術だと思います。

私も音楽座には期待するので
辛口になります。
返信する
ありがとうございます (わーきんぐまざー)
2015-06-21 13:44:33
シューベーさん、コメントありがとうございます。

「試練」という重いテーマの芸術・・・
なるほどと思いました。
音楽座の作品をそのようにとらえたことがなかったので、
新発見です。
今後は心して、拝見しようと思います。
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