わまのミュージカルな毎日

主にミュージカルの観劇記を綴っています。リスクマネージャーとしての提言も少しずつ書いています。

森は生きている

2004年01月18日 | 観劇記
1月13日の観劇記に詳しく書いていますが、1月18日マチネ(東京公演楽)にもう一度観てのちょっと感想を書き足しました。

座席が、前回と反対側つまり上手側でした。その違いなのか、あるいは音響の調整があったのか、はたまた私が慣れたのか、理由はどうであれ、前回に比べるとテープで流れてくる音楽がかなり落ち着き、歌詞も殆どすべて聞き取れました。そうなると舞台にもどんどん引き込まれ、自然の大きさ、人間のわがままや非力など、作品のテーマをしっかりと受け取ることが出来ました。

舞台を創るのは勿論、演出家を始めとするスタッフ、そしてキャストなのですが、観客も結構な割合で舞台創りに影響を及ぼしていると私は思っています。ですので、今までストレート・プレーを創っていた無名塾がミュージカルを創り、無名塾のファンがどんな反応をするのかとても興味がありました。
平日マチネと休日それも一つの区切りとしての東京千秋楽を観劇したのですが、客層は両日ともあまり変わりませんでした。年齢層はやや高いですね。60歳代以上の方が多かったようです。そして何より男性が多いことに驚きました。多くのミュージカルもこれ位男性が観て下さるといいなぁと思いました。
反応は、とても控え目。特に平日マチネのときは、あまりの静かさに、ストレート・プレーじゃないんだからもっといろいろ反応してもいいのでは、と思いました。楽の時は、多分リピーターも多かったのでしょう、笑いも拍手も普通のミュージカルの舞台並みでした。
確かに、ストレート・プレーだと、途中で拍手するってないですよね。だから、ミュージカルでも最後の最後まで拍手がなく、重苦しい空気が流れていました。そんな深刻な作品ではないので、もっと観客も楽しく参加して欲しいナァと思いました。
観客の反応がよかった楽のほうが、キャストも弾けていましたよ。
千秋楽の舞台のほうが印象的で、とてもいい舞台だったと思えたのも、音響のせいばかりではなく、私自身も含めて観客全員が楽しんでいたからではないかと思います。
「森は生きている」は自然が生きていること教えてくれただけではなく、「舞台」も生きていることを深く感じさせてくれました。

森は生きている

2004年01月13日 | 観劇記
04年1月13日、マチネ公演を観劇。
ル・テアトル銀座9列下手
(これからご覧になる方は、思いっきりネタバレしていますので、ご注意下さい。)

無名塾がミュージカル???という思いが、この舞台の情報を初めて知ったとき浮びました。「森は生きている」はもう遥か昔、いえ、つい最近子供だったときにどこの舞台かは記憶にありませんが、何度か観ています。

あらすじです。
今日は12月31日。森では、12月の精(赤羽秀之さん)が1月の精(佐山陽規さん)への引継ぎをしようとしていました。
まま娘(仲代奈緒さん)は薪を取りに森にやってきていました。そこで老兵士(仲代達也さん)に出会い、「今日は不思議なことが起きるかもしれない。」と言われます。
一方、宮殿では、まだ子供の女王陛下(山本雅子さん)が博士(山本圭さん)からいろいろ学んでいるのですが、わがままのし放題。そして、「マツユキ草を新年のパーティ欲しい」と言い出します。持参したものには金貨をとらせると、国中におふれを出します。
まま娘は継母ら(母 菅原あき 姉 渡部晶子)に言いつけられ、猛吹雪の中、暗い森へとマツユキ草を探しに行くのでした。
迷ってしまったまま娘は、明かりを見つけます。そして、そこへ行ってみると暖かい薪が炊かれていました。まま娘がこんな吹雪の中、森へ来たわけを聞いた12の月の精(兄弟)は娘のけなげさに打たれて、少しの間だけマツユキ草の咲く4月に季節を進めてくれます。まま娘は4月の精(青木堅治さん)から魔法の指輪をもらい、この場所を誰にも言わないことを約束して家に帰って行きます。
宮殿では、マツユキ草がないので女王が「新年は明けていない」と言い張り、来賓も家臣たちも大弱り。そこへ、継母とその娘がまま娘の採ってきたマツユキ草を持参します。一件落着と思いきや、女王はマツユキ草のあった所へ行きたいと言い出します。
継母はまま娘に場所を教えるように言いますが、12の月の兄弟と場所を教えない、という約束をしていたまま娘は教えません。一人で言って女王様の欲しい物を採ってくると出かけますが、継母始め女王一行も後を追いかけます。
皆がついて来ていることを知ったまま娘は、12の月の兄弟に危険だと言われていた道を選びます。まま娘が秘密を守り、指輪の魔法を使ったことで、あたりは一気に四季が巡ります。そして、1月の精が、女王らに自然の大切さや、人の心のあり方を教えます。
人間は森を去り、森はまた冬の季節を取り戻しました。

こんな感じでしょうか。
とても心に響く台詞があるのですが、ちょっと書ききれません。心が温かくなって、もっと自然に感謝して生きていかなければナァと深く深く感じさせてくれる作品でした。
私は、佐山陽規さんのファンですから、とてもとても楽しい舞台でした。その理由は後でじっくりと。
でも、一ミュージカルファンとして作品を見つめた場合、かなり不満があります。
演奏が生ではないこと。全国公演を前提にしているので仕方がないことだと思いますが・・・。それに付随して、この劇場の欠点なのか、ちょっと賑やかな音楽だと歌より演奏の音が勝ってしまうのです(「FAME」は生演奏だったけれど、今回より演奏が勝っていました)。ヴァイオリンが一本だけ舞台上で生演奏をしてくれるのですが、結局は伴奏に負けている感じでした。もう少し、バランスを考えて欲しいナァと思います。歌になると、マイクのエコーみたいなのがとても強いのもすごく違和感がありました。歌が多いのが他の舞台も拝見している佐山さんや奈緒さんですから、どう考えも音響のバランスが悪いのでは?となってしまうのでした。

池辺晋一郎さんの音楽は、あまりにも普段から慣れ親しみ過ぎて、印象に残らない感じでした。でも、とても心地よかったです。

舞台装置は妹尾河童さん。いろいろ聞いて予想はしていました。が、予想以上に素晴らしいと思いました。美しい森に本当に行ったみたいな気持ちなれました。

まま娘を演じた仲代奈緒さん。本当にはまり役ですね。思わず「がんばれ!」と声を掛けたくなりました。歌声も伸びやかで、素晴らしかったです。
この役は「まま娘」なんです。名前がない。老兵士には「別嬪さん」と呼ばれるし。原作に忠実なのかもしれませんが、名前があったほうが、もっといろいろ共感できるような気がしました。

はまり役!と唸ることもあれば、大変失礼ではありますが、ちょっと荷が重い???と思ってしまう役もありました。
継母とその娘のお二人は、声質が似ているようなのです。親子という関係が感じられませんでした。娘はいくら意地悪とは言え、もう少し若々しさが欲しいナァと思いました。

まま娘の言ってみれば相手役になる、4月の精の青木堅治さんは初舞台。歌にも初挑戦とのことですが、長い公演でお疲れなのかナァという印象でした。池辺さんの音楽が印象深くないというのも、青木さんの歌が、歌として、台詞として私の心に響いて来なかったからという気がしています。奈緒さんの演じるまま娘の辛いけれど楽しく生きている姿に心惹かれる青年にしては、ちょっと若々しさがないナァという感じがしました。

しっかりと脇を締めてくださるのが、博士の山本圭さん。舞台は初めて拝見しましたが、大ファンになりそうです。今回は結構コミカルな役でしたが、いろいろなタイプの役を是非拝見したいと思いました。

女官長を演じた林勇輔さんも魅力的な方ですね。台詞がすごく綺麗なんですよね。もう少し、男であることを出して演技しても面白かったかもしれません。
男が女を演じる面白さと言えば、「シンデレラストーリー」のまま母役の池田成志さんを思い出します。林さんと同じStudio Lifeの及川健さんを「イーイトウィックの魔女たち」で拝見して、中性的な魅力を堪能しました。林さんのほうが女役ですが(及川さんは役柄も男女どちらともとれない)男らしかったですね。歌舞伎や宝塚に慣れ親しんだ私ですが、今さらながらに、俳優の皆様のいろいろな活動方法に驚いています。

その驚きと言えば・・・これはもう少しとって置くことにして、最初の方にも書きましたが、佐山陽規さんのファンとしては最初から歌って下さいますし、この作品のとても重要なテーマを語る役でもありますから、本当に大満足でした。よく考えてみると、これ程演劇性に重きのある作品で佐山さんを拝見するのは初めてのような気がします。1月の精は一番年上で老人と言う感じですが、役柄に求められている懐の深さを美しい台詞でしっかりと観客に伝えて下さっていたと思います。
しかし、佐山さんの大活躍は嬉しいのですが、ミュージカルの楽しさと言えば、歌い継いで、音楽や歌に乗せた舞台の進行だと思うのです。そのあたりがちょっと物足りない感じでした。
一幕での佐山さんの活躍に、すっかり気をよくしていた私ですが、佐山さんの公式HPの掲示板に「釘付けです、第二幕始めの佐山さんに」という書込みがあったのです。それで、第二幕をとてもとても楽しみにしていました。
第二幕オープニングのセットは宮殿。佐山さんの役である1月の精がいるはずありません。
「???」となりながら、女王陛下、総理大臣、女官長(ああ、これが林さん・・・)、検事、来賓・・・と男性に次々目を移しますが、佐山さんはいません。あの書き込みはどういう意味だったの???となりながら、気を取り直して、再度、端から皆様のお顔をチェック。
「うそ!!!!!!!」と思ったとたん、椅子から転げ落ちそうになってしまいました。
こう書くとすごい時間が経ちますが、実際には数秒のこと。舞台では何も起こっていないのに、一人大笑いをしてしまいました。
多分、ここまで読んだ方なら予想は付くと思いますが、なんと貴族夫人役だったんですね。プログラムを見ると「貴族夫人・・・奥村飛鳥 他」となっています。
本当にパッと見は全然男性だ何て思えないんですよ。その証拠に、最初の方には佐山さんの台詞はなく、いろいろ動いてはいるものの基本的には立っています。で、警護の人は直接女王陛下とは口をききませんから、伝言ゲームのようなことになります。耳打ちが面倒になって、大声で伝えることになってしまいます。その時に、何度か佐山さんが台詞を言うのですが、その2度目ぐらいで客席がざわめき・・・その次には笑い・・・
その後、男性相手にダンスまでしてしまうんですよ。胸元にマツユキ草をさして・・・
02年10月31日「太平洋序曲」の千秋楽。「菊の花茶」を歌われる佐山さんを見つめつつ、これで佐山さんの女役は見納めだろうナァととても感慨深かったのです。治田さんや村上さんの女役というのはまた出会えそうな気がしていました。でも、佐山さんはもうないナァと思っていた、いえ、確信していました。
人生、本当にいろいろなことがあるものです(笑)。
その後の場面では、また深みのある1月の精に無事戻られ、女王に「あなた達(人間)が与えるのではない。私達(自然)があなた達に与えるのだ」という素晴らしい台詞をお聞かせ下さいます。

ミュージカルの舞台としては物足りないところもいろいろあったのですが、本当に楽しく、もう一度自分のまわりにある自然を見つめなおそうと思わせてくれた舞台でした。