わまのミュージカルな毎日

主にミュージカルの観劇記を綴っています。リスクマネージャーとしての提言も少しずつ書いています。

「Re:verse」

2012年07月08日 | 観劇記
「Re:verse」

2012月7月8日 昼公演
下北沢の小劇場・劇

坂上忍さん脚本・演出の作品を観てきました。

すごい作品でした。
今、この時によく上演なさったなぁと思いました。その勇気と情熱に頭が下がりました。
もう少し大きな劇場で、多くの人たちに観て頂きたい作品でした。

2011年3月11日から一年後に茨城沖で大地震が発生。東日本大震災以上の被害が起きた。その数ヶ月後、テレビ番組の収録スタジオに被災者が何人か集まってきた。「その時」何が起こったのか率直に話して欲しいというインタビュアーに対し、被災者は話したい気持ちが強いのか、どんどん話していく。

寝たきりの父親を救えなかった中年の男性が「父を見殺しにしてしまった」と言ったとき、インタビュアーが「殺したんですか?」と聞いた。それまでのスタジオの様子が一変する。

また、数日後、先日の被災者の家族が集まっていた。同じく、どんどん話をする被災者。しかし、また、インタビュアーの厳しい追及に、スタジオは前回以上に凍りつく。

子育てがうまく出来ず、悩んでいた母は、津波の中でしがみついてきた子供の手を離した。
寝たきりの父を迎えに行かず自分だけ逃げた男性。
足の悪い姑が荷物を取りに帰ると言ったのを止めなかった嫁。
消防団の仲間を置き去りにした男性。

彼らの話は、自分が同じ状況に置かれたら、どうすべきなのだろうと考えさせられるものばかりでした。
その話が縦軸だとすると、横軸にインタビュアー自身の問題がちりばめられる。

彼女は東日本大震災で両親を亡くしていた。夫とうまくいっていなかったのもあり、まだ幼い二男児がいるにも関わらず、結婚後やめていたテレビの仕事に復帰しようとしていた。
出ていった日が、茨城の地震の日だったのだ。
夫と二男児を失った。
「生きていく意味があるのだろうか?」
彼女はその答えを見つけようと、自分と同じように本当は助けるべき命を助けなかったり、助けられなかった人々の生き様を見ようとしたのだった。


本当にすごい作品でした。
現実をまっすぐに見つめたものすごい作品でした。
皆が逃げたいと思っていることを真正面から取り上げた作品です。
問題提起の答えはないと思います。
でも、もしその時がきたら・・・・・
観客に「その時」を考えさせてくれる作品です。

演じて下さった俳優の皆様の精神的なご負担も相当なものだったと思いますが、もし、再演の機会があれば、より多くの方々に観て頂きたい作品です。

そのすごい作品を創り上げて下さったキャストの皆様(敬称を略させて頂きます)
吉井怜、三浦孝太、塩澤英真、大芝孝平、美元、荒井奈緒美、はづき、橘花梨、武本健嗣、佐藤祐一、お宮の松
(子役の方は私が観た回の出演を確認していませんでしたので、省略させて下さい。申し訳ございません。)

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
どうもありがとうございます! (佐藤祐一)
2012-10-24 22:23:28
こちらにもこんな素敵なご感想をありがとうございました!
ネットはもちろん、自分の日記も、つぶやきすらほとんど出来てないような毎日なもので、遅れ馳せながら拝読しました。

今年の7月の舞台だったんですよね・・・
なんだか時間の感覚が狂ってしまっています。
凄くハードな稽古でしたが、実に楽しい稽古でもありました。
どこまでいっても、被災者になりきることなんか出来ないし、
すべきではないという共通認識の元
ギリギリまで、改訂改訂や演出の変更で
今の自分達に出来ることを探しました。
上演成果として、あれで良かったのかどうか
答えも未だに見つけられないでいます。
実際被災した友人も観てくれました。
家族が被災したので観られないと連絡をくれた方もいました。
演劇をやる意味って何だろうって
皆でいっぱい話しながら稽古しました。
その意識は、「思い出」になったのではなく、
ずっと自分の中で進行形であり続けています。

こんな風に感じてくださって感無量です。
ありがとうございます。
返信する
恐縮です (わーきんぐまざー)
2012-11-02 00:03:42
佐藤さん、お読み頂きありがとうございました。
また、コメントまで頂き、恐縮です。
「演劇をやる意味」を考えさせられる作品って本当に素晴らしいと思います。
本当に大変な作品だったと思いますが、いつの日か再演して頂ければと思います。
返信する

コメントを投稿