「重伝建の桐生」で現地学習会
7月27日(金)、群馬県で2番目の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定されたばかりの桐生本町1・2丁目と天満宮地区での学習会を行いました。9時半、近藤会長を始め19名の伝道師と推進課の鈴木主任が当日の見学場所の一つである桐生市のベーカリーカフェ「レンガ」に集合しました。
季節柄やはり朝から暑い一日を予感させます。今回の案内は、NPO法人「桐生再生」の2名のガイドにお願いしました。出発前の打合せの中で、特に熱中症への注意を確認しあい、2班に分かれて出発しました。
最初は、桐生の町作りの起点となった桐生天満宮を訪れます。1591(天正19)年桐生新町創設にあたり、現在地に鎮座されたと伝えられているそうです。社殿(県重文)の外壁には華麗で精巧な彫刻がほどこされています。本来の極彩色が、年数の経過で大分色あせた状態になっていますが、原状回復に莫大な費用がかかるのでなかなか手が回らないようです。
続いて、道路を東に渡った群大工学部同窓記念会館を訪ねます。1916(大正5)に竣工された桐生高等染織学校の講堂と本館玄関の一部が残されていて国登録有形文化財に指定されています。木造2階建で瓦葺きの趣有る内・外観のため、映画やテレビドラマのロケ、モード雑誌の撮影等によく使われるそうです。
この後は今も220棟余りのノコギリ屋根工場が残っているという桐生の代表的な工場を数カ所回りました。まずは旧金谷レース工業です。1919(大正8)年建築ですが、今では桐生で唯一残るレンガ造りのノコギリ屋根工場建物となってしまいました。国登録有形文化財に登録されています。廃業後、地元のパン屋が土地・建物を買い取り、落ち着いた雰囲気を生かしたベーカリーカフェを平成20年にオープンしました。ここを今回の集合場所、昼食場所としました。
次は市内で唯一の鉄筋コンクリート造のノコギリ屋根工場の旧住善織物工場です。ここは個人への工房として賃貸されています。次の大谷石造りのノコギリ屋根工場は旧齋憲テキスタイル工場で、現在はその保温性の良さを活かしワイン貯蔵庫として利用されています。
次に現在も婦人服地・カーテン地の製造を行っている金子織物、そして当初は帯などを製織していましたが現在は金襴を駆使した全国各地のお守り袋用生地を製織している岩秀織物を訪問しました。ここでは、工場できらびやかな生地の製織風景を見た後、参加者はきれいな財布やお守りなどを買い求めていました。
暑さの中、午前の見学が終わり昼食場所の「レンガ」に入ると、その涼しさに皆さん生き返ったようでした。パンを中心としたサラダ・ドリンク・スープセットを摂りながら話に花が咲いた一時でした。
午後は車で「旧矢野蔵群」を活用した「有鄰館」に行き、そこから本町2丁目・1丁目の代表的な建造物を訪ねました。現在は花屋として営業されている1685年(享保年間)創業の旧書上商店は、桐生最古の買継商であり、豪商の面影を偲ばせる建造物です。続いて外壁に大谷石を使用した美しい姿の旧曽我織物工場(国登録有形文化財)を見学。次に天保年間に北川織物として創業し、現在はノコギリ屋根の建物を芸術家集団の創作活動の場として提供している「無鄰館」を訪ね、北川会長の世界遺産への熱意などを伺うことができました。ここも国登録有形文化財です。
毎月第1土曜日に開かれる「買場紗綾市」の通りも見学しました。重伝建を目指し十数年に渡る活動が見事に実った桐生ですが、その中心となって活躍された森壽作氏の森合資会社は白磁タイルを張った擬洋風の建物で、隣接している店蔵との和洋が一体化している大正期の素晴らしい建築です。国登録有形文化財に指定されています。昨年の東日本大震災による被害は大きく、応急修理は施されていますが、重伝建の選定を機に原状回復が待たれます。
毎月第1土曜日の買場紗綾市に合わせて、東毛支部が伝道活動をしていますが、森さんのご好意でこの建物を拠点としています。
ここで全行程が終了し解散となりました。
猛暑の中を精力的に回られた参加者の皆さん本当にお疲れ様でした。「桐生再生」の清水さん、皆川さんには暑さに対する休憩場所の配慮もしながらのガイドでお世話になりました。
(Y.I 記)