連日繰り広げられるリオでの熱戦。
そんな気持ちを昇華するために急遽、与野〜石橋ウルトラマラソン大会に出場。
私の平地での1日の最高移動距離は42.195kmで、山道では54km。
今回は、平地で約75km。
まあ、山道を54km走っているんだから、平地なんて余裕でしょと思っていた。
最初の5時間までは。。。
スタートは、大都市、大宮と浦和に囲まれた与野。今在住。
ゴールは、大都市、宇都宮と小山に囲まれた石橋。生まれ故郷。
朝の5時半に自宅を出発し、綿密に記入した地図を忘れるもののはっきり言って余裕だと思っていた。
大宮公園でポケモンGOを開く余裕さえあった。
えっ、これも道?と思われるところも通過した。
45kmを迷いながらも約5時間。順調なペースで悪くない。
残りは、4号線一本道。
全てが順調に行くと思われていた刹那、右膝に力が入らなくなる。
それでも動き続けると、足裏が焼けるように痛くなる。
残り約30km。
歩くことしかできない。
平地には魔物が棲んでいる。
道路の標識にたまに出てくる次の都市までの距離がとてつもなく遠く感じる。
お尻の穴が擦れて痛い。コンビニで肛門にウォシュレットをすると「うがゃおっ」と奇声を発してしまう。
股擦れのためにランニングパンツをめくる。 警察に職務質問されたら、言うしかない。
「安心してください。穿いてますよ。」
ザックに白い沁みができて、汗が結晶化して異様な匂い。夏の2部練で同じ柔道着で寝技をする感じが懐かしい。
だんだん状況が悪くなる中、シューズを変え、テーピングを施し、気合と根性で立ち向かう。
辛抱・我慢と唱えるが100m走っては歩いてしまう。
「この痛みは私の痛みじゃない」
「きょう負けたら一生後悔するので、死にたくなると思ったので、
絶対負けたくないと頑張りました」
と言えるくらい頑張りたいけど、動かない足。。。対して練習もしてないしね。
苦悶の表情で信号待ちをしていると、横に止まった車の中で、カップルがチュウしてやがる。。。
「いけない、いけない、こんな時こそ、痛いの 痛いの チュッチュッチュッ」
だんだん頭がイカれてきた。こんな時こそ暑さのせいにしよう。
時おり出てくる最寄り駅の標識
バス停にちょうどバスがやってくる
タクシー会社の横を通り過ぎる
カフェやファミレスの数々
「もうやめちゃいなよ」「暑いし、痛いんだから無理しない方がいいよ」と天使が囁いてくる。
「痛い?何を言っているボケ」「動かなくなってからが修行だ」と悪魔が喝をいれにくる。
「あなたは神の存在を信じますか?」
「あなたの背負った苦しみや重荷を神様が楽にしてくれますよ」
「今から近くの教会で一緒に勉強しませんか?」
道中、宣教師に声を掛けられる。
「私、苦しみが快感なんです。楽なのが苦手なんです。神が昇天したエルサレムの教会で、私も昇天してきました。だから、昇天友達ですよ。」
「はぁ・・・そうですか。。。」
「本当は色々話したいけど、話せずにごめんなさい。時間がなくて。身体もギリギリで。神のご加護を!」
ちょっとしたことでちょっと元気回復。
ランニングシューズ、ビブラムシューズ、ルナサンダルと使い分け、突き進む。
初めてバイトしたお弁当工場を通過。
パチスロ機を作る工場と隣にあったパチスロ店はなくなっていた。
1日必死に汗水流して働いたお金が30分でなくなる大人の世界を経験させてもらった。
地元栃木に入ると見覚えのあるお店とそれに伴う思い出が走馬燈のように蘇ってくる。
過去に入り込んでいると、実際の身体から抜け出せる。
なんか「おもひでぽろぽろ」のようだ。
色々なことを思い出しては様々な感情が身体の中を走り抜ける。
切なさと甘酸っぱさの入り混じる青春時代。
そんなのに浸っていたらいつの間にか何とかやっと見えた「石橋」の文字。
いつの間にか時計は、スタートをして12時間以上経過。
まだね、足が動かなくなったら腕を使おうと思っていたけど、腕を使わなかったから余力を残してゴール。
夏の休日にふさわしいいい修行だったな。
ただ結果は、最下位だったのでまた1から出直しです。。。