歌の翼に

2023-09-02 20:06:11 | 誰でも知ってるクラシック
バーバラ・ボニー  




「わたし…、煙草になりたいな…。」

デートも終わりの時刻に近づいて、二人して入った喫茶店で、ひとしきり、取り留めの無いおしゃべりを交わしたあとに、彼女はぽつりとつぶやいた。

「えっ?…。…なんの話し?…。」

煙草に火を点けながら、ぼんやりと彼女の話を聞いていた彼は、すこし戸惑ったような顔つきで尋ねた。

「だから…、わたし…、煙草になりたいな…。」

首をかしげた彼に、彼女は、溜め息まじりに答えた。

「だって…、煙草になれたら…、いつも、あなたの胸のポケットの中にいて、いつも、あなたに、かまってもらえるもの…。」

彼は、吐き出した紫煙のゆくえを、ただ見つめていた。

彼女も、その紫煙のゆくえを、じっと見つめていた。

二人は永過ぎた春の恋の行方を、その中に見ていた…。

我が国においても、公共空間での禁煙スペースの拡大など、ようやく禁煙化の流れが加速し、定着しつつあり、紫煙を燻(くゆ)らす…こんな言葉も、

やがて消えていく運命かも。

マスターは一日二箱以上を吸うヘビースモーカーですから、時のながれとはいえ、なんとなく住みづらい世の中になった気がします。(笑)

この曲、『歌の翼に』は、ドイツロマン派の作曲家メンデルスゾーンによる1836年作曲の歌曲集「六つの歌」作品34の第2曲です。

メンデルスゾーンは、裕福なユダヤ人家庭の生まれで、モーツァルトやシューベルトと同じく比較的短い生涯でしたが、この『歌の翼に』をはじめとして

数々の美しい旋律を残しています。
















































































































































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