goo blog サービス終了のお知らせ 

それぞれの秋

2023-09-20 00:10:51 | アリス・谷村新司
それぞれの秋



陽溜まりの坂道に立ちどまり
通りすぎる学生を見ていた
俺もあの頃はあんなふうに
きらきらと輝いて見えたろう
授業にも出ずに お茶を飲みながら
くだらない夢を話した
突然おこった不精ひげのおまえも
噂では苦労していると

今も忘れられないのはあの時の言葉
幸せになろうなんて思っちゃいけない

愛した女ひとりと 苦労を共に出来たなら
そんなささやかな人生も きっと悪くはない
夢、散りじり夏はすぎ去り それぞれの秋

たしか去年の初夏の頃
届いた一通の手紙には
旅好きなあいつのおふくろから
痛々しいほどの細い文字
ある雨の朝 見知らぬ町で
自ら命を終えたと
母に残した一行の言葉
悲しみだけが人生

今も忘れられないのは あいつの口ぐせ
人は自分の死に場所を捜すために生きる

ささやかに 生きている友達の
人生とは 一体何んだろう
あざやかに死んだ 友達の
人生とは、一体何んだろう
夢、散りじり夏はすぎ去り それぞれの秋

今では二人の思い出も 忘れかけるほどの毎日
ふと立ちどまる道端に 悲しいほど赤い落日

夢、散りじり夏はすぎ去り それぞれの秋
夢、散りじり夏はすぎ去り それぞれの秋




北原白秋「片恋」

あかしやの金きんと赤とがちるぞえな。
かはたれの秋の光にちるぞえな。
片恋かたこひの薄着うすぎのねるのわがうれひ
曳舟ひきふねの水のほとりをゆくころを。
やはらかな君が吐息といきのちるぞえな。
あかしやの金と赤とがちるぞえな。


金子みすゞ「梨の芯」

梨の芯はすてるもの、だから
芯まで食べる子、けちんぼよ。
梨の芯はすてるもの、だけど
そこらへほうる子、ずるい子よ。
梨の芯はすてるもの、だから
芥箱ごみばこへ入れる子、お利巧よ。
そこらへすてた梨の芯。
蟻がやんやら、ひいてゆく。
「ずるい子ちゃん、ありがとよ。」
芥箱へいれた梨の芯、
芥取爺さん、取りに来て、
だまってごろごろひいてゆ


立原道造「忘れてしまつて」

深い秋が訪れた!(春を含んで)
湖は陽にかがやいて光つてゐる
鳥はひろいひろい空を飛びながら
色どりのきれいな山の腹を峡の方に行く
葡萄も無花果も豊かに熟れた
もう穀物の収穫ははじまつてゐる
雲がひとつふたつながれて行くのは
草の上に眺めながら寝そべつてゐよう
私は ひとりに とりのこされた!
私の眼はもう凋落を見るにはあまりに明るい
しかしその眼は時の祝祭に耐へないちひささ!
このままで 暖かな冬がめぐらう
風が木の葉を播き散らす日にも――私は信じる
静かな音楽にかなふ和やかだけで と



























































































































































































この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ロマンスカ-  | トップ | 雪之丞変化  »
最新の画像もっと見る

アリス・谷村新司」カテゴリの最新記事