通りの端、緑地の外れに今の時期、毎年のように落ち葉を集めるケージができている。 このところ雨とともに吹く風で木々の折れ枝が路上に落ちているのも見られるからこのようなケージも今の季節には必要で適切なものだ。 公園のそばを通っていると栗の木から沢山の実が落ちているところに行き合わせた。 公園であるから栗の木が植わっているものの栗はもともとオランダのものではない。
このあたりではフランスの中部あたりから南に栗が見られるのではないか。 ドルドーニュあたりになると太古から様々な木の実が食され油がとられている経緯があってそれが地元の名物になっているのだが、オランダは栗の北限以北なのだろう。 もともと栗は生えない。 だからもともとのオランダの食生活にはそれがなく、フランスの影響からか今では栗を食うようにもなって今の時期、スーパーでも売られているし、トルコやモロッコ系の移民が利用する食材店にもバラ売りの栗が山積みになっているのが見られる。
道に落ちたこの栗は風雨のために落ちたので、まだ熟れてはおらずイガにしてもまだ青い。 棘も硬くはなく、人がその上を歩き、自転車のタイヤがそれを轢いて行くけれど痛くもなくパンクもしない、というような硬さなのだ。
春の一時期には栗の花が匂う。 けれどそれは町のあちこちにあるトチノキの花でトチノキはオランダ語で Paardenkastanje といってこの Kastanje というのが栗であり、だから、馬の栗という意味になるのだが、トチノキの実には栗のような鋭い棘のようなものはなく形では栗との違いがはっきりしているしトチノキの実には毒性があるといわれていて町の中に植わっている大木は圧倒的にトチノキが多く、栗は町の中にはほとんどない。 だから或るとき春にものすごく栗の花が匂ったときにはさぞかし秋には栗の実がみられるのだろうと想像していたのだが実際に見るのはここにあるこのあまり大きくない木から落ちたこの実ぐらいなものなのだ。 それも熟れて茶色になって硬く自転車をパンクさせるような棘をもつようなものでもなく少々の雨風に打たれて落ちた未熟の青いものなのだ。