この何日か天候が優れない。 風が吹き雨が窓を叩きつけるかと思うと次には晴れている。
朝起きると陽が射していた。 ゆっくり朝食を摂りながら本を読みまだ陽が射していたので歩いてプジョーのガレージに修理に出してあった車を取りに行くべく帰省中ずっと使っていたウォーキングシューズを履きデイパックにプールに行くときのもの一式を詰めてそれを背に負い歩き出した。 ガレージまで丁度1kmでプールはそこから500mほどのところにある。 家を出て300mほど舗道を歩いているとカラスが二羽舗道の何かを啄んでいる。 近づいても逃げずほんの1mほどのところに来るとちょんちょんと跳ねてわきに退きそれでも1mほどの距離を保っている。 物怖じない鳥だ。 近所の猫でも逃げる距離である。 よっぽど執着するものがあったのだろう。 左足の膝が治ってきている兆しはあるものの痛みがあるので昨晩のフィットネスは行かなかった。 1km歩いてそのあとクロールで500mを3本泳ぐ予定をしているけれど今日は大事をとってゆっくりゆっくり泳ぐつもりをしている。
ガレージで修理代を払いこみ鍵を受け取って2週間ぶりに運転席に座りプールの駐車場まで来たらリムジンバスが着き、そこから15人ほどの精神薄弱者たちとほぼ同数の付き添いが降りてきた。 プールの一番静かな時を選んで水遊びに来ているのだ。
年齢は30歳から60歳ほどまでの精神薄弱者たちのなかには身体障害を含むものもいて彼らが水に入るときは3,4人の付き添いを除いてはかなりの付き添いが一緒に水に入るのだが様々な介護器具・道具を使うから時には山の吊り橋で物を運ぶような景観になるときがある。 そのようにして水に入れたり出したりするのだ。 必ず毎回誰か興奮して奇声を挙げるものがいるのだが彼らは皆成人であるから子供たちの奇声に比べて張りがあって腹の底から出たような響もあり初めてそんな声を聞いたときには驚くかもしれないが殆ど毎週同じようなメンバーを見ていれば慣れもするものの、それでも突然近くで叫ばれればびっくりするのは確かだ。 まともに泳ぐものはほとんどおらず浮き輪につかまってプカプカ浮いているもの、水の中を歩き回るもの、金属の手すりにつかまってプールの縁を見つめながらただ水の中に佇むものなど様々だ。 湾曲して川のように流れる子供用のプールは人気があってそこで遊ぶものが多い。 自分はプールのコースを行ったり来たり泳ぐときは耳栓をしているのでそんな歓声も聞こえずそのうち1時間もしたら彼らの姿も消えている。 500m泳いでは上がってサウナで10分ほど座るというのを繰り返すのだがそんなとき時々薄弱度の低いものが来ることがある。 それでもサウナの入口まで介護人が来て一人サウナで静かに座っているのだがほどなくすると介護人が呼びに来て出ていくという具合だ。
今日は彼らのほかには6,7人しかおらず静かなプールだった。 知り合いの監視員に日本に行ってきたと言ったら自分も死ぬまでに一度は日本に行きたいと言った。
プールに2時間半ほどいる間に外が曇って吹きなぐりの雨がガラス窓を叩いていたのだが駐車場に来てみるともう晴れていた。 日差しは春なのだが気温が8℃ほどで寒い。
4時ごろ外に出て空を仰ぐと木々の間に月が出ていた。 ほぼ満月に近い。 写真に収め屋根裏部屋に戻りネットで遊んでいたらまた窓が強風に叩かれ雹の音がした。 春の嵐だろうか。 だから晩飯の食材を買いに吹き降りの中を外に出るのが億劫で冷蔵庫のなかにあるもので夕食にした。 食卓に座ったら空の半分が時雨れてあと半分にはあちこちに晴れ間が覗いていた。 こんな天気があと数日続くと天気予報は伝えている。