2016年 4月 24日 (日)
この週末、自分の住む町のウォーキング・クラブの連中25人とオランダ中央、森や林、それに広大なヒ ースの原野を残す国立公園を2日で36kmほど歩いて来た。
このクラブの定例ウォーキングには去年の今頃参加して、「3日間で45km弱歩いた」として下のようにも記している。
http://blogs.yahoo.co.jp/vogelpoepjp/64589275.html
金曜の夜8時現地集合、プログラムの説明、親睦、就寝、土曜丸一日ウォーキング22km、翌日は午後2時に「自然友の会」の家に戻るまで16km歩き、4時現地解散と2泊3日のイヴェントだった。 オランダ には各地に自然に親しむ会の連盟の家が点在しており我々はこれまで各地のそんな家を家族単位、夫婦単位で利用してきたけれどこんなグループで歩くのは2回目の経験だった。
この週末の天気予報は好ましいものではなかった。 気温は低く、たぶん10度前後、天気が変わりやすく晴れ間はほとんど望めなく霰、雨が冷たい北風に運ばれて肌に感じる温度は2,3度低く、濡れればさらに下がるから防寒はともかく雨具の用意はちゃんとすることなどと世話役からは注意があった。 初日は森や林を歩くコースが多かったので風を感じることはなかったし、雲が早く流れる中で時には木漏れ日も出る雨の降らない一日で昼食のとき集まるか11時か3時の休憩がかかるまで皆勝手にコースの小径に前後500mほどに伸びた帯となって歩いたのだった。 昼食は皆朝食の際かってにサンドイッチを作ってそれを持参するのだが自分はそれができず前日自分の町の自然食の店で買っておいたグルテン抜きのハムを使うはずだったのだがそれを家の冷蔵庫の中に置いたままで出てきてしまったので仕方がなかったけれど茹でておいた卵とバナナやオレンジ、リンゴに米を膨らませたクラッカーで難なく昼食は済ませた。
一人で歩くのではなくグループで歩くときはグループから外れないようテンポを考えなければならない。 これはアルプスなどの高山を歩く時にも家族やパートナーがいれば考慮しなければならないことではある。 ことにどこかに興味のあるもの、風景が見えてそれをカメラに収めようとするならちょっと歩を止めてそれに取り掛かると3分や5分など直に経つ。 この間にパートナーやグループは300mほど先を行っていることになるのは普通で時にはそれ以上になるかもしれない。 このグループのように先達が地図をもってそれに従って我々が後ろからゾロゾロ続くとなると森の中では折れ曲がったり交差する他のルートや小道がたくさんあり、自分の先を行く人間をいつも認めていないと迷うことになる。 高山など50m先でも上り下りの勾配のきついところ、山の襞がするどく重なっているところなどでは先達を見失うことになる。 だからゆっくり自分の思う通り時間をかけて写真を撮ることなど叶わない。 それをやりたかったらずんずん先頭よりまだ先まで歩いて行って余分の距離を稼いで置き、ほかの人々を自分の脇を通り過ぎさせ済んでから後ろのほうにつけば何とかなるもののそんなことを何度もやっていれば体力が保たない。 それにルートから外れて写真を撮りに脇に入ると迷うことにもなりかねない。 こういう危険なこともない森では死ぬことはないけれど迷うとそれをもとに戻すまで面倒だ。 それにそのうち前の連中のうちのだれかが後ろまで戻って捜しに来るかもしれない。 だからこういうことがないように最後尾にはこのグループでは最高齢で76歳、最も経験のある元刑事のレネーが二日間最後尾を守るそんな世話役だった。
去年と同じくグループのマリアン婆さんが25人分の食事を用意した。 いくつものグループが同時に炊事できる広いキッチンでウォーキングに出ず一日鶏と格闘した甲斐があり夕食には野菜、ハーブとともに赤ワインでコトコト煮込んだ鶏(コッコーヴァン)が素晴らしい出来栄えだった。 前菜、本菜、デザートとフランスの本格的な田舎の家庭料理は年寄りたちの肥えた舌を満足させるものだったし婆さんのレパートリーの広さには驚かされる。 70歳にはなっているのに小柄な体は翌日の16kmでは杖を突くこともなくスタスタと小径を行くウオーキング40年以上のベテランだ。
この婆さんは身長160cmにも足らない小柄だが普通に歩いても自分の歩くペースト以上だ。 平らな道を平均時速4.5km以上で歩くのだからダラダラとは歩けない。 食事がすんでから参加者25人が生年月日順に並んだ。 上は1940年から一番若いのは1960年生まれである。 自分は1950年生まれで真ん中であり実際並んでも上から13番目下からでも13番目だった。 女性が21人男が4人、男はもてる。 あれをしてくれこれをしてくれ、という具合だ。 毎週月曜日の夜近くのジムにフィットネスにでかける。 その爺さんばかりのグループ15人ほどの年齢層とこのグループの年齢の広がりは重なっている。 つまり同じような老人の集まりなのだ。
老人といってもばかにならない。 自分は背丈は170cmであり若い者の中に入れば小さいのだがこのグループでは必ずしもそうではなく自分と同等、まだ低い女性が何人もいる。 けれど歩くテンポを同じにすればそのうち必ず遅れる。 それは歩幅が違うからだ。 自分の歩幅を測ったことはないけれど平均40cmとすると彼、彼女たちは自分より3cmから5cmほどは長いのではないか。 100歩すぎれば同じテンポなら3mから5mの差が出ることになる。 つまり足が長いということだ。 それは彼らの腰の位置が自分に比べて高いところにあるということでもあるのだ。 だから去年4人で南仏プロヴァンスを10日ほど歩いた時にこれを実感して自分は特別気を入れて歩かねばならない経験をしていて今回さらにそれを確認した。 つまり時にはゆったりダラダラ歩く楽しみがこういうグループではないということだ。
二日目は朝から天気が悪かった。 強い雨は降らなかったものの雹が降り、雪まで舞っていた。 歩き始めて1時間ほどすると向こうの林の上に時雨が雲から降り下りているのが見えそれが直にこちらにやってきた。 リュックのなかから雨具を取り出してズボンの上から履く雨具のズボンに格闘した。 何年もポンチョで過ごしていたのだが2年ほど前オーストリアアルプスで斜面を登っている途中にポンチョの裾を踏んでバランスを失いそうになり危ない目にあって以来こういう平地を歩くときでも念のためポンチョは止めることにしたのだった。 まだ去年のプロヴァンスの時には持って行っていたのだが使う機会がなくこれが初めてだったのだ。 ポンチョならリュックを下ろして10秒ほどで被れるものが風と狭い田んぼの畔のぬかるみが混ざる径で履くのに手間取った。 薄いゴム引きの裏地が引っ掛かりジッパーが絡み時間がかかり履き切るまでにちょっと濡れた。 そうしているとそばには最後尾のレネーが帽子の廂から流れる雨粒をぽたぽたさせながら立っておりほかの連中が自分の先300mほどを行くのが雨で霞んで見えた。 薄暗い景色の中では赤は沈んで際立たないが黄色やオレンジ色は目立ちそういう点がノロノロ動いていくのを捕まえようと歩を急いだ。
林の中を抜けてヒースが広がる荒地に出ると雨が止み雲が切れてこの二日間で一番明るい日差しが広がった。 そこで休憩にして皆それぞれ地面に座るための折りたたみの薄いクッションをリュックから出して10分ほど仄かに暖かい日向ぼっこをした。
そのうちグループは21kmの長いコースと16kmの短いコースに分かれた。 自分は帰りに100kmほど車を運転しなければならないので念のため短いコースを選んで10人ほどのグループに入った。 友の会の家に戻り荷物を車に積み込んでから後片付けをして食堂で暖かい紅茶を飲み解散した。