2011年 12月 30日 (金)
多分これが今年最後のウォーキングだろう 、と二日前に書いたのだが今日がほんとの最後のウォークとなった。
今日は近くの港町、Karwijk に行く用事があった。 ひとつはそこの警察署がこの地方の銃器、火薬物所持取り扱いの許可証を管轄しているのでこの3年ほどこの時期には毎年許可証の更新にでかけなければならなく、もう一つの予定はそのあと警察署の近くにある魚屋で、兄弟家族、友人が寄って大晦日にそれぞれ持ち寄りで一晩中飲み食いするパーティーに寿司を毎年30人分ほど作っていてそれがこの何年も恒例にのなっており期待されているからそのための新鮮な魚を買うつもりもあった。
11時が警察署での約束時間で10時に起きだし、すぐに干し椎茸をぬるま湯に浸し、寿司酢をあわせていると家人が天気がよさそうだから Katwijk から Wassenaar まで海岸線を歩いて帰りは砂丘の内側の自然遊歩道を戻ってくるのはどう、と訊く。 それに異存もなく支度をして車に乗り警察署にでかけそのまま海岸通りを過ぎ駐車場に車を置き、砂浜に降りスヘーベニンゲンの方向に歩き始めた。
ここは2010年5月末にハーグの保養地スヘベニンゲンまで歩いてその後市電でハーグ中央駅まで行き電車で戻ってきたことのあるコースなのだが、ここがそのとき下のように書いたその海岸線だ。
http://blogs.yahoo.co.jp/vogelpoepjp/60690736.html
初夏とは違い冬の北海であるから絶えず高い波がなだらかな遠浅の砂浜に押し寄せて絶えず潮騒が聞こえる。 北西の風が強く海岸に押し寄せる波頭が泡だって洗濯機の軽い泡のようなものを作り、それが風に飛ばされて砂浜を滑るように上がってくる。 青空がみえるけれど彼方此方に雲があり海の彼方では時雨れているのが分かり、雲が水平線までおりてシャワーのような霧が筋となって下りているのが見えるのだが、幸いなことに風向きからするとこちらには向かってこないようだから家を出るときに慌ててリュックザックに入れ忘れたポンチョのことを思いだし、今日一日雨が降らないように願う。
暫く行くと薄く長く砂浜に押し寄せる波の間にもがきながらこちらに向かってくる黒い鳥が見えた。 漁船から流れてきた網の切れ端が羽や首に絡まっているようで上手く羽ばたけない。 水鳥だから溺れはしないものの飛べそうにもない。 ウォーキングシューズが水に浸らないところまで流れてきているのでなんとか捕まえてネットの切れ端を外してやろうとするのだがつかまりそうになると羽ばたいて深みの方に逃げていくからそうなると捕まえようもなく、また荒波にもまれてこちらに流れてくるまで待つしかない。 そんなことをしながら二度失敗し、三度目にこちらに流れてきたときに家人が注意を逸らしている隙に反対側から首と羽を掴んで確保し、波がこないところまでもっていき家人がナイフでくちばしの間から首、羽まで絡んだネットを切っていると丁度そのとき都合よく砂浜を自然保護団体の監視ジープが来たのでそのまま持っていくと、ああ、 Zeekoet(ウミガラス) だね、という。 Meerkoet(オオバン) なら湖や川にいる Koet(鶏より小さい水鳥の種類) だから承知しているけれど 海の Koet だとは。 オオバンとはあまり形が似ていなくてどちらかといえば小型の Aalscholvers(海鵜)の方に似ていなくもない。
Zeekoet(ウミガラス)の写真;
http://www.google.nl/search?q=zeekoet&hl=nl&prmd=imvns&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ei=DX7-ToWCHIeUOsHcgJ0H&sqi=2&ved=0CEIQsAQ&biw=1579&bih=883
Meerkoet(オオバン)の写真;
http://www.google.nl/search?q=meerkoet&hl=nl&prmd=imvns&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ei=s37-ToiXGc6XOvayyY0F&sqi=2&ved=0CD8QsAQ&biw=1579&bih=883
Aalscholvers(海鵜)の写真;
http://www.google.nl/search?q=aalscholvers&hl=nl&prmd=imvns&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ei=M4H-Tq2UIY-N-wbU4qXYAQ&sqi=2&ved=0CFEQsAQ&biw=1579&bih=883
Bruinvis(ネズミイルカ)の写真;
http://www.google.nl/search?q=bruinvis&hl=nl&prmd=imvns&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ei=9k__Tpb5LYifOrOe8KIB&sqi=2&ved=0CEMQsAQ&biw=1579&bih=883
このウミガラスを渡したときにこのまん丸な漁師然としたその男のことを思い出した。 3,4か月ほど前にテレビのレポルタージュ番組でこの海岸を監視しているボランティアのことが紹介されていてそこで活躍していたのがこの男だったのだが、そのときには今年は北海に住むイルカが浜に打ち上げられるケースが多く、その度に農業大学の解剖室にその原因を探るために死体を運搬し、解剖に立ち会っている姿を思い出したのだった。テレビで見たことを話すと喜んで、こちらに握手をしてきて、よく見てくれた、それは2,3日前の全国ニュースでも紹介されたように北のイルカが南下してきていること、北海の Bruinvis(ネズミイルカ)の食物が減っていて年々平均サイズが小さくなっていること、それはこの30年ほどのあいだに鱈のサイズが半分ほどになっていることと平行している、と説明してくれる。 きのうもここからちょっと離れたところに打ち上げられたネズミイルカを処分し、打ちあげられたアザラシも捕獲して施設で保護したとも付け加えた。 この鳥は外傷もないし、食い物を与え二日ほど置いておくと元気になるだろうから新年にまたここに連れてきて放つと言って早々に車で去った。
遠くにかすかにスヘベニンゲンのホテル群が見えるようになると人の姿も多くなり、馬やポニーに乗って海岸線を散策する姿も見られる。 Wassenaar の近くになると砂丘の高台にカフェーがあるところが見えた。 夏には浜のあちこちにバーやカフェーがあるけれど今は全てたたんでしまい他に休憩するところがないのでここに入ることにした。 人がかなり居る中に入って椅子に座ると屋根の上を雨がたたきつける音が聞こえ、入るまで空模様に気がつかなかったけれど間一髪で雨にあわずにすんだ。 雨が止むまでしばらくそこにいてから砂丘の裏側、人気のない砂丘の内部に入り林の中を通り、海岸線とほぼ平行に元来た方向に向かって進んだがこのあたりは自然公園のなかだから足元は砂地なものの景色が海岸とはまったく違い、起伏や植物の相に富んでいる。 それに潮騒はここまで聞こえてこない。 山のないオランダでこういうところに来たときはまるでなだらかな山の間を歩いているような気にもなるしイギリスの山間部にもこのようなところがあったように思い出すけれど、何れにしても実際のスケールはとてもそれらとは比べ物にならない。
海岸線を歩いたのは5kmほどだったけれど内陸部は曲がりくねり蛇行している部分が多いから余分に2kmはあるいているようで、だから今回も一昨日と同じ3時間ほどで12km歩いたことになる。 駐車場についてその足でまた海岸線のプロムナードをもどって魚屋で要るものを買って家にもどったら4時を少しまわったところだった。