暇つぶし日記

思いつくままに記してみよう

Roland Kirk ; I Talk With The Spirits

2007年10月27日 01時08分27秒 | ジャズ
Rahsaan Roland Kirk

I Talk With the Spirits

VERVE 558 076-2

1964



家にいる時間が多くなってから家事をすることが多くなり、定期的にトイレや浴場の掃除をする。 こういうときには今までCDウォークマンをポケットに何かを聞きながら何十分かをやり過ごしていたのだが、ついに何台目かのウォークマンが壊れて店頭から新製品が消えたこともありi-Podを買って面倒ながらCDを40枚ほど”同調”させて聞いている。

シャッフルさせてブラインドフォールドテストみたいなことをするのだが自分で選んだものだからすぐ分かるから誰がやっているのかを当てる遊びではつまらないのだがそれでも数百曲ある中から組み合わせの面白いものが出てくることがある。

体を動かしながら聴くのだから聴き込むものは避けようと選んだアルバムがこれだった。 ジャズの世界でポップな演奏でありながらガリッとするところもあり、入るヴォーカルもミンガスに似たような、合いの手も重みと軽味がまざり体を折り曲げて家事をするのに合っているようだ。

この人の特徴は全ての音を捉えて反応しようというするどい盲人の感覚をもつジャズマンでありその過剰が時としてジャズのショーマンと誤解された時代もあったのだが今となっては正統なバップとそれ以後を継ぐ時代のジャズである。 典型的なのはカズーやいろいろなおもちゃの笛をマルチリードの延長にあるものとして用い、急に救急車の響きや警官の警笛のようなものが登場することでも特徴付けられる。 これは60年代にはこの人だけではなく例えばミンガスバンドや他でも聴かれたことでもあるがここでは最初の「はと時計のセレナーデ」でそれが始まる。 60年代フォークソングブームが起こったときにはやった「ワシントン広場の世はふけて」に似た旋律で導入されていくのだが、考えてみれば録音当時に流行っていたものだし高校当時、女子高生たちとフォークダンスで繋いだ手の周りに流れていた曲であり、自分が稚拙なギターコードを覚えようと指先にまめを作っていた頃のジャズだと思うと感慨深い。

それに次の「We'll be together/People」のメドレーにしても後年B.Evansを聴いていたころを思い出すし、Peopleのバーバラ・ストライサンドの歌唱とも重なって、その語りともハミングとも言えるCrystal-Joy Albertとカークのフルートとの組み合わせがほほえましくもユーモアがあり思索を滑らかに動かせていく。。

このアルバムの表題曲はガメランの金属ドラムの響きで始まりセクションの終わりには再度登場して間に緩やかなフルートのメロディーが挿入、緩く激しく瞑想風のアドリブが続くということになるのだが、それも様々な想い、幻想、亡霊などの精との対話ということとなり、その次の懐かしいオルゴールの音がはじき出す「Ruind Castle(荒城の月)」とともに自分には中学校当時のブラスバンドで選んだクラリネットを歯並びを調べられすぐにチューバに換えられたことが思い出されてくる。

ジョン・ルイスで70年ごろに聴いた「ジャンゴ」に続く歌詞の味わい深い「マイシップ」で様々な精との対話が出来、それに寄り添うカークの演奏はこのアルバムの前に録られた「Domino]とともに私の好むアルバムなだ。 

そういえば、数年前オランダ北部の小さな村で2時間ほどの演奏のためにシカゴから飛んできたKen Vandemarkが幾つかカークのものを演奏したのでその後、小さなチャペル前のこんもりした可愛い墓石がならぶところで立ち話をしていてどうしてカークなのか問うと、どうしてかなあ、いま、あちこちでやってるからこの墓石の霊のように立ち返ってくるのかもしれない、と言っていたのを思い出す。