山下翔さんの個人誌「meal」が届きました。第七回福岡ポエイチにあわせて作ったのだそうです。
「焼肉」と「カレーライス」という連作ふたつと、もうすぐ刊行されるという第一歌集からの自選20首が掲載されています。
・カーテンは裾のほうから膨らんですぐまたかへす吸はるるごとく
・改札のまへにおちあふいくたりを集合時間まで眺めたり
・目覚めたら音で雨だとわかるのにカーテンを開けて窓まで開ける
・切られたら切られるまへはもう浮かばずそのやうに恋をしてゐたことも
カーテンが吸われるみたいに返すというのがおもしろい。よく見てきた光景で、「吸われる」にそうそう!と思う。2首目の歌はそんなところを詠むのか、とちょっとびっくりします。自分は集合時間までそこにいて、改札の前で待ち合わせをしている他人を眺めている。まったく意識の外の時間。予定にもなかったし、そう長い時間ではなくて、ぼんやりと眺めている時間を歌にしている。
雨が降ってほしくなかったのか。目覚めると雨の音がしている。え、うそ、雨??ってカーテンを開けて、窓まで開ける。あーあ、やっぱり降ってる・・・という感じでしょうか。「窓まで開ける」のところで急に「素」に戻っているのがなんだか新鮮です。ほんとうに寝ぼけている状態から覚めていくときって、こんな感じだなぁと思います。
「切られたら」の歌の前には散髪の歌があるので、「切られる」のは髪。だけど、下句の「そのやうに恋をしてゐたことも」がついていることによって、なんとなく切られるまでの時間(恋をしていた時間)のことまでもうなにも浮かんでこないよう。
・ひかりさす方へかたむけて読む本のあかるいなあ春が過ぎようとして
・梨水(なしみず)のしみとほる夜のあかるさや家のあちこちに暗がりがある
明るいのに寂しさがこみあげてきたり、あちこちに暗がりがあることにきがついてしまう。そういう歌に立ち止まりました。
第一歌集が楽しみです。