自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

口蹄疫の感染は発症半日後から平均1.7日間と短い

2011-05-06 18:12:19 | 牛豚と鬼

英国パーブライト研究所の報告(リンク1) がインターネットでは大きく報じられています(リンク2) 。これまでも口蹄疫の血中ウイルスは発症前から認められ、発症後抗体ができると血中ウイルスも感染力も消失することは知られていました(リンク3)。今回の牛による試験では、感染する期間は非常に短く、発症後半日から平均1.7日間であることが明らかにされました。したがって、発症前に遺伝子検査で陽性のものを完全隔離(殺処分)すれば、感染の恐れはないことになります。

これまで遺伝子検査の重要性を指摘(リンク4),(リンク5)してきましたし、宮崎大学の山崎先生は口蹄疫の遺伝子検査を開発(リンク6)されています。この遺伝子検査を届出用の検査として利用すれば、明日からでも実用化試験は可能です。

家伝法では予防的殺処分に法的根拠を与えましたが、予防的殺処分が被害を大きくしていることを我々は韓国の事例から学んだばかりです。また、感染畜と感染しているかも知れない疑似患畜を識別する方法を知らないために、疑似患畜として大量に殺処分してきましたが、今回の研究報告は感染力のある患畜を明確に識別できるだけでなく、遺伝子検査により感染力を持つ前に完全隔離(殺処分)すれば感染の恐れがないことが明らかにされ、科学的な裏付けのある口蹄疫の防疫対策、ことに殺処分のルールを確立できるようになりました。

国や県はすぐに口蹄疫対策を見直すべきです。また、この見直しに当たっては、口蹄疫は人の健康には影響を与えず、ただただ家畜への感染を防ぐための対策であることをしっかりと肝に銘じておくべきです。

口蹄疫のワクチン接種をした家畜の貿易はOIEコードで禁止されています。緊急ワクチン接種も同様な扱いを受けていることは科学的でないとし、その見直しに努力するとオランダの研究者は、口蹄疫10周年でコメント(リンク7)をしています。国内市場においてもワクチン接種畜が差別されることを避けなければなりません。韓国ではワクチン接種を2回実施していますが、当然のことながら市場流通をさせています。また、韓国では牛、豚のワクチン接種が1巡した2月10日から、感染畜のみの殺処分と感染農場のみの移動制限にしています。感染畜の認定をどのような検査によって実施しているのか調査できていませんが、ワクチン接種と遺伝子検査を組み合わせれば殺処分を限られた家畜だけにすることができることを実証しています。

口蹄疫の殺処分は感染拡大を防止するために実施されるのであり、症状が出る前の遺伝子検査陽性や自然治癒した抗体検査陽性の家畜は埋却する必要はなく、食用(加工を含む)と畜を原則とすべきでしょう。ましてや健康畜を殺処分する必要は全くありません。

殺処分と埋却を増やすことは、経営にとっても国や県の財政上からも、地域の生活や環境にとっても何一つ許されることではありません。ワクチン接種した家畜を市場が拒否するわがままも許されません。殺処分を少なくする方法があるのに、それを無視することはもう許されません。東日本大震災から時代は変わっていることに関係者は早く気付くべきです。

2011.5.6  開始 2011.6.23 更新中


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
発症しても1.7日以上過ぎれば患畜から他の牛へ直接... (南の島)
2011-05-07 20:52:23
発症しても1.7日以上過ぎれば患畜から他の牛へ直接感染させる能力がなくなるということでしょうか?そうだとしたら、種牛などは発症しても数日間隔離したら、付着したウイルスを除去できさえすれば、殺処分が必要無いということになるのではないでしょうか?

発症以前の対策だけではなく、貴重な牛に関しては発症後でも生かせる望みが出てきたのではないでしょうか?

それ以前の防疫方法の見直しを農水省に求めている現状で、こんな質問はかなり気が早いのですが・・・・。

リンク先では、平均1.7日という曖昧さや、全てのタイプの口蹄疫にあてはまるのかという疑問は残ります。
返信する
抗体ができれば感染させる力は消失しますが、現在... (satousi)
2011-05-08 11:10:56
抗体ができれば感染させる力は消失しますが、現在のOIE国際基準では感染畜は食用を含めて殺処分しなければ清浄国回復ができません。この研究報告につきましてはもう少し詳しく紹介する予定ですが、これまで発症が確認されたら24時間以内に殺処分することが重要とされていた防疫対策を裏付ける論文であると同時に、発症確認後2日以内に殺処分できない場合は感染拡大を防止できないので、ワクチン接種が必要なことを示しています。また、殺処分の科学的根拠として、遺伝子検査で陽性のものを基本とすべきことも示しています。そういう意味で山崎先生の開発された簡易遺伝子検査(LAMP法)は大きな役割を果たし、実用化が急がれます。山形さんからLAMP法のコメントを頂きありがとうございました。
返信する

コメントを投稿