自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

日本は「生かすための緊急ワクチン」を拒否し続けるのか

2015-04-19 23:23:13 | 牛豚と鬼
 日本は口蹄疫に感染していなくても感染の恐れがある地域の牛、豚を「予防的殺処分」し、殺処分のためのワクチン接種を防疫指針としている。

 『2010年宮崎口蹄疫発生当時からOIEの日本の首席獣医官(CVO: Chief Veterinary Officer)であり、欧州家畜協会から届けられた「生かすための緊急ワクチンを!」の緊急声明を無視した川島農林水産省動物衛生課長は、2012年5月に行われた第80回OIE総会において理事に選任されました。理事会はOIE総会が開催されていない期間に総会に代わって業務を遂行する機関ですが、川島理事はOIEで「生かすための緊急ワクチン」を拒否し続けるのでしょうか。』

 これは先に、13.口蹄疫と原発、そして戦争の類似点で指摘したが、この対談(10.ワクチン接種と国際貿易と国内流通問題)で山内一也先生は「OIEコードでは、清浄国で口蹄疫が発生した場合の清浄国復帰の条件として、、(a)感染・疑似患畜をすべて殺処分した後3ヶ月、(b)感染・疑似患畜とワクチン接種家畜をすべて殺処分した後3ヶ月、(c)感染・疑似患畜とNSP抗体陽性家畜をすべて殺処分した後6ヶ月という3つの選択肢があり、今回の宮崎の場合は(b)の条件を選択しましたが、重要な点は、政府が(c)という選択肢のあることを国民に伝えず全頭殺処分しか方法がないといった対応を行ってきたことです」と指摘されている。鹿児島大学 岡本嘉六教授のブログでも「第8.5.8条 清浄資格の回復」として、「ワクチン非接種清浄国に復帰するには全頭殺処分が前提とされている」と解説している。獣医・専門家は、なぜ「ワクチン接種後に殺処分の必要はない」ことを紹介しないのか、獣医界は「名誉の殺人」のように「予防的殺処分」を常識とする異常な世界なのだろうか。

OIE連絡協議会の開催状況(平成26年度 第2回)によると、2014年9月にOIEは「口蹄疫」に関する章の改正案(農水省まとめ)を提出しワクチン非摂種清浄国に復帰する条件として、c)感染・疑似患畜とNSP抗体陽性家畜をすべて殺処分した後6ヶ月という選択肢について下記の2つの条件が満たされた場合は、防疫措置完了後の経過期間を3ヶ月に短縮する改正案の検討を求めている。*参考 OIE Code-FMD(2014)
第7条清浄性復帰(1) Recovery of free status(2014)
① OIEマニュアルに準拠したワクチンを使用し、
② 反芻獣の場合はワクチン接種動物とその子畜全頭、他種の動物については抽出により、ワクチン接種効果を確認し、NSP抗体検査陽性畜が残っていないこと。

これに対して日本は以下の理由で反対している。
1)NSP抗体検査の感度や特異度の制約に懸念があること
2)ワクチン接種畜の全殺処分と同じ待機期間とするリスクが同じとは考えられないこと
3)ワクチン接種清浄性については短期間での再発が考えられること

緊急ワクチンを接種して殺処分を少なくし、清浄国への復帰をできるだけ早くしようとする世界の口蹄疫専門家の改正案に対して、日頃から海外の情報や真実を隠蔽し、ワクチン接種と殺処分をセットにしようとする日本の態度は、科学の進歩や国民や家畜に対して誠実ではないと思う。ワクチンを接種したら感染源となる家畜が残る、いわゆるキャリアー問題は「ゼロの証明(悪魔の証明)」であり、前提条件を明確にした範囲でしか実証できないし、実験的に証明しない限りは科学とは言えない。日本に今、口蹄疫ウイルスは存在しないことを証明するには、遺伝子検査と抗体検査を全頭検査し、その範囲でいないことを証明出来るだけである。また、キャリアーを主張するなら抗体陽性家畜と健康畜を同居させて感染実験をして感染の実態を明らかにすべきだ。

キャリアー問題は実験的に証明されるべきだし、ワクチンを信用しないのは家畜を救いたいのか、それ以外の何を大切にしたいのか明らかにして欲しい。もっとも家畜を救うために家畜を殺すというのは科学が発達している今日、大規模経営を推進させた農水省としては論理矛盾であろう。

参考 キャリアが感染源になる可能性はゼロに近い
    NSP抗体検査を問題にしてワクチンを否定する根拠はない

初稿 2015.4.19


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