鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

福禄寿図鐔 東山子壽秀 Toshihide Tsuba

2010-12-18 | 
福禄寿図鐔 東山子壽秀


福禄寿図鐔 銘 東山子壽秀(花押)

 これも月明かりを頼りに天空を行く福禄寿の姿を描いた作。雲の表現を比較して鑑賞されたい。月も金の真砂象嵌で鮮やかに描いている。鹿が描かれているのは、蝙蝠を福に擬え、壽を霊芝に擬えるのと同様、鹿をロクと読ませて禄の意味を持たせているのである。子供が瓢箪を担いでそのうしろを歩んでいるのは、福禄寿あるいは寿老人が酒好きであるとの伝承による。鉄地高彫象嵌で、雲の様子や人物などを的確に表現している。壽秀(としひで)の知名度は低いが上手な金工である。


福禄寿図鐔 寶殊齋政景 Masakage Tsuba

2010-12-18 | 
福禄寿図鐔 寶殊齋政景


福禄寿図鐔 銘 寶殊齋政景

 七福神の一として遍く知られる福禄寿を題に得た作。平坦な造り込みは東龍斎派とは異なるも、添景である雲、波立つ様子などの表現は東龍斎派の典型。美しい曲線、異様なまでに騒がしい雲の形状、その動感、透かしに金の真砂象嵌で月の明かりを表現するなど、多彩な手法を組み合わせている。もちろん主題である福禄寿の背後にある透かしは夜の月を表現したもの。福禄寿は、寿老人と対で考えられ、大天の中心北極星、人の寿命を知る神仙の神と考えられており、星空や月空を行く姿を捉えた作が多い。政景(まさかげ)は東龍斎派ではことに上手な一人。