鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

富岳図小柄 東龍斎清壽

2010-12-15 | 小柄
富岳図小柄 東龍斎清壽


富岳図小柄 銘 (東龍斎清壽花押)

 素銅地を背景に銀と金の真砂象嵌、片切彫で富岳を描いているだけで良くある手法にみえるのだが、拡大観察によってその違いが分かるであろうか、特殊な技法が用いられているのである。雪な銀平象嵌、富岳の姿態は片切彫、迫る雲と山肌は金の真砂象嵌。立波に水飛沫を左の空間に描き添え、波間からの遠望という趣向。この波間からの視線も新しい。富岳の山裾部分の片切彫の彫り込まれた面に、実は微細な石目地状に銀粉が散らされているのである。かなり拡大してみなければ分からない事実である。花押のみだが清壽の作である。