とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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ミャンマー大冒険(80)

2006年07月26日 22時39分08秒 | 旅(海外・国内)
重いスーツケースとリュックを背負って川岸へと歩いた。
辺りが暗いので足下に気をつけなければならない。

Tさんの先導で川岸へ出ると、そこには大きな船が横付けされていた。
大きさは神戸港の遊覧船ぐらいだが、遊覧船と違うのはあちらこちらペンキも剥げていて、かなり年季の入った、くたびれ加減の船というところだろう。
それに中が薄暗く裸の蛍光灯と電球がボンヤリと甲板を浮かび上がらせていた。

「大丈夫ですか?」
と訊いたのはTさんだった。
「大丈夫ですよ」
と私は答えた。

なぜこのような互いの安全を確認するような会話が交わされたかというと、船に乗るためには川岸の土手から船に向かって掛けられている巾30センチ、長さ10メートルぐらいの木製の足場板を渡らなければならなかったからだ。
もし足を滑らせて踏み外すとエヤワディ川で朝の沐浴をすることになってしまう。

足場を渡る安全のための手摺りはあるにはあった。
しかしその手摺りというものは船側と土手側に船会社の作業員が丸い鉄パイプを手摺りのように持っているという持って渡らないほうが安全ではないかと思われるような代物なのだ。

私とTさんの重いスーツケースは船の乗組員(たぶん。ポロシャツにズボンだから普通の人と見分けがつかない)が運んでくれたので、私たちは自分の心配さえすればよかった。
それでもリュックを背負っているので落下の危険性は手ぶらよりはある。
手ぶらなら落ちても別になんてことはないが、私のリュックにはiBookが入っており、それごとドボンといくとシャレにならない。

足場板の上をバウンドしながら渡り終えると一安心。
船の中を見回すと、すでに多くの地元のミャンマーの人たちが思い思いの場所に座っている。
座っているといっても座席は無いので甲板の上に座っているのだ。
甲板は二層になっているので、座席は上甲板にあるのかも知れない。
それにしても、外見と同じでいささか小汚い船だな。
と、観察していると、

「なにしてるんですか?こっちですよ」

とTさんは私を呼び止めた。
Tさんの声の方を振り向くと、このボロ船の向こう側にもう同じような大きさの船が横付けされていた。
私たちが乗船するのはそちらの船なのであった。
そちらの船は、まさしく観光船。
小奇麗な中型のクルーザーであった。

小奇麗であってもそこはミャンマーのこと、期待は裏切らない。
1階船室は瀬戸内海を行き来する連絡船のような前方に向いた座席がずらりと並ぶ劇場形式で、四隅には据置型のパッケージエアコンが置かれていた。

「これはこれは。さすが観光船ですね。涼しい航海ならぬ川下りができそうで」
「エアコンですか?たぶん動かないと思います」
「..........動かない?」
「ハイ、たぶん」

ヤンゴンの市内バスで「エアコンバス」というのは、エアコンの「機械」が付いているバスのことで、それが動くかどうかは別問題であったことを思い出した。
したがって、この船もまた「エアコン付きの観光船」ではあったのだが、正確には「エアコンの『機械』付き観光船」なのであった。

「ああ、おはようございます」
「おはようございます」

私たちに続いてデイビットさん夫妻が男性ガイドに連れられて乗船してきた。
ヤンゴンからの列車も一緒、バガンまでの船も一緒なのであった。
デイビットさんのガイドはマンダレー限定。
ここからはバガンに到着するまで彼らは二人だけの旅になるが、前にも述べたようにTさんは彼らが手配した旅行社の社員なので、万一の場合、私だけでなく彼らの世話もすることになるのだろう。
Tさんは、まことにもってご苦労さんなことである。
疲れているだろうに......。
と心配してTさんの方を見ると、デイビットさん夫妻のマンダレーの男性ガイドと楽しそうに世間話に花を咲かせていた。
Tさんは結構タフなのかも分らない、と思った。

つづく

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