とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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クーデター

2006年03月01日 20時52分05秒 | 国際問題
フィリピンで「アロヨ大統領を暗殺せよ」というクーデターの企てが発覚し、全土に非常事態宣言が出されたのは先週のこと。
アロヨ大統領の個人的な強引な政策、しかも自己中心的な身勝手さが国軍を中心とする国民の不満を誘発した、というのが真相だという。

フィリピンは東アジアにおける唯一の米国型民主主義国家で、その体制はフィリピン人ではなく米国人によって作られた。
その主動的役割を果たしたのは日本とも縁の深いマッカーサー。
ただしマッカーサーと言っても、へっぴり腰を悟られないようにサングラスをしてパイプくわえ恰好だけつけて厚木に降り立ったダグラス・マッカーサーではなく、その父親である。

フィリピンは日本と同じ島国であるが、その島数は日本とは比べ物にならないくらい多い。
ここにはかつて島ごとに統治者がおり、それぞれの言語、それぞれの文化を育んでいた。
そこへ大航海時代にスペイン人がやって来て全土をメキシコと同じ行政区におき統一。
他の植民地でも行っていた過酷な行政を敷いたのだった。
そんなことをすれば自由を求めて独立したくなるのが人情で、各地で武装蜂起するグループが出現しただした。
やがて米西戦争などを経てスペインの国力が低下するとイギリスが一時的に統治した。
そのとき大規模な独立闘争が発生するが、これをアメリカが協力する形で後押し、イギリスを追いやると、今度は米国がいろいろと難癖をつけフィリピンを占領した。
独立闘争の指導者には武力で有無を言わせず、米国は遅まきながらフィリピンというアジアでの植民地獲得に成功する。
このあたりは100年後にベトナムでやったことに良くにている。
で、占領後にフィリピンの冷酷過酷な行政責任者を引き受けたのがダグラス・マッカーサーの父親アーサーだった。

アメリカに教育を受けた国にまともな国が少なくないことに気づいている人は少なくない。
中南米諸国の多くがそうであるし、フィリピンもそうだ。
第2次大戦後、アメリカの教育を受けてしまったために我が国も変な国になってしまったが、歴史の長さや個性の濃さが幸いし、かろうじて徐々に原点に復帰しつつある。

そしてアメリカに教育を受けた国は日本を除いて国民の統一のシンボルとなる「王」がいないという特徴がある。
たとえ王がいても、ハワイのように王位をはく奪し、占領することなど朝飯前。
日本は例外でホントにラッキーというべきだろう。
アメリカ合衆国に王がいないので、同じ体制を作りたがるというのが真相なのか。

フィリピンも中南米諸国も王様がいない。
だからたとえばかつてのマルコスや今回のアロヨ大統領のような「自己中心的物欲権力主義者」が登場することになる。
誠にご愁傷様である。

一方、「クーデター」といえば私がちょくちょく訪れるタイの名物であることも有名だ。
数年おきにクーデターが繰り返され、そのたびに新聞紙上を賑わしていたのだが1995年のクーデター騒動以来、絶えてなかった。
ところがここ最近タクシン首相の守銭奴的行為に怒りを発した国民が大規模なデモをバンコク都内で展開。
日本語新聞バンコク週報によると「軍も国民に共感しておりクーデターの可能性がある」とまで報道されている。

とはいえ、ここがフィリピンと異なるのはアメリカの教育をうけていないことと王様がいらっしゃること。
タイのクーデターは「偉大な父親の元で兄弟げんかをするバカ息子たち」の感があり、今回も話がもつれると王様が登場して「両者を呼びつけ叱って終り」ということになるだろう。

思えば日本も歴史上成功したクーデターで最後のものは、なんと大化の改新。
1350年前。

フィリピンもこの際、王制かそれに類する制度を作っては如何か。
大統領はあくまで大統領でしかないのだから。