人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「METライブビューイング アンコール2018」でロッシーニ「セヴィリアの理髪師」を観る / ラ・ルーチェ弦楽八重奏団コンサート・チケットを取る~ブラームス「弦楽六重奏曲第2番」ほか

2018年09月10日 07時23分57秒 | 日記

10日(月)。わが家に来てから今日で1439日目を迎え、全米テニスオープン女子シングルス決勝で 大阪なおみが日本選手初の4大大会優勝を遂げたが、対戦相手のセリーナ・ウィリアムズが3度の規則違反で相次ぎペナルティを受ける異例の事態となった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      セリーナ選手は女王らしくない態度だった 大坂なおみは間違いなく実力で勝った 

 

         

 

昨日、東銀座の東劇で「METライブビューイング  アンコール2018」のロッシーニ「セヴィリアの理髪師」を観ました これは2007年3月24日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です 私がこの作品を観るのは2007年、2012年、2017年の9月に次いで今回が4回目ですが、何回観ても飽きません 

出演はロジーナ=ジョイス・ディドナード、アルマヴィーヴァ伯爵=フアン・ディエゴ=フローレス、フィガロ=ペーター・マッティ、バルトロ=ジョン・デル・カルロ、ドン・バジリオ=ジョン・レリエほか。演奏はマウリツィオ・ベニーニ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団、演出=バートレット・シャーです

ステージは通常の舞台に加え、指揮者とオケを取り囲むように張り出し舞台がしつらえてあります ベニーニのタクトで序曲が軽快なテンポで進められます ロッシーニ・クレッシェンドが仕掛けられたこの序曲にはオペラの魅力が凝縮されています モーツアルトの「フィガロの結婚」序曲を聴く時と同じ感覚、何か楽しいことが始まるワクワクドキドキ感が半端ない

アルマヴィーヴァ伯爵(リンドーロ)を歌ったフアン・ディエゴ=フローレスはペルー出身のテノール(レッジェーロ)ですが、喜劇的なオペラの主役を歌わせたら彼の右に出る者はいないでしょう 幕間のインタビューで「聴衆に、自然に歌っているように思わせるには、練習に練習を重ねるしかありません」と語っていましたが、どれほど多くの練習を重ねたらあれほど軽やかな高音が出るのでしょうか すごいとしか言いようがありません。喜劇役者的な演技も抜群です

ロジーナを歌ったジョイス・ディドナートはアメリカ出身のメゾ・ソプラノですが、輝くようなコロラトゥーラを駆使して美しい声で歌います 彼女の演じるロジーナは男に守られる弱い女性ではなく、自分の意思を持つ強い女性です

二人に負けない魅力を発揮していたのが、フィガロを歌ったスウェーデン出身のバリトン、ペーター・マッティです 「街の何でも屋」らしく機転が利き、何でもこなす精力的なフィガロを歌い演じました

ロジーナの後見人バルトロを演じたジョン・デル・カルロは何回観ても可笑しいです 太めの体格が後見人のバルトロにピッタリで、ちょっとした仕草が笑いを誘います。早口言葉によるアリアは見事でした

ドン・バジリオを歌ったジョン・レリエは深みのあるバリトンで、金のためなら敵味方をコロコロ変える狡猾な医者を見事に演じました

バルトロ家の女中のベルタは1度だけ第2幕で歌いますが、この歌手(名前は失念)が素晴らしい 「年寄りは妻を求め、娘は夫を持ちたがる。二人とも縛っておけばいいのに。だけど、みんなを夢中にする恋とは一体なんだろう?誰もがかかる病気なんだね。私だって恋してみたいもんだよ。結果は分かってるけどね」と、年老いた女性の悲哀を歌い上げます

マウリツィオ・ベニーニ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団の演奏が素晴らしい 一番良いのは軽快なテンポを持続して音楽の流れを絶やさないところです そして、それを見事にカバーしていたのがバートレット・シャーによる動きが止まらない演出です 幕間のインタビューで「喜劇的なオペラの演出で一番大切なのは何ですか?」と訊かれ、「混沌を維持することです」と答えていましたが、まさに常に誰かが歌い、何かが動いていました

この公演は間違いなく当時 最高のキャストによる上演です これほど適材適所の歌手陣も滅多にないでしょう あれから11年が過ぎました。この間、ジョイス・ディドナードは2012-13シーズンでドニゼッティ「マリア・ストゥアルダ」のタイトルロール、2013-14シーズンのロッシーニ「ラ・チェネレントラ」のタイトルロール、2014-15シーズンでロッシーニ「湖上の美人」のエレナ、2017‐18シーズンでベッリーニ「ノルマ」のアダルジーザを歌うなど、METの看板歌手に成長しています ぺーター・マッティは2012-13シーズンで「パルシファル」のアンフォルタスを歌っていました。フアン・ディエゴ=フローレスは2010-11シーズンでロッシーニ「オリ―伯爵」のタイトルロールを歌っており、来たる2018‐19年シーズンではヴェルディ「椿姫」でアルフレードを歌うのが嬉しいところです

「セヴィリアの理髪師」の上映時間は休憩、歌手へのインタビューを含めて3時間21分です

東劇でのMETライブビューイング「セヴィリアの理髪師」の今後の上映日程は、9月10日(月)~12日(水)の18:30から、同13日(木)、14日(金)の14:30から、10月1日(月)18:30からの6回です

こんなに楽しいオペラはない 観て絶対に後悔しません。強くお薦めします

 

     

 

         

 

来年1月4日(金)午後7時から東京文化会館小ホールで開かれる「ラ・ルーチェ弦楽八重奏団」のコンサート・チケットを取りました プログラムは①ブラームス「弦楽六重奏曲第2番」、②ブルッフ「弦楽八重奏曲」、③グリエール「弦楽八重奏曲」です 「ラ・ルーチェ弦楽八重奏団」は東京藝大と桐朋学園大 各4名のメンバーにより2013年に結成されたユニットです

 

     

     

 

確か、前回メンデルスゾーンの「弦楽八重奏曲」を演奏するコンサートに行けなかった記憶があります 次回は是非と思っていた公演です

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小林研一郎✕吉田南✕東京フィルでベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」、「交響曲第7番」を聴く~演奏後 コバケンが文京シビックホールに注文:響きの森クラシック・シリーズ

2018年09月09日 07時23分40秒 | 日記

9日(日)。まだまだ残暑が続きます そこで暑気払いの掛詞遊びにお付き合いください

      長引く今夏の猛暑と掛けて何と解く?

      毎日のご飯と味噌汁と解く

      そのココロは?

      いつまで経っても あき がきません

賢明な読者は「飽き」と「秋」の掛詞にお気づきですね 明けない夜はない、終わらない夏はない。もうしばらくの辛抱です。団結がんばろう 労働組合か

ということで、わが家に来てから今日で1438日目を迎え、トランプ米大統領は大統領専用機で記者団の質問に答え、8日に始まった閣僚級協議が始まった対日通商交渉について、「日本は貿易問題でオバマ政権と話そうとしなかった。報復されないと思っていたからだ。今は日本は全く違う風に考えている。米国とのディールに応じなければ大変な問題が起こると思っている」と述べた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                 トランプ大統領とお友だちの安倍首相は 総裁選前に説得して 友達力を見せてよ!

 

         

 

昨日、文京シビック大ホールで「響きの森クラシック・シリーズ」を聴きました プログラムはベートーヴェン①ヴァイオリン協奏曲ニ長調、②交響曲第7番です ①のヴァイオリン独奏は吉田南、管弦楽は東京フィル、指揮は小林研一郎です

 

     

 

このシリーズは人気があり 会場はいつも通り満席です    オケはいつもの通り 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという編成、コンマスは三浦章宏です

1曲目はベートーヴェン(1770‐1827)の「ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品61」です    この曲は1806年、アン・デア・ウィーン劇場のコンマス、フランツ・クレメントのために作曲され、彼の独奏で初演されましたが、直前まで曲が仕上がらなかったことなどから、満足な評価は得られませんでした この作品の真価が認められたのは、ベートーヴェン死後の1844年に当時13歳のヨーゼフ・ヨアヒムがメンデルスゾーンの指揮で演奏してからのことでした 第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」、第2楽章「ラルゲット」、第3楽章「ロンド、アレグロ」の3楽章から成ります

ソリストを務める吉田南さんは、2014年の日本音楽コンクールで第1位、2015年のシベリウス国際ヴァイオリンコンクールでは最年少入賞、2016年モントリオール国際音楽コンクールでは最年少第3位に入賞しています 現在ボストンのニューイングランド音楽院に学費全額免除で在学、同時に桐朋学園ソリストディプロマコース学費全額免除特待生として在学中の逸材です

ブルー系の衣装に身を包まれた吉田南さんがコバケンとともに登場します コバケンのタクトで第1楽章が、弱音によるティンパニの4連打で開始されます。コバケンは相当ゆったりとしたテンポで音楽を進めます 長い序奏に次いで吉田さんの独奏ヴァイオリンが入ってきます。この曲は技巧をひけらかすような曲ではないだけに、反って難しさがあると思われますが、コバケンのダイナミックな指揮に呼応するように悠然と演奏を展開します 第1楽章は演奏時間にして全3楽章の半分以上を占める長大な楽章ですが、吉田さんは集中力を失うことなく美しくも力強い演奏を繰り広げ、いくつかあるカデンツァの中から選んだクライスラーのものを確かなテクニックにより見事に弾き切りました 第2楽章では、オケによる冒頭の演奏が素晴らしく、思わず涙が落ちそうになりました ヴァイオリンのソロが入ると叙情的な演奏が展開します 間を置かずに移行する第3楽章では一転、ヴァイオリン・ソロによる躍動感に満ちた音楽が展開し、輝かしいフィナーレを迎えます 会場いっぱいの拍手が送られ、2階席のそこかしこからブラボーがかかりました

全体的にテンポがゆったりとしていたので、通常は45分程度の曲が 55分以上かかったのではないかと思います   吉田さんの演奏はダイナミックで、なおかつ繊細さも併せ持った立派な演奏でした アンコールにイザイの「ヴァイオリン・ソナタ第1番」から第3楽章「アマービレ」を鮮やかに演奏し、再び満場の拍手とブラボーが寄せられました 将来が楽しみなヴァイオリニストです

 

     


プログラム後半はベートーヴェン「交響曲第7番イ長調 作品92」です この曲は1812年に作曲され、翌13年の初めに修正のうえ完成されました 初演は1813年12月にウィーン大学講堂で開かれた「戦争傷病兵のための慈善コンサート」で、「戦争交響曲」「ウェリントンの勝利」と共に演奏されました 共通点は祝祭感溢れる曲、別の言い方をすればド派手な曲です この曲は少し前の日本では、「のだめカンタービレ」でテーマ・ミュージックのように使われていました なつかしか~  上野樹里の のだめ

この曲は第1楽章「ポーコ・ソステヌート~ヴィヴァーチェ」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「プレスト」、第4楽章「アレグロ・コン・ブリオ」の4楽章から成りますが、この作品の大きな特徴は「リズム」「メロディー」「ハーモニー」の音楽3大要素のうち「リズム」が徹底的に強調されていることです

コバケンのタクトで第1楽章が開始され、長い序奏が演奏されます オーボエ、ホルンが素晴らしい ヴィヴァーチェに入ると半端ないリズム感がたまりません 第2楽章は葬送行進曲風なメランコリックな音楽です。コバケンは足を引きずるように演奏します 第3楽章は「スケルツォ」に相当する音楽です。ホルンと弦楽器の対話が素晴らしい 間を置かずに突入する第4楽章の推進力はワーグナーの言う「舞踏の神化」です とくにフィナーレにおける低弦による「バッソ・オスティナート」には興奮を禁じ得ません バランス感覚のない指揮者だと重低音が効かず台無しになってしまいますが、コバケンはしっかりと効かせています

ベートーヴェンらしいダイナミックな演奏に満場の拍手が送られました コバケンは例によって、弦の最前列8人と握手、コントラバスの首席と握手、今度は管楽器の方に出向いて楽器セクションごとに立たせて握手を求めます。彼の場合はこの「儀式」が長いので、アンコールを待たずに帰るお客さんもチラホラ見られます そして、最後の〆にマイクを持って再登場し、いつもの「挨拶」が始まります どうやら夏風邪でも引いたようで、ガラガラ声で 時々咳き込みます。体調が悪い中を「東京フィルの皆さんとベートーヴェンに励まされて本番に臨んだ」と語っているようです 驚いたのは そのあと「文京シビックホールにお願いがあります。もう少し音響が何とかならないでしょうか」と発言したのです。すると2階席の上の方から拍手が起こりました コバケンがこのホールに不満を述べるのを聞いたのはこれが初めてだったのでビックリしました というのは、数年前に、同じ文京シビック「響きの森クラシック・シリーズ」で尾高忠明氏が東京フィルを振った際に、「このホールの音響は素晴らしいです 地元の皆さんは誇りに思っていいと思います」と語っていたのを思い出したからです 私自身は、このホールの音響が凄く良いとは思いませんが、特段 悪いとも思いません   この日、コバケンは風邪で熱があり 耳が多少おかしくなっていたのではないか、とも思いましたが、真相は本人にしか分かりません   文京シビックホールはこの発言を受けてどういう対応を図るのでしょうか

コバケンは最後に「今日、NHKのインタビューがあり『なぜダニーボーイをアンコールで演奏する機会が多いのか?』と訊かれ、『20年ほど前に父親が亡くなった時は、ちょうどダニーボーイを演奏していた時で、天に昇っていく煙を見て、手を伸ばせば父親と握手できるのではないかと思った経験があるからです』と答えました」として、弦楽合奏により「ダニボーイ」を感情を込めて演奏し この日のコンサートを締めくくりました

この日はベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」で爽やかな南風が吹きましたが、指揮者は夏風邪を患っていたようです   良からぬ人がコバケンに秋風を送る前に 風邪を治して元気になって 爽やかな秋を迎えてほしいと思います

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プッチーニ「三部作」(外套、修道女アンジェリカ、ジャンニ・スキッキ)を聴く~東京二期会公演 / 東京交響楽団2019‐2020シーズン 定期会員継続へ

2018年09月08日 07時23分53秒 | 日記

8日(土)。わが家に来てから今日で1437目を迎え、米ニューヨーク・タイムズは5日、「トランプ氏はまったく分かっていないが、我々のジレンマは、トランプ政権の高官の多くが、トランプ氏の政策や彼の最悪の考えをくじくことに絶えず努力しているということだ。大統領はわが国の健全性に有害なやり方で行動している。だからこそ、トランプ氏に任命された者の多くは、トランプ氏が政権から出て行くまで、彼の見当違いの衝動を防ぎながら、民主的な制度を維持するためにできることをやると心に誓った」とする内容の匿名の政権幹部が書いた論評を掲載した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       トランプは犯人捜しに躍起になっているようだけど アメリカワーストにしたの誰?

 

         

 

昨日、夕食に「ハッシュドビーフ」と「生野菜と鶏むね肉のサラダ」を作りました ハッシュドビーフは久しぶりに作りましたが、我ながら美味しく出来ました

 

     

 

         

 

昨日、新国立劇場「オペラハウス」で東京二期会のプッチーニ「オペラ三部作」(「外套」「修道女アンジェリカ」「ジャンニ・スキッキ」)を聴きました これは東京二期会による デンマーク王立劇場とアン・デア・ウィーン劇場との提携公演です

「外套」は1916年、「修道女アンジェリカ」は1917年、「ジャンニ・スキッキ」は1918年に ジャコモ・プッチーニ(1858-1924)によって作曲され、「三部作」として1918年12月14日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で、ロベルト・モランツォーニの指揮、リチャート・オーディンスキの演出によって初演されました 今年 2018年は「三部作」の初演から満100年を迎えます

自席は1階20列13番、センターブロック左から2つ目です。会場はほぼ満席 こう言っては何ですが個人的には予想以上です

「外套」は1916年作曲、全1幕のオペラです。パリのセーヌ川に停泊する荷物運搬船で生活する苛酷な労働者たちの人生模様が描かれています

初老の船長ミケーレは、若い妻ジョルジェッタが最近自分を避けていると感じていた 実は彼女はミケーレの下で働く若い沖仲仕ルイージと不倫をしていた。暑さが残る秋の夜、ジョルジェッタとルイージはマッチの灯を合図に逢引きを約束する 妻への不信を募らせたミケーレは、密かに不倫相手が誰かを探ろうとする。暗闇の中でミケーレがタバコに火を点けると、それを合図の灯と勘違いしたルイージが現われる ミケーレは彼の首を絞めて殺し、その死体を外套に隠す。続いて現われた妻にミケーレは死体を押し付ける

出演者はダブルキャストで、この日の出演は、ミケーレ=今井俊補、ルイージ=芹澤佳通、ティンカ=新津耕平、タルバ=北川辰彦、ジョルジェッタ=文屋小百合、フルーゴラ=小林紗季子、恋人たち=舟橋千尋、前川健生、流しの唄うたい=西岡慎介。合唱=二期会合唱団、新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部、管弦楽=東京フィル、指揮=ベルトラン・ド・ビリー、演出=ダミアーノ・ミキエレットです なお、合唱以下は3部作共通です

 

     

 

ステージ上には大きなコンテナが置かれ、歌手陣はその前、あるいは上で歌い演じます。舞台を波止場と考えれば不自然さはありません。初めて聴くオペラで、歌手陣も初めて聴く人ばかりなので多少の戸惑いがあります。それでも、歌唱力と演技力の総合力で見るとミケーレを歌った今井俊輔とジョルジェッタを歌った文屋小百合は、存在感がありました

悲劇のフィナーレで舞台が暗転し拍手とブラボーが会場を満たします さて休憩か、と思いきや、次の瞬間 照明が点き、今までジョルジェッタを歌っていた文屋小百合が舞台上で修道女の衣装に着替えさせられ、髪の毛を切られて、そのまま「修道女アンジェリカ」に変身します。つまり、ミキエレットの演出では、「外套」でジョルジェッタが負っていた不倫の罪を「修道女アンジェリカ」が引き継いでいるという解釈をとっているのです

その「修道女アンジェリカ」は1917年作曲の全1幕のオペラです

女子修道院で神に仕える生活を送るアンジェリカには暗い過去があった 同僚の修道女たちは、貴族だったというアンジェリカについて噂話をする。そこに伯母の侯爵夫人が訪ねてくる。伯母は結婚するアンジェリカの妹に、亡くなった両親の財産を与えるので書類に署名するよう冷酷に告げる アンジェリカは伯母に、7年前に未婚のまま産み落とした男児がどうしているか訊ねる。伯母は冷たい態度で 2年前に伝染病で死んだと伝える。絶望したアンジェリカは覚悟を決める。薬草を飲み、神に許しを乞いながら自殺を図る   その時 奇跡が起こり、天使と共に赤子を抱いた聖母が現われ、アンジェリカは赤子に導かれ、息絶える

この日の出演は、アンジェリカ=文屋小百合、侯爵夫人=与田朝子、修道院長=小林紗季子、修道女長=石井藍、修練女長=郷家暁子、ジェノヴィエッファ=舟橋千尋、修練女・オスミーナ=高品綾野、労働修道女1・ドルチーナ=福間章子、托鉢係修道女1=鈴木麻里子、托鉢係り修道女Ⅱ=小出理恵、労働修道女Ⅱ=中川香里です

 

     

 

舞台上のコンテナは修道院の個室に形を変えています このオペラも初めて聴く作品ですが、女性歌手だけによって歌われるのが大きな特徴です このオペラでもアンジェリカを歌った文屋小百合の熱演・熱唱が光りました

ここで初めてカーテンコールがあり、「外套」「修道女アンジェリカ」に出演した歌手たちが再登場します そして30分の休憩です。1000円で購入したプログラム冊子を読んで内容を頭に入れます

「ジャンニ・スキッキ」は1918年作曲の全1幕のオペラです

大金持ちのブオーゾが息を引き取り、親戚たちが集まって大騒ぎをしている どうやらブオーゾは全財産を教会に寄付すると遺言したらしい。そこで、ブオーゾの甥っ子リヌッチョが、遺言状を探し出し、恋人のラウレッタの父であるジャンニ・スキッキを呼びにやる。悪智恵の働くスキッキはブオーゾになりすまし、公証人を呼び、そこで新たな遺言を言い渡す 親戚たちにも少しの財産は分けるが、値打のあるものは全て「親友のスキッキに与える」と遺言する スキッキはまんまと財産を独り占めする 一方、若い恋人たちは財産騒ぎなどはどこ吹く風で、二人きりで幸せに浸って大邸宅のテラスからフィレンツェの街並みを眺めている

この日の出演は、ジャンニ・スキッキ=今井俊輔、ラウレッタ=舟橋千尋、ツィータ=与田朝子、リヌッチョ=前川健生、ゲラルド=新津耕平、ネッラ=鈴木麻里子、ベット=原田圭、シモーネ=北川辰彦、マルコ=小林啓倫、チェスカ=小林紗季子、スピネロッチョ=後藤春馬、公証人アマンティオ=岩田健志、ピネッリーノ=高田智士、グッチョ=岸本大です

このオペラは記憶に間違いがなければ、新国立劇場オペラ研修所公演で聴いたことがあります ここで注目すべきは「外套」でミケーレを歌った今井俊輔がジャンニ・スキッキを歌うということです 彼は性格俳優的な存在感を見せ、狡猾なジャンニ・スキッキを歌い演じていました 舟橋千尋の歌うラウレッタのアリア「私の大好きなお父さま」は、乗り気でないジャンニ・スキッキにドナーティ家への協力をおねだりする娘の感情が良く出ていました

演出で面白かったのは、息を引き取ったブオーゾがベッドに横たわっている傍らで、親類縁者たちが彼の残した「遺言状」を探し回るシーンです ベッドをひっくり返したり、死んだはずのブオーゾを踏んだり蹴ったり叩いたりして遺言状を探すシーンはシュールでした 為されるがままのブオーゾ役の歌手(死体のため まったく歌わないので役者?)は演技賞ものでした

また、ジャンニ・スキッキが外套を着て、舞台上の親類縁者たちや家財道具一式がコンテナに閉じ込められ「外套」の冒頭シーンに戻るところは、3つのオペラに共通点を持たせるミキエレットの演出の白眉でした

今回の公演で一番良かったと思うのはベルトラン・ド・ビリー指揮東京フィルの演奏です ビリーの指揮は必要以上の派手なパフォーマンスは一切なく、ごく自然に音楽の流れを作り、東京フィルは彼の意図をしっかり受け止めてパーフェクトに演奏しました

 

     

 

さて、プッチーニは「決してどの作品も欠かすことなく、この順番で上演してほしい」と願ったとされています なぜプッチーニはそう望んだのでしょうか

無い知恵を絞って考えるに、①作曲順(「外套」=1916年、「修道女アンジェリカ」=1917年、「ジャンニ・スキッキ」=1918年)に上演してほしい、②3作とも全1幕であることから3幕もののオペラのように同時上演してほしい、③「外套」はヒロインが殺され 救いがない、「修道女アンジェリカ」はヒロインは自殺するが魂が聖母に救われる、「ジャンニ・スキッキ」はハッピーエンドになっていることから、後の上演作品ほど明るくなる順番で上演してほしいと願った、といったことではないか、と思うのですがどうでしょうか

 

         

 

先日、東京交響楽団から2019-2020シーズンの案内が届きました 現在 私は「定期演奏会」(サントリーホール)と「東京オペラシティシリーズ」の会員になっていますが、両方とも継続するかどうか思案のしどころです 最初にラインナップを見たときに気が付いたのは東京オペラシティシリーズが前年度より1回分減っている(6回 ⇒ 5回)ということです もちろん定期会員券の料金はその分安くなっていますが

「定期演奏会」のラインナップ(全10公演)は次の通りです

 

     

     

     

     

 

この中では、6月公演(スダーン指揮、菊池洋子=ピアノ。シューマン「ピアノ協奏曲」ほか)、10月公演(ノット指揮、ヴァ―ヴァラ=ピアノ。ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」ほか)、11月公演(ノット指揮。マーラー「第7交響曲」ほか)、12月公演(ウイグルスワース指揮、バートレット=ピアノ。マーラー「第1交響曲」、モーツアルト「ピアノ協奏曲第24番」)の4公演です。3月にはバッハ「マタイ受難曲」がありますが、この曲は毎年のようにバッハ・コレギウム・ジャパンで聴いているので、とくに聴きたいとは思いません。指揮者が鈴木雅明だったら聴きたいところですが

次に「東京オペラシティシリーズ」のラインナップ(全5公演)は次の通りです

 

     

     

 

この中では、5月公演(ノット指揮。ベートーヴェン「第7交響曲」ほか)、7月公演(ヴィオッティ指揮。ブラームス「ピアノ四重奏曲第1番(管弦楽版)」ほか)に興味があります

東京交響楽団は10数年前から2つの会員を継続していますが、このまま2つともS席で継続するか、1つはAランクに落とすか、1つに絞るか等、9月18日の締め切りまでにじっくりと考えて決めたいと思います

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藝大モーニング・コンサートでラフマニノフ「ヴォカリーズ」他(鈴木美郷)、シベリウス「ヴァイオリン協奏曲」(北川千紗)を聴く / 藝大フィルハーモニアのロッシーニ「小荘厳ミサ曲」のチケットを取る

2018年09月07日 07時16分28秒 | 日記

7日(金)。わが家に来てから今日で1436日目を迎え、テニスの4大大会最終戦、全米オープンは5日 ニューヨークで行われ、男子の錦織圭、女子の大坂なおみがシングルス順々決勝を勝って準決勝進出を決めたが、4大大会で男女同時の4強入りは日本テニス史上初の快挙となった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       二人ともラケットを壊さずに準決勝を勝ち抜いて 二人の大阪を歌えるといいね

     

         

 

昨日、夕食に「厚揚げステーキ」と「鶏肉と小松菜の煮びたし」を作りました NHK「きょうの料理」野崎洋光先生のレシピです。もちろん初挑戦ですが、何とか美味しく出来ました

 

     

 

         

 

昨日、東京藝大奏楽堂で「第11回 藝大モーニング・コンサート」を聴きました プログラムは①ラフマニノフ「ヴォカリーズ」、②チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」より第1幕「手紙の場面:わたしは死んでも良いの」、③シベリウス「ヴァイオリン協奏曲ニ短調」です 演奏は①②のソプラノ独唱=藝大大学院2年・鈴木美郷、③のヴァイオリン独奏=藝大4年・北川千紗です

 

     

 

全自由席ですが、入場整理番号が35番と若いので、いつも良い席が取れます 今回は1階9列24番、センターブロック右通路側を押さえました。会場はほぼ満席です。良く入りました

オケは左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります。指揮者が高関健のときは通常この編成です

ソプラノ独唱の鈴木美郷さんが臙脂をベースにした銀のラメ入り花模様の衣装で登場、センターに移動します

1曲目はラフマニノフの「ヴォカリーズ」です この曲はセルゲイ・ラフマニノフ(1873‐1943)が1915年に作曲した ソプラノまたはテノールのための「14の歌曲集」の最後の曲で、ヴォカリーズとは母音のみで歌う歌唱法です そのような曲の性格からか、チェロをはじめ様々な楽器のために編曲されています

高関氏の合図で演奏に入ります。鈴木さんは美しくも芯のある歌声で 終始 表現豊かに歌い上げました 彼女の歌を聴いて「人間の声は最高の楽器である」という言葉を思い浮かべました 満場の拍手がステージを包んだことは言うまでもありません

ここで、管楽器が増員されます。2曲目はチャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」の第1幕で歌われるタチヤーナのアリア「手紙の場面:わたしは死んでも良いの」です オペラ「エフゲニー・オネーギン」は、ピョートル・チャイコフスキー(1840‐1893)がプーシキンの韻文小説を歌劇化したもので1878年に完成しました ストーリーは「ロシアの田舎の地主の娘タチヤーナが、都会の貴族オネーギンと出会い、すっかり夢中になって愛の告白を手紙に書くが、オネーギンは歯牙にもかけない その後、美しく高貴な伯爵夫人となったタチヤーナと再会したオネーギンは愛を告白するが、彼女は拒否する」というものです

第1幕「手紙の場面」はこのオペラのハイライトとでも言うべき場面です タチヤーナは「あなたのお望みのまま侮蔑で私を罰しても構いません。でも、私の不幸な運命に少しでも憐れみを感じてくださるのなら、私をお見捨てにならないでください。あなたが入っておいでになった途端、私はすぐに分かりました。気が遠くなり、体が燃え上がりました。あの方だわって。私はあなたをお待ちしています。せめて希望のひと言で私を蘇らせてください。それとも、この辛い夢を絶ち切ってください」と手紙に書きながら歌い上げます このプーシキンの詩はほぼ原文のまま使われているそうです

高関氏のタクトで演奏に入ります。鈴木さんは、内気で夢みる若い娘の心情を、情熱的に歌い上げました 約15分の間、オケだけの演奏のときも タチヤーナに成り切っている姿が印象的でした

鈴木さんは高校生の頃から数々のコンクールで入賞歴があるせいか、終始落ち着いたステージマナーで好感が持てました  また、聴衆を惹きつける魅力をもった人だな、と思いました   卒業後は二期会か、藤原歌劇団か、新国立オペラ研修所か、はたまた海外へ留学か・・・将来が楽しみな逸材だと思います

 

     

 

プログラム後半はシベリウスの「ヴァイオリン協奏曲ニ短調」です   この曲は、ジャン・シベリウス(1865‐1957)が1903年に作曲、1904年にシベリウス自身の指揮で初演しましたが、評価が芳しくなかったため、スリム化した作品として1905年に改訂版を完成させました 第1楽章「アレグロ・モデラート」、第2楽章「アダージョ・ディ・モルト」、第3楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」の3楽章から成ります

内外のコンクールで入賞歴のある北川さんが濃紺の衣装で颯爽と登場しセンターでスタンバイします

高関氏のタクトで第1楽章が開始されます。シベリウスは冒頭部分について「極寒の澄み切った北の空を、悠然と滑空する鷲のように」と述べたそうですが、北川さんの独奏ヴァイオリンの透明感のある鋭い演奏が光ります この楽章で一番の聴きどころは中間部のカデンツァですが、北川さんは、プロのヴァイオリニストを目指していたシベリウスの超絶技巧曲を何の苦も無く弾き切りました 第2楽章では一転、叙情的な旋律をよく歌わせていました 第3楽章では、確かな技巧に裏づけられた躍動感あふれる演奏でシベリウス讃歌を歌い上げました

会場いっぱいの拍手が送られたことは言うまでもありません まだまだこれからです。これからの活躍を期待したいと思います

 

     

 

         

 

11月17日(土)午3時から東京藝大奏楽堂で開かれる藝大定期第389回演奏会のチケットを買いました 曲目はロッシーニ「小荘厳ミサ曲」です 出演は ソプラノ=吉澤淳、アルト=朝倉麻里亜、テノール=上ノ坊航也、バス=川田直輝、管弦楽=藝大フィルハーモニア、合唱=東京藝大音楽学部声楽科学生、指揮=園田隆一郎です

歌手陣の4人は藝大大学院生ですが、今から聴くのが楽しみです

 

     

     

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日経ミューズサロン「ウィーン・ピアノ四重奏団」、「ヨハネス・フライシュマン(Vn)&村田千佳(P)」のチケットを取る / 中山七里「中山 七転八倒」を読む~驚愕の ハチャメチャ作家生活

2018年09月06日 07時21分12秒 | 日記

6日(木)。昨日、新国立劇場からメールが入り、前もって申し込んでおいた9月26日(水)午後3時から新国立劇場で開かれる「第3回避難体験オペラコンサート」が、抽選が必要な人数に達しなかったので、申し込み者全員が参加できることとなった、という内容でした 昨年は「オペラパレス」でしたが、今回は「中劇場」です。楽しみです

ところで、台風21号が西日本を通過した際、大阪湾の人工島にある関西空港ではタンカーが連絡橋に衝突したため通行不能になりました その様子を空から写したのが昨日の夕刊第1面の写真です

まず朝日の写真がこれです

 

     

 

そして日経の写真がこれです

 

     

 

両紙の写真を比べてみると、朝日は連絡橋のどこが破損しているのか不明確です 一方、日経の方は路面がズレているのが一目瞭然で、よほど大きな力が加わったことが分かります 私は30年以上朝日と日経を宅配で購読していますが、以前から思っていたのが両紙の写真の撮り方の違いです 朝日は「きれいな写真を撮ろう」という意識が働いている、もっと言えば「芸術を狙っている」としか思えない、したがって写真の説明文を見ないと何を言いたいのか分からないことが多いように思います その点、日経の方は ストレートに事実をそのまま伝えようとする意識が働いており、写真だけ見れば即 理解できる場合が多いように思います

経験から言うと、記事・写真に限らず、1紙だけではモノの見方が偏ってしまう、あるいは見逃してしまうことが、2紙を読むことによってバランスを取った見方・考え方ができるというメリットがあります また、「継続は力なり」の格言通り、新聞の購読に限らず 何でも続けることが大切だと思います

ということで、わが家に来てから今日で1435日目を迎え、ニクソン米大統領を辞任に追い込む「ウォーターゲート事件」を暴いた米紙ワシントン・ポストのボブ・ウッドワード記者が近く出版するトランプ政権の内幕本「恐怖  ホワイトハウスのトランプ」について 米メディアが抜粋を報じたが、その中で 在韓米軍の駐留を疑問視するトランプ氏を、マティス国防長官が「(理解力は)小学5、6年生並み」と愚痴る場面など、トランプ氏に批判的なエピソードが盛り込まれている というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       いくらマティスさんとはいえ 失礼だ! 小学5, 6年生はトランプよりクレバーだぜ

     

         

 

昨日、夕食に「麻婆豆腐」「ウィンナ・チャーハン」「冷奴」「キュウリの食べるラー油乗せ」を作りました 「麻婆豆腐」と「冷奴」は材料がダブってね?と追求しないでください。こっちだって真面目にやってんだから

 

     

 

         

 

日経ミューズサロンのチケットを2枚取りました 1枚は12月3日(月)に開かれるウィーン・ピアノ四重奏団による「クリスマス・コンサート」です このユニットはウィーン在住のピアニスト、フォゥグ・浦田陽子とウィーン・フィルのメンバーから成ります。プログラムは、モーツアルト「ピアノ四重奏曲第2番K.493」、ブラームス「ピアノ四重奏曲第3番」ほかです

 

     

 

2枚目は来年1月8日(火)に開かれるヨハネス・フライシュマン(Vn)&村田千佳(P)による「ニューイヤーコンサート」です シューベルトの「ヴァイオリンとピアノのための華麗なるロンド」やクライスラーの「ウィーン奇想曲」などが演奏されます バレエもあるということなので華やかなステージになるでしょう

 

     

 

日経ミューズサロンは、当たりはずれがありますが、私の嗅覚ではこの2公演とも当たりです チケット代が一般3,800円は良心的だと思います

 

         

 

中山七里「中山七転八倒」(幻冬舎文庫)を読み終わりました 結論を先に書きます。爆笑に次ぐ爆笑でした  「どんでん返しの帝王」と呼ばれる中山七里という小説家が、どれほどハチャメチャな生活を送り、毒舌を撒き散らしてうっぷんを晴らしているか、中山七里の本音と実態を初めて知りました

 

     

 

中山七里は1961年12月 岐阜県生まれですが、幼少期から活字中毒だったようで、1970年代半ばに映画「犬神家の一族」を観たのをきっかけに横溝正史と江戸川乱歩に傾倒し、大学時代には江戸川乱歩賞に応募して予選を通過するなど、その頃から頭角を現していました その後就職して働き出したことから創作活動から遠ざかりましたが、2006年(45歳の時)に憧れの作家・島田荘司のサイン会に参加して触発され、その足で電気店に駆け込んでノートパソコンを買い、創作活動を再開したといいます その時に書いた「魔女は甦る」が「このミステリーがすごい!」大賞の最終選考に残り、2009年には「さよならドビュッシー」で同賞を受賞しています

この本は、2016年1月7日から翌17年5月31日までに書かれた著者の日記を収めたもので、そのうち16年9月5日から最終回までの分は幻冬舎のWEBサイト「ピクシブ文芸」に24回にわたり掲載されました

2009年に「さよならドビュッシー」で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した際、彼は次の「中山七里 3か年計画」を策定します

3年間で最低10冊を上梓する。

②最低でも3つのジャンルを書けるようにし、いずれも評価できる作品を残す。

③老舗出版社5社の文芸誌で連載を獲る。

④ただし会社と文筆業を必ず両立させる。

彼は以上の4つを達成できれば何とか生き残れると考えていました 実際にはサラリーマンとの二足の草鞋は2年で終了しましたが、残り3つの計画は「デビューしてからはバケモノのような作家連中と闘わなければならん」という強迫観念のもと、連載を掛け持ちして締め切りに追われる日々を送ります 3日徹夜して寝落ちし、丸1日机に突っ伏したまま眠り込み、ハッと起き上がって 締め切りまで時間がないと気が付き、栄養ドリンク3種類混合を一気飲みしてまた徹夜を続ける よく死なないものだと感心しますが、執筆の合間に複数の出版社の編集者と会って原稿の校正をしたり、さらに驚くのは1日に映画1本(自宅にホームシアターがある)と本を1冊読むという、とても1日が24時間では足りない「1日24時間以上闘えますか」的な生活を送っているのです

中山七里というペンネームについては、「国道41号線を車で走っていた時『中山七里』という地名の道路標識を見たのがきっかけで、ああこれは人名にも読めるなと思ったのと、画数が少ないのでサインする際に楽だろうと考えたからだ   意気込みどころか思い入れすらなく、いい加減さこの上なし」と書いてます。家族は愛妻と成人した娘さんと音大大学院に通う(当時)息子さんがいて、本人は幼少の頃から片目がほとんど見えないそうですが、日常生活に支障はないと言っています  また、岐阜の自宅と東京の事務所を行ったり来たりしながら執筆活動の毎日を送っています

2016年11月25日の日記には息子さんが登場します

「大学の論文問題でさ。まず音楽関係者3人の著書から1つを選ぶんだけど、小澤征爾さんと小林研一郎さんの著書に並んでお父さんの『さよならドビュッシー』が挙がっていた」。えっとですね、皆さんは何かとんでもない勘違いをしていらっしゃいます。あの、僕は小学校の頃から音楽の成績はずっと2で・・・・

中山氏はこの日記を書いている期間に、「作家刑事毒島」という小説を連載しているのですが、これは小説家を含めた出版業界内部の話を毒舌に満ちたテイストで書いたものらしく、文学賞を受賞したものの第2作が書けない新人作家が「書けないのは、売れないのは、出版社のせいだ」とほざいていることなどを取り上げ、毒舌により滅多切りしている内容のようです   そうしたことから、中山氏は特に新人には恐れられているようです 

興味深いのはどうやって小説のプロットを作り上げるのかという中山流のやり方です 中山氏は次のように書いています

「僕の場合は最初にテーマがくる。このテーマというのは多くが出版社からのリクエストだが、中にはリクエストに沿った物語を考えてこちらから捻り出すときもある」「テーマの次はストーリーだ。そしてトリックを考え、最後に全体のストーリーとキャラクターを設定する。骨子に沿って全体を4章から6章に分け、それぞれを1ユニット25枚として頭の中で原稿を書いていく 僕が初稿段階で見直しも推敲もしないのは、既にこの段階で推敲までやってしまっているからだ 初稿段階やゲラの段階で修正するより、頭の中でいじくるだけなので、こちらの方が簡単で、しかも迅速にできる 文章を思い浮かべるだけだから、実際に書くよりも百倍は早い。もし誰かが、思い浮かべた文字をパソコンで表示できるシステムを開発してくれたら高値で買うぞ

この中で重要なポイントは「頭の中で原稿を書いていく。この段階で推敲までやってしまっている」ということです これを読んで、クラシック音楽好きな人なら すぐに天才作曲家の名前を思い浮かべることでしょう。言うまでもなくモーツアルトです 彼は旅先から故郷ザルツブルクにいる父レオポルドに向けて、「作品は頭の中に出来上がっています。あとはそれを楽譜に書き移すだけです」という手紙を書いています

中山七里という小説家は、ひょっとしてモーツアルト的な創作の才能を持った極めて稀な人かも知れません

また、彼の映画に対する愛情は半端なく、自宅の防音付きの部屋に最新のホームシアターをしつらえ、執筆の合い間にDVDで様々な映画を鑑賞しています とくに「この世界の片隅に」は映画館で何度も観て、DVDでも観て、会う人ごとに薦めているほどの のめり込みようです

この本は内容が日記なので 様々な日常生活が書かれています 秋葉原にプリンターのインクを買いに行った時の話が出てきます

「街には人が溢れ返っている。もっとも聞こえてくるのは、そのほとんどが中国語なのだけれど 何故、中国の人の声が大きいかというと中国語には四声というものがあって、同じ言葉でも発音がわずかでも違うと全く別の意味になる。したがって、相手に正確に意思を伝えようとしてどうしても大きくなってしまうらしい(この声の大きさと態度に対抗できるのは、大坂黒門市場に集うオバハンたちくらいではないか)」

なるほどね、と思います この本にはこうした豆知識も散りばめられています 勉強になるなあ、中山七里。ということで、600ページを超える大書ですが、根性があったら読んでください。面白いこと限りなし 超お薦め本です

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ミケランジェリから指名を受けたピアノ調律師・村上輝久氏のエッセイから / 中山七里著「闘う君の唄を」を読む~新任幼稚園教諭が主人公のミステリー

2018年09月05日 07時15分16秒 | 日記

5日(水)。昨日は東銀座の東劇にMETライブビューイング「ドン・カルロ」を観に行く予定でしたが、大型台風21号が接近中ということで、「行きはヨイヨイ 帰りはコワイ」になっては困るので取り止めました 家で大人しく本を読んで過ごしました

ということで、わが家に来てから今日で1434日目を迎え、世界のテレビドラマの中から優れた作品を表彰する「ソウルドラマアワーズ」の授賞式が3日、ソウルのKBSホールで開かれ、漫画が原作の日本のテレビドラマ「孤独のグルメ」に、韓国で最も人気がある海外ドラマとして招待作品部門の賞が贈られ、授賞式に出席した松重豊さんが「おじさんがご飯を食べているだけの番組を誰が見ているのかと思ったが、海外で賞がもらえて光栄だ」と冗談交じりに話すと、会場の観客から笑いと歓声が起きた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       ソウルに響くソウルフードを紹介してくれたって・・・それ、早く言ってよ~ん

 

         

 

昨日、夕食に「キャベツとソーセージの中華炒め」「ニラ玉」「生野菜とアボカドのサラダ」を作りました 「キャベツ~」は省エネ簡単料理ですが美味しいです

 

     

 

         

 

昨日の日経朝刊 文化面にピアノ調律師・村上輝久氏による「巨匠のピアノ  旋律の旅   ミケランジェリから指名  世界26カ国の公演に同行」というエッセイが載っていました 超訳すると

「1948年に日本楽器製造(現ヤマハ)に入社して以降、70年近く調律師の仕事に携わってきた 調律はピアノの音程をそろえる仕事という印象が強いが、それだけではない。音程と音色、鍵盤のタッチを演奏者の希望に沿った形で調整する。この3つがそろってこそ、楽器から素晴らしい音を引き出せる 65年末にヤマハの4代目社長・川上源一氏から欧州で音楽の勉強をしないかと声をかけられ、66年にイタリア・ミラノに赴任した。受け入れ先の調律師との縁で、当時最高のピアニストだったミケランジェリと出会った 気に入られ、ヤマハの社員でありながら彼のコンサートの専属調律師となった 欧州で使われているピアノはスタインウェイやべーゼンドルファーなどで、日本メーカーが入る余地はなかった。当時のヤマハは世界的には無名で欧州製に追いつこうと必死だったので、他社のピアノの調律を容認してもらえたのだ 66~70年に欧州に滞在し、調律師として26カ国を回った。各地のホールには専属の調律師がいるため、調律を拒まれることもあったが、ミケランジェリは『村上さんが調律しないなら私も演奏しない』と言ってくれた ミケランジェリはピアノを空輸して海外公演に臨むなど厳格な姿勢で知られた。時間短縮のため、公演で使う音域だけ調律することがあったが、そんな時は「少し手を抜いたね」と見抜かれた 20世紀最大のピアニストと呼ばれたリヒテルは、ミケランジェリの調律を手掛けた関係で声がかかり、リヒテルの公演に毎回同行した。彼は後にヤマハをメインに使うようになり、各地の国際コンクールにもヤマハが採用されるようになった ポリーニは、当時まだ若手だったが、音楽に向かう姿勢は本物だった。彼は私に音色の要望をする時、奥さんにケーキを持ってこさせ「このケーキのような音色に」と言った。音を味覚で表現するあたりはまさに天才だった 帰国後は若手育成のため、80年に調律師養成のための『ヤマハ ピアノ テクニカル アカデミー』を開設、現在39期生が学んでいる

ピアノ調律師を主人公とした小説「羊と鋼の森」(宮下奈都著)が2016年の第13回本屋大賞を受賞し、今年6月に映画化されるなど、ピアノ調律師に対する関心が高まっている折、タイムリーなエッセイだと思います

 

     

 

         

 

中山七里著「闘う君の唄を」(朝日文庫)を読み終わりました 中山氏の作品は文庫化されるたびに、当ブログでご紹介してきました。念のため略歴をご紹介すると、1961年岐阜県生まれ。2010年「さよならドビュッシー」で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し作家デビュー その後、広範囲にわたるテーマによる数々のミステリーを発表し、「どんでん返しの帝王」と呼ばれています

 

     

 

埼玉県秩父郡の神室幼稚園に赴任した新任教諭の喜多嶋凛は、3歳児クラスの担任をすることになった 理想に燃える彼女の前に立ちはだかったのはモンスターペアレンツ集団=保護者会だった 手配が終わっている遠足の行き先を急きょ変更させる、お遊戯会の演目を護者会が決める、といった理不尽な要求が次々と出されるが 園長はあっさりと保護者の言いなりになっていた しかし、それには保護者会に逆らえない理由があった 凛はこんな保護者会を相手に理想を諦めようとせず、体当たりで任務を遂行し、少しずつ園児と保護者の信頼を得ていく ところが、2月に開かれた新入園児の保護者向けの説明会に出席した、凛と小学校時代の同級生だった横山美穂が発した「彼女は喜多嶋凛なんて名前じゃありません。彼女の名前は上条凛です」というひと言で事態が一変する 凛の父親は16年前に神室幼稚園でバス運転手をしていた。その時何があったのか? そんな折、16年前の事件を再検証する刑事が現われ 捜査のうえ16年前の真相が解明される

物語の前半は、新入社員が会社の上司や取引先の理不尽な要求にもめげず、困難を乗り越えて周囲の信頼を勝ち取っていく一種の「サラリーマン小説」かと思って読んでいましたが、それは序の口に過ぎず、上記の説明会以降の後半こそが、予測不能のミステリーになっているのです

幼稚園の新人教諭を主人公にするという意外なアプローチは、これまでの中山七里の作品とは毛色が異なるので、いったいどんなストーリー展開になるのかと思って読みましたが、見事に「どんでん返し」を喰らいました 一気読み必至です。お薦めします

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「孤狼の血」「素敵なダイナマイト スキャンダル」を観る~「カルフォルニア ドリーミング」も流れる:早稲田松竹 / 村上春樹のディスクジョッキー 「村上RADIO」第2弾の放送決まる!

2018年09月04日 07時14分48秒 | 日記

4日(火)。昨日の新聞各紙によると、8月5日(日)午後7時から TOKYO FM で放送された「村上RADIO」が大きな反響を呼んだことから、第2弾が10月21日(日)に放送されることになったとのこと この番組は小説家・村上春樹がディスクジョッキーになって、おしゃべりの合間に音楽をかける番組です 前回のテーマは「僕が走っているときに聴いている音楽」でしたが、第2弾は「秋の夜長は村上ソングズで」というもの。「秋の夜長を、村上の選んだ曲で楽しく過ごしてください・・・というのがテーマです。うちからもってきたレコードやCDをかけます」とは村上氏の言葉。質問募集も行うとのことです

前回はロックが中心だったので、今回は是非クラシックも取り上げてほしいと思います 「秋の夜長・・・」ということなので クラシックも期待できそうな気がします

ということで、わが家に来てから今日で1433日目を迎え、百貨店各社が3日、2019年正月向けのおせちを発表し、平成最後のおせち商戦がスタートした というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

               平成最後のオセチと言って  あまりにもオセッカチじゃない? 平静でいられないよ

 

         

 

昨日、夕食に「豚バラ麻婆茄子」と「ミックスビーンズのトマトスープ」「冷奴」を作りました 「豚バラ~」は丼にしても美味しいのですが、私はビールを飲むので夜はコメのご飯は食べません

 

     

 

         

 

昨日、高田馬場の早稲田松竹で「孤狼の血」と「素敵なダイナマイト スキャンダル」の2本立てを観ました

「孤狼の血」は白石和彌監督が柚月裕子の同名小説を映画化した作品(2018年、126分)です この作品は「最初に本で読んで、後で映画で観た」作品です 原作者の柚月裕子は1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞してデビューし、13年に「検事の本懐」で第15か回大藪春彦賞を、16年に「孤狼の血」で第69回日本推理作家協会賞を受賞しています

舞台は暴力団対策法が成立する前の昭和63年の広島。広島仁正会(五十子会とその下部組織・加古村組)と尾谷組とは敵対関係にあり一触即発の状況にあった 所轄の呉原東署の捜査二課に配属された新人の日岡秀一(松坂桃季)は、やくざとの癒着を噂される刑事・大上章吾(役所広司)とコンビを組むことになった 違法行為とも思われる強引な捜査手法を繰り返す一匹狼のような大上に戸惑いを感じながらも日岡は何とか食いついていく やがて金融会社社員失踪事件を皮切りに、暴力団同士の抗争が勃発する 双方の衝突を食い止めるため大上は大胆な秘策を打ち出すが、ことは大上の思い通りにはいかず、彼は事件に巻き込まれ行方不明になり、その後、死体で発見される 身の危険を感じていた大上は、前もって日岡にあてたある物を大上の懇意の女性(真木よう子)に預けていた。それは警察内部の裏事情を綴ったノートだった ここから大上の一匹狼の血を受け継いだ日岡の戦いが始まる

 

     

 

原作者の柚月裕子によれば、この「弧狼の血」は「仁義なき戦い」がなければ生まれなかった作品です

文庫本で読んだのが昨年だったので、ストーリーの詳細までは覚えていないのですが、映画ではいくつかストーリーが新たに加えられています 記憶が正しければ、その一つは 大上は日岡に警察の不都合な真実を書いた極秘ノートを託したわけですが、日岡自身も捜査上気が付いたことをノートに書いており、日岡が留守中にその日記を大上が読んで「添削」していたというところです このシーンの追加によって、大上がいかに日岡のことを考え、一人前の刑事に育てようと考えていたのかが理解できます その意味では、原作が素晴らしいのはもちろんのことですが、映画化によって、物語に より深みが出たと言えると思います

なお、この作品のタイトル「孤狼の血」は、言うまでもなく一匹狼の刑事・大上(おおかみ)のことを指しています さらに言えば、その血筋は後輩の日岡に受け継がれたということを意味しています

 

     

 

         

「素敵なダイナマイト スキャンダル」は冨永昌敬監督・脚本による2018年制作映画(138分)です

母の富子(尾野真千子)が燐家の息子とダイナマイトで心中した末井昭(柄本佑)は18歳で岡山の田舎町を飛び出し、昼は工場勤務、夜はデザイン学校に通うという生活から、看板会社に就職、そしてエロ雑誌の世界へと足を踏み入れる 表紙デザイン、レイアウト、取材、撮影、漫画と、あらゆる業務をこなしながら、編集長として「立て!男のエキサイト・マガジン」をキャッチフレーズに、雑誌「NEW  SELF」を創刊する カメラマンの荒木経惟(アラーキー)をはじめ、南伸坊、赤瀬川源平、嵐山光三郎ら精鋭たちがメンバーとして集い 雑誌は軌道に乗るが、わいせつ文書販売容疑による発禁と 新しい雑誌の創刊を繰り返しながら生き延びていく

 

     

 

この映画は、実母がダイナマイトで心中を図ったという強烈な体験を持つ雑誌編集者・末井昭の自伝的エッセイをもとに映画化した作品です ダイナマイトを身体に巻き付けて隣家の息子と心中する母親が母親なら、エロ雑誌をこれでもかこれでもかと世に送り出す息子も息子です この親あってのこの息子です。とにかく末井昭の突進力が凄いです。自分の才能に気づき、努力して適職についた者が如何に強いかということを証明しています ハチャメチャな人生と言ってもいいような、一般人には決して真似のできない生き方です

喫茶店で友人と会話するシーンと、出版社の警察によるガサ入れシーンでは、ママス&パパスの「カルフォルニア・ドリーミング」が流れていましたが、とても懐かしく聴きました

 

     

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野村芳太郎監督「砂の器」、「八つ墓村」を観る~全編に流れる ピアノとオーケストラのための楽曲『宿命』:新文芸坐「追悼・橋本忍特集」第2日目

2018年09月03日 07時32分39秒 | 日記

3日(月)。わが家に来てから今日で1432日目を迎え、米ホワイトハウスは8月31日、11月にシンガポールで行われる東南アジア諸国連合(ASEAN)や、パプアニューギニアであるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議をトランプ大統領が欠席し ペンス副大統領を派遣すると発表したことから、米メディアは「アジア軽視」とのメッセージになると指摘した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     アメリカ・ファーストのトランプにとって「アジア軽視」なんて当たり前のこと

 

         

 

昨日、新文芸坐で「日本映画の黄金期を書いた男 追悼・橋本忍」特集の第2日目、「砂の器」と「八つ墓村」の2本立てを観ました

「砂の器」は野村芳太郎監督、松本清張原作、橋本忍・山田洋二脚本による1974年松竹映画(カラー・143分)です。

東京・蒲田にある国鉄の操車場で殺人事件が発生する 被害者の身元が分からず捜査は難航するが、被害者が殺害される直前に蒲田駅前のバーである男と会っていたことが分かり、2人の会話から「カメダ」という謎の単語が浮かび上がる 人名か地名か不明のこの単語をキーワードに刑事の今西(丹波哲郎)と吉村(森田健作)は全国を奔走する。まず秋田県・亀田に当たりを付けるが空振りに終わる その後、被害者の息子が警察に現れるが、被害者・三木謙一の住所は岡山県であり、付近には「カメダ」という土地は存在しないことが分かる ところが調査によると、島根県の出雲地方に東北弁との類似がみられ、その地方に「亀嵩(カメダケ)」という地名を発見し、三木謙一(緒形拳)はその地で20年間巡査をしていたことが判明する その間、三木は哀れな乞食の父子を世話し、ハンセン氏病に罹患した父親・本浦千代吉を病院に入れた後、残された子・秀夫を我が子のように養育していたが、秀夫は家出をして行方不明になっていた 彼はその後、戦後の混乱期に乗じて戸籍を作り直し、和賀英良(加藤剛)と名乗り 今や天才ピアニスト・作曲家になっていた  将来が約束されている今の彼にとって、ハンセン氏病の親を持つ自分の過去を知る三木謙一は忌まわしい人物だった   和賀が自らピアノを弾き、自作のピアノとオーケストラのための楽曲『宿命』が初演される会場の舞台袖に、逮捕状を手にした今西、吉村両刑事の姿があった

 

     

 

「砂の器」は松本清張が1960年5月17日から1961年4月20日までの間、読売新聞夕刊に337回連載した長編小説です この映画の音楽を統括しているのは芥川也寸志ですが、主人公の和賀英良が作曲し初演するピアノとオーケストラのための楽曲『宿命』は、芥川の協力により 菅野光亮が作曲した作品で、映画では東京交響楽団が演奏しています 和賀が過去の辛い時代を回想しながら演奏するシーンでドラマティックに鳴り響きます とても印象深い曲に仕上がっています 「宿命って何を意味するの?」と訊く婚約者に対し、和賀は「宿命とは生まれてきたこと。今生きていることだ」と言います それは自分がハンセン氏病の父親を持って生まれ、育てられたことから出た言葉です

映画の最後に次のようなテロップが流れます

「ハンセン氏病は医学の進歩により特効薬もあり、現在では完全に回復し、社会復帰が続いている。それを拒むものは、まだ強く残っている非科学的な偏見と差別のみであり、本浦千代吉のような患者はもうどこにもいない」

ハンセン氏病はともかくとして、今アメリカではトランプ政権の誕生により移民に対する差別と偏見が公然と行われるようになっています それでは、日本では差別と偏見は一切ないと言えるのだろうか

 

     

 

         

「八つ墓村」は野村芳太郎監督、横溝正史原作、橋本治脚本による1977年松竹映画(カラー・151分)です

寺田辰弥(萩原健一)は空港機誘導員をしていたが、母方の祖父であるという井川丑松という老人が訪ねてくる 法律事務所で会った祖父は、その場で突然もがき苦しんで死んでしまう 辰弥は自分の出生の謎を解くため、父方の親戚筋の未亡人である森美也子(小川真由美)の案内で生まれ故郷の岡山の八つ墓村に向かう。彼はそこで自分が故郷の豪家の多治見家の後継者であると聞かされる 美也子から多治見家と八つ墓村の由来を聞くが、それは戦国時代まで遡る話だった。1566年、毛利に敗れた8人の落ち武者が村にやって来た時、毛利の褒賞金に目がくらんだ村人たちは8人を惨殺したが、落ち武者たちは「この恨みは末代まで祟ってやる」と呪詛を吐きながら死んでいった その時の首謀者が多大な褒賞を得た村総代の多治見庄左衛門だった しかし、彼はある時 突然発狂し村人7人を惨殺した後、自分の首を切り落として死んだ。村人は落ち武者の祟りを恐れ、8人の屍を丁重に葬ったことから 村は八つ墓村と呼ばれるようになった、というものだった

さらに、辰弥の父親だという多治見要臧(山崎努)も、28年前に恐ろしい事件を起こしていた   要臧は多治見家の当主で妻もありながら、若い鶴子(中野良子)を強引に妾にし、多治見家の離れに軟禁していた。しかし、鶴子が生まれたばかりの辰弥を連れて出奔してしまい、その数日後に要臧は発狂して妻を惨殺、村人32人を日本刀と猟銃で虐殺し、失踪した 辰弥の帰郷と時期を合わせるようにして、またしても毒殺による連続殺人事件が起こり始め、私立探偵の金田一耕助(渥美清)が村に現れる

 

     

 

一度は観たことのある映画ですが、あまり内容を覚えていなくて、「ああ、こういうストーリーだったのか」と思い出しました 鍾乳洞における場面が観る人の恐怖心を呼び起こしますが、「祟りじゃー、八つ墓村の祟りじゃー」というフレーズが日本列島を駆け巡ったことを思い出します

以外だったのは、「金田一耕助シリーズ」としては 肝心の金田一耕助探偵(渥美清)の推理・謎解きのシーンが極端に少ないことです 「おいちゃん、それを言っちゃあ おしめえよ」という声が聞こえてきそうですが

 

     

     

 

先週はコンサートが無かった代わりに、映画を12本観たので いささか疲れました ということで、今日も明日も映画です

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オペラ夏の祭典2019-2010『トゥーランドット』プレトークを聴講する~砂川涼子、村上敏明出演 / 橋本忍監督「私は貝になりたい」「幻の湖」を観る~全編に流れるリスト:交響詩「前奏曲」

2018年09月02日 08時08分54秒 | 日記

2日(日)わが家に来てから今日で1431日目を迎え、8月29日に発売された安室奈美恵さんのDVDとブルーレイの売上枚数が30日付で109万枚となり音楽映像作品で初めて100万枚を超えた とオリコンが31日発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       CAN  YOU  CELEBRATE ?  アムラーとしてはDVD買ったって? 負けました!

 

         

 

現在 池袋の新文芸坐では「日本映画の黄金期を書いた男 追悼・橋本忍」を特集しています   昨日はその第1日目で、「私は貝になりたい」と「幻の湖」の2本立てを観ました

 

     

 

「私は貝になりたい」は橋本忍監督・脚本による1959年東宝映画(白黒・113分)です   元陸軍中尉・加藤哲太郎の手記「狂える戦犯死刑囚」の遺言部分をもとに橋本忍の脚本でテレビドラマ化され、その後映画化されたものです

第二次世界大戦中の昭和19年、高知県幡多郡に住む清水豊松(フランキー堺)は気の弱い平凡な理髪師だったが、戦争が激化する中、赤紙(召集令状)が届き、応召することになる 内地の部隊に所属した豊松は、厳しい訓練の日々を送る。ある日、撃墜されたアメリカ運B-29の搭乗員が裏山に降下する。司令官の「搭乗員を確保、適当な処分をせよ」という命令が豊松の中隊に下り、山中探索のうえ、虫の音の搭乗員を発見する。そこで豊松が隊長から銃剣で刺殺するように命じられるが、気の弱さから怪我をさせただけに終わる 終戦後、豊松は除隊のうえ無事に帰郷し妻房江(新玉美千代)と営んでいた理髪店で再び腕を振るうことになる。しかし、ある日、特殊警察がやってきて、捕虜を殺害したBC級戦犯として彼を逮捕し、豊松は理不尽な裁判で死刑を宣告される 彼は処刑の日を待ちながら「もう人間には二度と生まれてきたくない。生まれ変われるなら、深い海の底の貝になりたい」と遺書を残す

 

     

 

この映画はどうしても観たかった作品です 小学生時代に父親とテレビで観た(再放送だったかもしれない)記憶があるからです。大正生まれの父親は戦争で中国大陸に赴いたことがあり、戦闘こそ経験しなかったものの厳しい軍隊生活を強いられていたと語っていたことを思い出します

豊松は裁判で「上官の命令でやった」と訴えますが、「命令書に誰が署名したのか」と訊かれ、「命令書など存在しない。口で命令されただけだ」と答えます しかし、アメリカ当局にはそれが通じません 「命令されても、自分の考えで命令を拒否することはできるはずだ」と責められると、豊松は「上官の命令は天皇陛下の命令だ。命令を拒否することはできない。拒否すれば銃殺される」と訴えますが、結局、豊松は実行犯として死刑を宣告されるのです

この作品をテレビで観た父は「軍隊というところは、服や靴は身体に合わせて支給されるのではなくて、身体を服や靴に合わせなければならなかった 上官の命令は絶対で、口答えは許されなかった」と言っていました。豊松の言葉が実感として身に染みていたのだと思います

戦争というものがどれほど不条理なものかを理解するのに、どんなに派手な戦闘シーンのある映画にも増して、この映画ほど相応しい作品は無いでしょう ごく普通の市民の目線で捉えた 究極の反戦映画と言えるかも知れません

 

     

 

         

「幻の湖」は橋本忍監督・脚本・原作による1982年公開の東宝映画(164分)です

雄琴のソープランド街で「お市」の源氏名で働くソープ嬢・道子(南條玲子)は、愛犬シロと琵琶湖の西岸でマラソンをするのが日課だった ある日、そのシロが浜で殺されているのが見つかる。凶器の包丁と様々な証言から、犯人が東京の作曲家・日夏という男だと探り当てる 日夏の住所とジョギングが趣味であることを知った道子は、得意のマラソンで日夏を倒れるまで走らせてやると決意する。しかし、都会の空気に慣れない道子はペースを乱し、日夏に逃げられてしまう その後、紆余曲折の末、結婚のためソープ嬢を辞めようとしていた矢先、偶然にも日夏が道子の店に現れる。道子はシロを殺した凶器の包丁を掴んで日夏を追い回し、ついに琵琶湖大橋のたもとで彼を追い詰めることに成功する

 

     

 

この作品は「砂の器」(1974年)、「八甲田山」(1977年)に続く、橋本プロダクション制作作品です 東宝創立50周年記念作品として制作されたこの映画の主人公・道子役は、俳優経験を問わない一般オーディションにより1627人の応募者の中から選ばれた南條玲子です この映画では彼女が愛犬シロと走るシーンが多く出てきますが、ロケでは相当走らされたのではないかと想像します

この映画の音楽を手掛けているのは作曲家の芥川也寸志ですが、リストの交響詩「前奏曲」を全般にわたり使用しています この曲はフランツ・リスト(1811-86)が1848年に作曲し、1854年にワイマルでリスト自身の指揮により初演された楽曲です 合唱曲「四大元素」の主題を用い、その前奏曲として作られ、改訂にあたりアルフォンス・ド・ラマルティーヌの詩「瞑想録」を適用しています。「『人生は死への前奏曲である』というテーマのもとに、愛に破れ、平和な田園生活を求めた崇高な魂は、やがて戦いに立ち上がり、最後の勝利をおさめる」という内容です

この曲はクロード・ルルーシュ監督映画「愛と哀しみのボレロ」でカラヤンをモデルにした指揮者が凱旋門の屋上で演奏するシーンで使われていました

芥川は「前奏曲」の原曲をそのまま使うというよりも、速度などに変化を持たせ 様々にアレンジして流していますが、あたかもこの映画のテーマ・ミュージックのような扱いをしています

 

     

 

         

 

昨夕、東京文化会館小ホールで「オペラ夏の祭典2019-20 『トゥーランドット』プレトークを聴講しました これは2020年の東京オリンピック・パラリンピックにあわせて実施するオペラプロジェクトの第1弾「トゥーランドット」(東京文化会館と新国立劇場との共同制作)が2019年7月に開かれるのに先立って開かれたものです 同オペラに出演するリュー役の砂川涼子、ポン役の村上敏明の両歌手を迎え、ナビゲーター・朝岡聡氏によって進められました

 

     

 

最初に朝岡氏が「歌手お二人を迎えてのプレトークですが、今日は歌ってくれるのかな?と期待している方もいらっしゃるかも知れませんが、お二人とも本日2時からこの小ホールで開かれたプッチーニの『トスカ』(東京文化会館オペラBOX)でタイトルロールとカヴァラドッシを歌ったばかりでございまして、ここでは歌いません」と宣言したので、「アリァ!」と思い帰ろうかと思いましたが、1時間くらいで終わりそうだったので最後まで聴講することにしました

朝岡氏の解説によると、元々オリンピックはスポーツと芸術を一緒にやるべきもので、かつてオリンピックには芸術競技があったとのこと オリンピック憲章でもその旨を謳っているそうで、今回のオペラ公演も「文化オリンピアード」という位置づけにあるとのことです

スポーツと芸術との共通点として、砂川さんは

「スポーツはもちろん体力を使いますが、歌を歌うのも体力を使うという意味ではアスリートと同じかも知れません フィギュア・スケートが例えとして分かり易いと思いますが、スポーツでは技を磨いて競争に勝とうとする面がありますが、歌を歌うということは、練習を重ねてより高い声が出るように努力するという面があり、そういう意味では共通点があると思います

と語りました

これに関連して、村上氏は

「フィギュア・スケートでは、昔は3回転すれば優勝みたいなところがありましたが、現在では技術面での競争のほかに、芸術的な表現力が求められています その点、オペラの世界では、昔は、驚く演技をする際には大げさに動作をすることが求められていましたが、今では、顔の表情一つで大きく驚くことを表現するなど神経細やかな演技が求められます また、歌さえ上手ければ良いという一昔前とは違い、現在では太った人よりスマートな体形の人といった 見た目の美しさも求められます」と語っていました

来年のオペラ公演でバルセロナ交響楽団を指揮する大野和士氏は、二人ともオペラは初共演とのことですが、ヨーロッパの小さな歌劇場での下積みからスタートした現代では珍しい指揮者で、二人とも協演が楽しみだと語っていました

オペラの演出はバルセロナオリンピックの開会式を手掛けたアレックス・オリエです プッチーニは「トゥーランドット」の作曲を最後まで完成させることなく女奴隷のリューが死去するシーンを書いたところで プッチーニ本人も死去してしまったが、プッチーニはリューこそ理想の女性だと考えていたと思われることから、アレックスは「ハッピーエンドでは終わらせない」演出を手掛けるようだ、と朝岡氏が解説していましたが、これは理解できます 「トゥーランドット」を観終わって いつも思うのは、カラフはトゥーランドットから出された3つの質問にすべて正解し、最後は二人が結ばれて めでたしめでたし で終わるのですが、それではカラフを想って彼の名を最後まで明かさず自害したリューはどう救われるのか、ということです   アレックス・オリエがどのような演出をするのか  これは来年9月のオペラを観ないことには分かりません    公演の詳細は下のチラシの通りです   

 

     

 

さて、ここで考えなくてはならないのは、新国立オペラの2018‐19シーズンでも同年9月に「トゥーランドット」が上演されるということです 上記のオペラ夏の祭典「トゥーランドット」とまったく同じキャストにより、新国立劇場「オペラハウス」で同年7月18日(木)、20日(土)、21日(日)、22日(月)の4回、ダブルキャストにより上演されます   したがって、新国立劇場のオペラ会員は、別の会場でも観たいと思ったら、定期公演のほかに東京文化会館での「オペラ夏の祭典の『トゥーランドット』」のチケットを購入することになるでしょう

 

     

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森麻季さんの年齢表記のこと / デヴィッド・リンチ監督「ツイン・ピークス: ローラ・パーマーの最期の7日間」 & 「イレイザー・ヘッド」を観る ~ 最初から最後まで通奏低音のように響き渡る重低音

2018年09月01日 07時16分41秒 | 日記

9月1日(土)。生徒・児童のよい子の皆さん、夏休みの宿題のアディショナルタイム(正確には猶予期間かな?)は今日と明日の2日間だけですよ~ 覚悟はできてますか~

ということで、暦の上では今日から秋です そこで ひと言

                 NEVER COME BACK VERY HOT SUMMER 

という訳で、わが家に来てから今日で1430日目を迎え、防衛省は31日、2019年度予算の概算要求を過去最大の5兆2986億円とすると決めた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                 優先順位としては 全国の小中学校にエアコンを設置することを最優先すべきだ!

 

         

 

昨日、夕食に「メカジキの照り焼き」「イカと野菜のジャンジャン焼き」「冷奴」「マグロの山掛け」「豚汁」を作りました 少なくとも週に1回は魚がメインの料理にしないとね

 

     

 

         

 

昨日の日経夕刊 文化欄に「森麻季さん  国際デビュー20年でアルバム」という記事が載っていました 超訳すると

「森麻季さんは1998年、米国のワシントン・ナショナル・オペラで国際デビューして今年で20年を迎え、2枚組の歌曲のアルバム「至福の時」を9月に発表する もともと音楽の先生を目指し東京藝大に入学した。しかし、オペラの舞台を経験し、充実感が忘れられずプロの道に進んだ 転機になったのは2001年9月11日の米同時多発テロだ。中止だと思っていたのに予定通り開催された 『お客さんの反応が素晴らしかった。こんな時だからこそ音楽は感動を与えられる』。この経験を生かし、2011年の東日本大震災後は被災地でのコンサートに奔走した。9月16日には東京オペラシティでデビュー20周年記念のコンサートを開く 『聴衆と双方向で音楽の力を共有し、心を開放したい』と語る 48歳」

ソプラノの森麻季さんの歌は何度か聴いたことがあります 最初は「線が細いかな」という印象がありましたが、オッフェンバックのオペラ「ホフマン物語」のオランピアを聴いた頃からそのマイナスの印象は消えました 今や押しも押されぬ人気ソプラノ歌手です 

それは良いのですが、新聞記事って どうして歌手(特に女性)の年齢を書くのでしょうか?  「ああ、あの森麻季さんも 48歳になったのか」とは思いますが、歌唱力に年齢は関係ありません  「えっ、48歳にしてあの瑞々しい声」と 良い意味での驚きの声も聞こえてきそうですが、歌っている本人はどう思っているでしょうか? 第一、コンサートのプログラム・ノートの歌手や奏者のプロフィール欄には生年月日や年齢の表記はありませんよね、30歳未満の人を除いて したがって基本的に 男女を問わず年齢は書くべきではないと思うのですが、あなたは どうお考えでしょうか

 

         

 

昨日、池袋の新文芸坐でデヴィッド・リンチ監督による「ツイン・ピークス:ローラ・パーマー最期の7日間」と「イレイザーヘッド」の2本立てを観ました

「ツイン・ピークス:ローラ・パーマー最期の7日間」は1992年デヴィッド・リンチ監督・脚本によるアメリカ・フランス映画(カラー・135分)です

アメリカの山間部の小さな町ツイン・ピークスで、テレサ・バンクスという少女の死体が発見される FBIからデズモンド捜査官(クリス・アイザック)が派遣されるが、捜査中に失踪してしまい、さらに行方不明だったジェフリーズ捜査官(デビッド・ボウイ)が現われるが、謎の警告を発して彼も消えてしまう 事件から1年後、ツイン・ピークスの高校では美人のローラ・パーマー(シェリル・リー)が学園の女王として人気を集めていた ところが、彼女は自分が謎の男ボブに取り付かれていると不安に怯え、逃避するようにドラッグやセックスに溺れる日々を過ごしていた その間、ローラは日記をつけていたが、家族に一番知られたくないページが破り取られていることが分かり、恐怖が増大する そんなある日、ローラの友人ロネット・ポラスキー(フェーべ・アウグスチヌス)が山林で保護され、ローラ・パーマーは変死体で発見される   ローラの日記を破り取ったのは誰か、そして彼女は誰に殺されたのか

 

     

 

この作品はテレビドラマシリーズ「ツイン・ピークス」の前日談として映画化されたものです 映画はそのテレビをぶっ壊すシーンで始まりますが、何かを象徴しているようです。私はそのテレビドラマを観ていないので、全体のストーリー展開がよく把握できず、観ていて若干分かりにくさがありました 映画のラストシーンで、満面の笑みを浮かべて空を見上げるローラの背景で、ケルビ―二の「レクイエム」が流れていたのが印象的でした ローラは天国にいけたのだろうか

 

         

 

「イレイザーヘッド」はデヴィッド・リンチ監督・脚本・製作による1977年アメリカ映画(白黒・89分)です

舞台はフィラデルフィアの工業地帯。モジャモジャ頭が特徴の印刷工ヘンリー・スペンサー(ジャック・ナンス)は、いつも着古したスーツを着て異様な歩き方をする青年である ある日、ヘンリーは付き合っている女性メアリー・エックス(シャーロット・スチュアート)から奇妙な赤ん坊を出産したことを告白され、彼女との結婚を決意する その赤ん坊は異様に小さく奇形だったが、ヘンリーは驚く様子も見せない。ヘンリーとメアリーと赤ん坊の新婚生活が始まるが、赤ん坊は絶えず甲高い泣き声を上げ、その異様な声に悩まされたメアリーは家を出て行ってしまう 残されたヘンリーは次第に精神に破たんをきたし、幻覚症状が出るようになる。倒錯した世界を漂うヘンリーは赤ん坊をハサミで殺し、自身も天国へ憧れを抱き始める

 

 

     

 

この映画を観て最初から最後まで感じていたのは「止むことのない重低音」です 場面によって 工場の機械の音であったり、心臓の鼓動のような規則的な音であったり、水蒸気が噴出する音であったり、雨が降る音であったりしますが、それらの音が止むことはありません この映画の「通奏低音」と言っても良いかも知れません それが白黒映像とマッチして、常に不気味な雰囲気を醸し出しています

奇形の赤ん坊の顔を初めて見たとき、スティーブン・スピルバーグ監督の「E.T.」の地球外生命体によく似ているな、と思いました 「E.T.」は1982年公開なので、「イレイザーヘッド」(1977年公開)よりも後になります。したがって、模倣したとすればスピルバーグ監督の方になります

この映画の中で、オートメ―ション工場で 頭に消しゴムの付いた鉛筆を製造するシーンが出てきますが、この映画のタイトル「イレイザーヘッド」のイレイザーは「消しゴム」のこと、ヘッドは「頭」のことで、消しゴム付き鉛筆の頭のゴムの部分を指します それはすなわち、ヘンリーのモジャモジャ頭の暗喩になっています

この映画では、夢の中で女性が舞台で歌うシーンが出てきますが、顔に大きなコブが出来ていて奇形です 「エレファントマン」にせよ、この「イレイザーヘッド」にせよ、デヴィット・リンチ監督は 奇形の人物を登場させることによって 強いインパクトを与えることを狙っているように思えます

 

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