25日(火)。わが家に来てから今日で1454日目を迎え、日本経済新聞社とテレビ東京による世論調査で、安倍内閣の支持率が55%となり、前回の8月下旬の48%から7ポイント上昇した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
26日に開かれる日米首脳会談の通商問題がどうなるかで支持率は上下するだろう
土曜日にカレーを作ったので、昨日は夕食作りの代休を取りました
昨日、東京オペラシティコンサートホールでバッハ・コレギウム・ジャパン「第129回定期演奏会」を聴きました プログラムはモーツアルトの①交響曲第25番ト短調K.183、②レチタティーヴォとアリア「どうしてあなたが忘れられましょう・・・心配しないで、愛する人よ 」 K.505、③レクイエム K.626、④アヴェ・ヴェルム・コルプス K.618です ソリストはソプラノ=モイツァ・エルトマン、アルト=マリアンネ・ベア―テ・キーラント、テノール=櫻田亮、バス=クリスティアン・イムラ―、合唱と管弦楽=バッハ・コレギウム・ジャパン、指揮=鈴木優人です
会場は3階席まで満席です B.C.Jのコンサートでは「マタイ受難曲」や「ヨハネ受難曲」などの大曲が演奏される時と同じような活況です これはモーツアルト人気? 美人歌手エルトマン人気? それとも、まさかの鈴木優人人気? そのどれもが当てはまるような気がします
1曲目は「交響曲第25番ト短調K.183」です この曲は1773年10月5日(モーツアルト19歳の時)に完成されましたが、モーツアルトの交響曲の中では稀な短調で書かれています。もう1曲は「第40番ト短調K.550」です 第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「メヌエット~トリオ」、第4楽章「アレグロ」の4楽章から成ります この曲の大きな特徴は、この時代にしては珍しくホルンを4本用いていることです 当時は自然管の楽器しかなく、短調の場合は自然管で出せる音が限られていたため、それを補おうとしたためと言われています
オケはヴァイオリン・セクションが左右に分かれる対向配置をとります。コンマスは寺神戸亮 ホルン4人の中にはN響首席・福川伸陽、新日本フィルの藤田麻利絵の姿があります 総勢25人の小編成で第25番を演奏するというシャレでしょうか? たぶん違います
鈴木優人の指揮で演奏に入ります。古楽器特有の柔らかい音が心地よく響きます 少人数による演奏であるがために、それぞれの楽器の音がクリアで、曲の構造がハッキリと把握できるように感じます 第1楽章では三宮正満のオーボエが冴えわたりました 鈴木優人は速めのテンポで緊張感を維持しながら全楽章を駆け抜けていきました。とても心地よい演奏でした
2曲目はレチタティーヴォとアリア「どうしてあなたが忘れられましょう・・・心配しないで、愛する人よ」 K.505です この曲は1786年12月26日に「フィガロの結婚」のスザンナ役を演じたロンドン生まれのソプラノ歌手ナンシー・ストレースのために作曲された作品です ソプラノ独唱はドイツ・ハンブルク生まれのモイツァ・エルトマンです。2006年にザルツブルク音楽祭にデビュー、それ以降 世界各国の歌劇場で歌っています バロックから現代に至るまで幅広いレパートリーを誇り、美声と容姿端麗によって世界中で人気を博しています
エルトマンが黒の衣装で登場、鈴木優人のチェンバロとB.C.Jのオケのバックで、愛する人を想う歌を美しいソプラノで歌い上げます 私は彼女が華やかな歌を歌うのに黒の衣装を身に着けているのに違和感を感じましたが、「そうか、後半はレクイエム(死者のためのミサ曲)を歌うから黒にしたのか」と納得しました
プログラム後半は「レクイエム ニ短調 K.626」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756‐1791)が作曲した「死者のためのミサ曲」です モーツアルト最晩年の1791年8月末、見知らぬ男が彼を訪ね、匿名の依頼主からの「レクイエム」の作曲を依頼し、高額な報酬の一部を前払いして帰りました。1964年になって、この匿名の依頼主がフランツ・フォン・ヴァルゼック伯爵という田舎の領主であり、彼の使者が伯爵の友人フランツ・アントン・ライトゲープだったことが明らかになりました 伯爵は1791年2月に若くして亡くなった妻の追悼のためにモーツアルトに「レクイエム」の作曲を依頼したのでした。モーツアルトは作曲に取り掛かったものの病に侵され、作品は未完のまま残され、弟子のフランツ・クサーヴァー・ジュースマイヤーによって補筆完成されたことは良く知られています
作品は1.イントロイトゥス(入祭唱)、2.キリエ、3.セクエンツィア(続唱)、4.オッフェントリウム(奉献唱)、5.サンクトゥス(聖なるかな)、6.ベネディクトゥス、7.アニュス・デイ(神の子羊)、8.コム二オ(聖体拝領唱)」から成りますが、モーツアルトは「セクエンツィア(続唱)」の第8曲「ラクリモーサ(涙の日)」の8小節まで書いて息を引き取りました
ジュースマイヤー補筆版以降、バイヤー版、モーンダー版、ランドン版、レヴィン版などが相次いで出ましたが、今回演奏されるのは、アイブラー、ジュスマイヤーの補筆版に鈴木優人がさらに補筆を加えた校訂版によるものです 例によって、私は1100円で別売りされているプログラム冊子を買わないので、どの部分が補筆されているのか分かりません
拍手の中、4人の歌手が登場します。驚いたことにエルトマンは”お色直し”をして、深緑青色の衣装で現れました 前半が黒の衣装だったので死者のためのミサ曲である「レクイエム」では着替えないと思っていました 変わり身の早さは エルトマン というより エイトマン か
アルトのマリアンネ・ベア―テ・キーラントはノルウェー国立アカデミーで研鑽を積み、ハノーヴァー国立歌劇場のアンサンブル・メンバーとして活躍した後、ヨーロッパの数々の音楽祭に出演、2015年のB.C.Jによるモーツアルト「レクイエム」公演とCD録音に参加しています テノールの櫻田亮は2002年のブルージュ国際古楽コンクール第2位など多くの受賞歴があります。二期会会員で東京藝大准教授を務めています バスのクリスティアン・イムラ―はロンドンのギルドホール音楽学校で学び、2001年パリのナディア&リリー・ブーランジェ コンクールで優勝、現在はローザンヌ音楽院、フリブール音楽院の教授を務めています
まず最初の「イントロイトゥス」第1曲「レクイエム・エテルナム(永遠の安息を)」でソプラノ・ソロを歌ったエルトマンが素晴らしかった 思わず聴き惚れてしまいます 「セクエンツィア」の「ディエス・イレ-(怒りの日)」の合唱は迫力がありました 「レコルダーレ(思い出したまえ)」におけるソリストの四重唱はアンサンブルが見事でした 「ラクリモーサ(涙の日)」を聴くと、いつも「モーツアルトはここで筆を置いたのか」と悲しい気持ちになります 「俺は35歳の今まで生きてきたけれど、本当はもっと生きたいんだ」というモーツアルトの嘆きを聴くようです
「ラクリモーサ」の次にアーメンの合唱が入りましたが、これはジュースマイヤー版とは異なります 次いで「オッフェントリウム」の「ドミネ・イエス(主イエス)」における四重唱は聴きごたえがありました そして最後の「コム二オ」の「ルックス・エテルナ(永遠の光)」の合唱は素晴らしかった
全体を通して、鈴木優人は速めのテンポでサクサクと演奏を進め、スキのない音楽作りに徹していましたが、これが功を奏したようです いつもながら、合唱の素晴らしさは特筆に値します ソリストと合唱を支えたB.C.Jの管弦楽の素晴らしさは言うまでもありません
大きな拍手とブラボーの中、鈴木優人がマイクを持って登場、この日、B.C.Jの首席指揮者に就任した旨をアナウンスし、大きな拍手を浴びました
最後にソリスト4人が合唱に加わり、弦楽合奏のバックで「アヴェ・ヴェルム・コルプス」K.618が歌われました この曲はカトリックで用いられる聖体讃美歌で、モーツアルト最晩年の1791年6月17日に 妻コンスタンツェの療養を世話した合唱指導者アントン・シュトルのために作曲した作品です わずか46小節の小品ですが、晩年の傑作と言われています あらかじめ「アンコール曲」代わりにプログラムに組み込んでいた感のある楽曲ですが、透明感のある合唱により純粋で天国的に美しい音楽を堪能できました