人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

オペラ夏の祭典2019-2010『トゥーランドット』プレトークを聴講する~砂川涼子、村上敏明出演 / 橋本忍監督「私は貝になりたい」「幻の湖」を観る~全編に流れるリスト:交響詩「前奏曲」

2018年09月02日 08時08分54秒 | 日記

2日(日)わが家に来てから今日で1431日目を迎え、8月29日に発売された安室奈美恵さんのDVDとブルーレイの売上枚数が30日付で109万枚となり音楽映像作品で初めて100万枚を超えた とオリコンが31日発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       CAN  YOU  CELEBRATE ?  アムラーとしてはDVD買ったって? 負けました!

 

         

 

現在 池袋の新文芸坐では「日本映画の黄金期を書いた男 追悼・橋本忍」を特集しています   昨日はその第1日目で、「私は貝になりたい」と「幻の湖」の2本立てを観ました

 

     

 

「私は貝になりたい」は橋本忍監督・脚本による1959年東宝映画(白黒・113分)です   元陸軍中尉・加藤哲太郎の手記「狂える戦犯死刑囚」の遺言部分をもとに橋本忍の脚本でテレビドラマ化され、その後映画化されたものです

第二次世界大戦中の昭和19年、高知県幡多郡に住む清水豊松(フランキー堺)は気の弱い平凡な理髪師だったが、戦争が激化する中、赤紙(召集令状)が届き、応召することになる 内地の部隊に所属した豊松は、厳しい訓練の日々を送る。ある日、撃墜されたアメリカ運B-29の搭乗員が裏山に降下する。司令官の「搭乗員を確保、適当な処分をせよ」という命令が豊松の中隊に下り、山中探索のうえ、虫の音の搭乗員を発見する。そこで豊松が隊長から銃剣で刺殺するように命じられるが、気の弱さから怪我をさせただけに終わる 終戦後、豊松は除隊のうえ無事に帰郷し妻房江(新玉美千代)と営んでいた理髪店で再び腕を振るうことになる。しかし、ある日、特殊警察がやってきて、捕虜を殺害したBC級戦犯として彼を逮捕し、豊松は理不尽な裁判で死刑を宣告される 彼は処刑の日を待ちながら「もう人間には二度と生まれてきたくない。生まれ変われるなら、深い海の底の貝になりたい」と遺書を残す

 

     

 

この映画はどうしても観たかった作品です 小学生時代に父親とテレビで観た(再放送だったかもしれない)記憶があるからです。大正生まれの父親は戦争で中国大陸に赴いたことがあり、戦闘こそ経験しなかったものの厳しい軍隊生活を強いられていたと語っていたことを思い出します

豊松は裁判で「上官の命令でやった」と訴えますが、「命令書に誰が署名したのか」と訊かれ、「命令書など存在しない。口で命令されただけだ」と答えます しかし、アメリカ当局にはそれが通じません 「命令されても、自分の考えで命令を拒否することはできるはずだ」と責められると、豊松は「上官の命令は天皇陛下の命令だ。命令を拒否することはできない。拒否すれば銃殺される」と訴えますが、結局、豊松は実行犯として死刑を宣告されるのです

この作品をテレビで観た父は「軍隊というところは、服や靴は身体に合わせて支給されるのではなくて、身体を服や靴に合わせなければならなかった 上官の命令は絶対で、口答えは許されなかった」と言っていました。豊松の言葉が実感として身に染みていたのだと思います

戦争というものがどれほど不条理なものかを理解するのに、どんなに派手な戦闘シーンのある映画にも増して、この映画ほど相応しい作品は無いでしょう ごく普通の市民の目線で捉えた 究極の反戦映画と言えるかも知れません

 

     

 

         

「幻の湖」は橋本忍監督・脚本・原作による1982年公開の東宝映画(164分)です

雄琴のソープランド街で「お市」の源氏名で働くソープ嬢・道子(南條玲子)は、愛犬シロと琵琶湖の西岸でマラソンをするのが日課だった ある日、そのシロが浜で殺されているのが見つかる。凶器の包丁と様々な証言から、犯人が東京の作曲家・日夏という男だと探り当てる 日夏の住所とジョギングが趣味であることを知った道子は、得意のマラソンで日夏を倒れるまで走らせてやると決意する。しかし、都会の空気に慣れない道子はペースを乱し、日夏に逃げられてしまう その後、紆余曲折の末、結婚のためソープ嬢を辞めようとしていた矢先、偶然にも日夏が道子の店に現れる。道子はシロを殺した凶器の包丁を掴んで日夏を追い回し、ついに琵琶湖大橋のたもとで彼を追い詰めることに成功する

 

     

 

この作品は「砂の器」(1974年)、「八甲田山」(1977年)に続く、橋本プロダクション制作作品です 東宝創立50周年記念作品として制作されたこの映画の主人公・道子役は、俳優経験を問わない一般オーディションにより1627人の応募者の中から選ばれた南條玲子です この映画では彼女が愛犬シロと走るシーンが多く出てきますが、ロケでは相当走らされたのではないかと想像します

この映画の音楽を手掛けているのは作曲家の芥川也寸志ですが、リストの交響詩「前奏曲」を全般にわたり使用しています この曲はフランツ・リスト(1811-86)が1848年に作曲し、1854年にワイマルでリスト自身の指揮により初演された楽曲です 合唱曲「四大元素」の主題を用い、その前奏曲として作られ、改訂にあたりアルフォンス・ド・ラマルティーヌの詩「瞑想録」を適用しています。「『人生は死への前奏曲である』というテーマのもとに、愛に破れ、平和な田園生活を求めた崇高な魂は、やがて戦いに立ち上がり、最後の勝利をおさめる」という内容です

この曲はクロード・ルルーシュ監督映画「愛と哀しみのボレロ」でカラヤンをモデルにした指揮者が凱旋門の屋上で演奏するシーンで使われていました

芥川は「前奏曲」の原曲をそのまま使うというよりも、速度などに変化を持たせ 様々にアレンジして流していますが、あたかもこの映画のテーマ・ミュージックのような扱いをしています

 

     

 

         

 

昨夕、東京文化会館小ホールで「オペラ夏の祭典2019-20 『トゥーランドット』プレトークを聴講しました これは2020年の東京オリンピック・パラリンピックにあわせて実施するオペラプロジェクトの第1弾「トゥーランドット」(東京文化会館と新国立劇場との共同制作)が2019年7月に開かれるのに先立って開かれたものです 同オペラに出演するリュー役の砂川涼子、ポン役の村上敏明の両歌手を迎え、ナビゲーター・朝岡聡氏によって進められました

 

     

 

最初に朝岡氏が「歌手お二人を迎えてのプレトークですが、今日は歌ってくれるのかな?と期待している方もいらっしゃるかも知れませんが、お二人とも本日2時からこの小ホールで開かれたプッチーニの『トスカ』(東京文化会館オペラBOX)でタイトルロールとカヴァラドッシを歌ったばかりでございまして、ここでは歌いません」と宣言したので、「アリァ!」と思い帰ろうかと思いましたが、1時間くらいで終わりそうだったので最後まで聴講することにしました

朝岡氏の解説によると、元々オリンピックはスポーツと芸術を一緒にやるべきもので、かつてオリンピックには芸術競技があったとのこと オリンピック憲章でもその旨を謳っているそうで、今回のオペラ公演も「文化オリンピアード」という位置づけにあるとのことです

スポーツと芸術との共通点として、砂川さんは

「スポーツはもちろん体力を使いますが、歌を歌うのも体力を使うという意味ではアスリートと同じかも知れません フィギュア・スケートが例えとして分かり易いと思いますが、スポーツでは技を磨いて競争に勝とうとする面がありますが、歌を歌うということは、練習を重ねてより高い声が出るように努力するという面があり、そういう意味では共通点があると思います

と語りました

これに関連して、村上氏は

「フィギュア・スケートでは、昔は3回転すれば優勝みたいなところがありましたが、現在では技術面での競争のほかに、芸術的な表現力が求められています その点、オペラの世界では、昔は、驚く演技をする際には大げさに動作をすることが求められていましたが、今では、顔の表情一つで大きく驚くことを表現するなど神経細やかな演技が求められます また、歌さえ上手ければ良いという一昔前とは違い、現在では太った人よりスマートな体形の人といった 見た目の美しさも求められます」と語っていました

来年のオペラ公演でバルセロナ交響楽団を指揮する大野和士氏は、二人ともオペラは初共演とのことですが、ヨーロッパの小さな歌劇場での下積みからスタートした現代では珍しい指揮者で、二人とも協演が楽しみだと語っていました

オペラの演出はバルセロナオリンピックの開会式を手掛けたアレックス・オリエです プッチーニは「トゥーランドット」の作曲を最後まで完成させることなく女奴隷のリューが死去するシーンを書いたところで プッチーニ本人も死去してしまったが、プッチーニはリューこそ理想の女性だと考えていたと思われることから、アレックスは「ハッピーエンドでは終わらせない」演出を手掛けるようだ、と朝岡氏が解説していましたが、これは理解できます 「トゥーランドット」を観終わって いつも思うのは、カラフはトゥーランドットから出された3つの質問にすべて正解し、最後は二人が結ばれて めでたしめでたし で終わるのですが、それではカラフを想って彼の名を最後まで明かさず自害したリューはどう救われるのか、ということです   アレックス・オリエがどのような演出をするのか  これは来年9月のオペラを観ないことには分かりません    公演の詳細は下のチラシの通りです   

 

     

 

さて、ここで考えなくてはならないのは、新国立オペラの2018‐19シーズンでも同年9月に「トゥーランドット」が上演されるということです 上記のオペラ夏の祭典「トゥーランドット」とまったく同じキャストにより、新国立劇場「オペラハウス」で同年7月18日(木)、20日(土)、21日(日)、22日(月)の4回、ダブルキャストにより上演されます   したがって、新国立劇場のオペラ会員は、別の会場でも観たいと思ったら、定期公演のほかに東京文化会館での「オペラ夏の祭典の『トゥーランドット』」のチケットを購入することになるでしょう

 

     

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