人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

中山七里著「ラスプーチンの庭 刑事犬養隼人」を読む~遺体の痣はカルト宗教によるものか? 大病院での先端医療と民間医療の在り方を考えさせられるミステリー

2023年09月17日 06時42分22秒 | 日記

17日(日)。太鼓の音が聞こえてきたので外を覗いてみると、子どもたちが山車を引いて白山通りを歩いているのが見えました 近くの神社の秋祭りのようです。まだまだ暑い日が続きますが、暦の上では秋なんだな、とあらためて思いました 「祭り」ということでいつも思い出すのは、娘が保育園に通っていた頃のことです お遊戯会で歌って踊る催し物があって、娘が家で歌の練習していました 聞いていると「ぐーちゃらぐんぐんぐんぐん まわあってる~ おそぎのうわわ はなまつり~」と聞こえます ぐーちゃらぐんぐんぐんぐんって何だ? おそぎのうわわって何だ? と疑問を抱きながら、お遊戯会本番を迎えました 子どもたちがテープの歌に合わせて踊ります 耳を傾けてよ~く聞いていると「風車がぐんぐんぐんぐん 回ってる~ おとぎの村は 花祭り~」と歌っていることが分かりました そんな娘も、今では親が作る料理に注文をつけるまでに口達者に成長しました 時々、あの頃のまま大きくならなくてもよかったのに・・・と思うことがあります これ 娘には内緒です

ということで、わが家に来てから今日で3169日目を迎え、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産委員会は15日、ロシアの侵攻が続くウクライナの首都キーウと西部リビウの2か所の世界遺産を、存続が危ぶまれる「危機遺産」リストに登録することを決めた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     タリバンと同じ野蛮人のロシア兵に 文化の重要性が理解できればいいけど どうかな

     

         

 

中山七里著「ラスプーチンの庭 刑事犬養隼人」(角川文庫)を読み終わりました 著者の中山七里は、普段から当ブログをお読みいただいている読者の皆さまにはお馴染みですね 1961年、岐阜県生まれ。「さよならドビュッシー」で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー 「岬洋介シリーズ」としてベストセラーとなる 「中山七里は七人いる」と言われるほどの多作小説家で、「どんでん返しの帝王」とも呼ばれています 本書は「切り裂きジャックの告白」「七色の毒」「ハーメルンの誘拐魔」「ドクター・デスの遺産」「カインの傲慢」に続く「刑事犬養隼人」シリーズ第6弾です

警視庁捜査一課の刑事・犬養隼人は、娘・沙耶香の入院仲間だった少年・庄野祐樹の告別式に参列することになった 帝都大附属病院から自宅療養に切り替えた彼の遺体は奇妙な痣だらけだったが、両親は心当たりがないと言う さらに翌月、同じような痣のある自殺死体が公園で発見される 検視の結果、いずれも事件性なしと判断されたが、犬養は「これはカルトではないか」と疑問をもち、独自に捜査を進めると、「ナチュラリー」という謎の民間医療組織に行き当たる 犬養は部下の高千穂明日香とともに「ナチュラリー」を訪問し、主宰の織田豊水と対峙するが、織田は民間療法の正統性を主張する 納得できない犬養は豊水の過去を調査する。しかし、驚くべきことに豊水は「ナチュラリー」の建物内で死体となって発見される いったい何がどうなっているのか・・・

 

     

 

上記のストーリーは「聖痕」「怪僧」「教義」「殉教」という各章の中で語られますが、実はその前に「黙示」という章があります そこでは、「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」に罹った父親・汲田允が、多額の医療費を支払って帝都大附属病院で先端医療を受けたにも関わらず死亡したことにより家庭が崩壊したことから、娘の汲田姉妹が同病院に恨みを抱き復讐を誓うまでが描かれています これが伏線となって最後のどんでん返しにつながるわけですが、「またしてもやられた」という感じです

タイトルの「ラスプーチンの庭」は、高千穂明日香が「ナチュラリー」教祖の織田豊水を評した次の台詞から取られています

「血友病患者だったロシア皇太子を治療した功績で皇帝夫妻の信頼を勝ち取り、やがて宮中で権勢を揮った20世紀初頭の怪僧です あの顔を見た時から誰かに似ていると思ったんですけど、ラスプーチンでした」「司教や上流階級の知遇を得て宮中に入り込んだラスプーチンは政治に介入し始め、時の皇后と親密な関係を持ったことも手伝って教会や政界に敵を作りました 要は嫉妬ですよね。結局、ラスプーチンは彼に反感を持つ貴族の一派によって暗殺されます 泥酔させられた上に何発も銃弾を撃ち込まれたそうです

本書を読み終わって真っ先に頭に浮かんだのは「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」による霊感商法や高額献金問題、そして「宗教2世」問題がらみで顕在化した「ものみの塔聖書冊子協会(エホバの証人)」による子どもの虐待問題です 後者については佐藤典雅著「カルト脱出記 ~ エホバの証人元信者が語る25年間のすべて」を読んだ感想を2022年9月5日付toraブログに書きましたので、興味のある方はご覧ください ちなみに「ラスプーチンの庭」の単行本は、2022年7月に起きた安倍元首相襲撃事件よりも前の2021年1月に刊行されています

著者はナチュラリー事務局長の鞠谷貢に「医療法を遵守して死ぬのと、法の埒外で治療して完治するのとで有意義なのはどちらでしょうか?」と言わせているように、必ずしも高額の医療費をつぎ込んで大病院で先端治療を受けなくとも、いずれは死ぬのであるから、民間療法で治るならそれも否定できないと考えている節があります しかし それ以上に、新興宗教まがいの民間療法で金儲けをしている奴らは絶対に許さない、という強い信念を抱いているのは間違いありません

巻末の「解説」で弁護士の紀藤正樹氏が次のように書いています

「『ラスプーチンの庭』の読後感は複雑な想いを持つ それは殺人事件などの重大事件のニュースを見た時に感ずる想いに通ずるものである。日常に生起する事件には、我々社会が先に対策を取っていさえすれば、被害者も加害者も生じないのではないか、事件を防げたのではないかと考えさせられる事件が多々ある 本作で起こる事件にもまた、同様の感慨を感じた。創作であるはずの本作によって現実の事件の在りようまでをも想起させる著者の筆力には感嘆するほかない

中山七里は常に社会性のあるテーマを取り上げ、読者に問いかけてきます 読者としては作品をミステリーとして楽しむだけでなく、提起された問題を自分なりに考えることを求められます

 

     

コメント (2)
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