人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

佐藤美枝子の「夜の女王のアリア」を再評価~新国立オペラでモーツアルト「魔笛」を観る

2016年01月25日 07時16分22秒 | 日記

25日(月)。わが家に来てから484日目を迎え、お姉ちゃんに暖房器具を買ってもらいながら ぶつぶつ言っているモコタロです

 

          

                        暖房器具より 一杯ひっかけて身体の芯から温まりたいなぁ

 

  閑話休題  

 

昨日、初台の新国立劇場でモーツアルトの歌劇「魔笛」を観ました 出演者は、ザラストロに妻屋秀和、タミーノに鈴木准、パミーナに増田のり子、夜の女王に佐藤美枝子、パパゲーノに萩原潤、パパゲーナに九嶋香奈枝、モノスタトスに晴雅彦、弁者に町英和、僧侶に大野光彦ほか。ご覧の通りオール日本人キャストです。指揮はロベルト・パーテルノストロ、管弦楽は東京交響楽団、演出はミヒャエル・ハンぺです

ハンぺの演出による「魔笛」は1998年、2000年、2006年、2009年、2013年に次いで今回が6回目です。私は多分2000年の公演から毎回観ています

 

          

 

モーツアルトのオペラはどれもが素晴らしいですが、この「魔笛」ほど年齢を問わず受け入れやすいオペラは無いでしょう とくにこのハンぺによる演出では、第1幕冒頭に大蛇や猿やライオンや鰐などが ぬいぐるみで登場するので子供でも楽しく観られるはずです

あまりにも有名なオペラなのでストーリーは省略します。キャストでは、何を歌っても何を演じても安定感がある妻屋秀和のザラストロが特に素晴らしく、鈴木准はタミーノにぴったりの声質を持っていて、歌も丁寧で好感が持てました

 

          

 

私がこのオペラを観る時のポイントとしているのは、「夜の女王を誰がどう歌うか」ということです 新国立オペラの「魔笛」を振り返ると、2006年が今回と同じ佐藤美枝子で、2009年、2013年が安井陽子でした。私の頭の中では「夜の女王=安井陽子」というイメージが出来上がっています

ミヒャエル・ハンぺ演出による第1幕の夜の女王の登場シーンは劇的です 夜の女王はステージ上空から丸いゴンドラに乗って降りながら空中で「夜の女王のアリア『畏れるな、わが子よ』」を歌います(上のチラシのように)。高所恐怖症の歌手はとても歌えないでしょう

今回10年ぶりに新国立オペラの「夜の女王」にカムバックした佐藤美枝子は、コロラトゥーラを駆使して美しい声で難曲を歌ったのですが、安井陽子と比べて狂気に迫るような迫力が感じられず、ちょっとがっかりしたのです

ところが、第2幕で歌われる2回目の「夜の女王のアリア『地獄の復讐が私の心の中に煮え立つ』」では、「ザラストロ憎し」の演技のもと、まさに狂気に迫るコロラトゥーラを歌い切ったのです これを聴いて、私はハタと思い至ったのです。「佐藤美枝子は第1幕と第2幕で敢えて『夜の女王のアリア』の歌い方を変えていたのではないか」と。つまり、第1幕では「何としても娘のパミーナをザラストロの下から取り戻したい」という母心からあのアリアを歌った(ここでは夜の女王=良い人という構図)のに対して、第2幕では「娘パミーナを自分から奪った父ザラストロに対して復讐をする」という自己中心的な邪心からあのアリアを歌った(ここでは夜の女王=悪い人という構図)のだと こう解釈することによって「夜の女王」を歌うコロラツゥーラ歌手としての佐藤美枝子に対する私の評価は変わりました。世界的な「チャイコフスキー国際音楽コンクール声楽部門の日本人初の第1位という輝かしい経歴はダテではないのです

それ以外のキャストに目を転じると、特に素晴らしいと思ったのは3人の侍女を歌った横山恵子、小林由佳、小野美咲です 第1幕冒頭から出番がありますが、この3人は声も美しく存在感抜群でした

今回の演出で気になったことがあります(ということは前回もそうだったか)。それはこのオペラの最後のシーンです フィナーレはタミーノとパミーナ、パパゲーノとパパゲーナの2組のカップルがめでたく結ばれて大団円を迎える訳ですが、ハンぺの演出では、幕が下りると、なぜかザラストロだけが幕の外(客席側)に残り、肩ひじをつきながら本を読んでいるのです。照明が点いたままなので、聴衆はオペラが終わったのか、まだ続いているのか判然としないまま、拍手をしたものか、まだ早いのか、迷わされている事態になっていました オペラでは通常、劇が終わると照明が暗転し、幕が下ります。そして再び幕が上がりカーテンコールがあるのです。それが、照明が消えないままだったのでこういう混乱になったのです

歌劇「魔笛」はモーツアルトもメンバーだった秘密結社「フリーメイソン」との結びつきが深いと言われており、作曲者モーツアルトと台本作者のシカネーダーは、フリーメイソンの儀式や習慣をこの「魔笛」の劇中で使用したと言われています そうしてことを踏まえて考えると、ハンぺの演出の意図は、フリーメイソンの啓蒙主義的な思想を体現したザラストロを幕の外に残すことによって、啓蒙主義(皆さん、本を読みましょうね)を聴衆に訴えたかったのではないか、と思います 私の推測が合っているかどうか分かりませんが、いずれにしても、最後のシーンは照明を暗転させるべきだと思います

 

          

 

オペラの帰り、地下鉄・初台駅で電車を待っているとき、どこかで聴いたことのある「電車到着メロディー」が流れてきました ヴェルディのオペラ「アイーダ」の「凱旋行進曲」でした。新国立劇場の最寄り駅・初台に相応しい曲を、と選んだのでしょう 着眼点は良いのですが、この曲だと若干 勇ましすぎて、発車前の飛び込み乗車が増えたりしないでしょうか?「アイーダ」の勇ましい音楽にのせられて電車のドアに飛び込み 首を挟まれて「アイーンだ」なんて・・・・・考え始めると夜も眠れません。ウソですけど

 

  も一度、閑話休題  

 

新国立劇場のオペラ「2016/2017シーズン ラインアップ」が発表されています 新国立劇場の情報誌「ジ・アトレ」に掲載されたラインアップ(10月~来年6月)は次の通りです

 

          

 

          

 

          

 

          

 

私の場合はもう10年以上も新国立オペラの定期会員になっているので、継続するのが当たり前になっています 現在の席は1階センターブロックの左通路側席(プルミエ・S席)ですが、すぐ前の2列は主催者側席(招待席・予備席)なので、かなり良い席だと思います 今回の悩みは、同じS席を継続するか、同じS席でも料金の安い左右サイド席に移るか(S席には3ランクある)、あるいはA席(2階左右)にランクを落とすか、ということです

ただ、現在の2015/2016シーズンが全10公演であるのに対し、2016/2017シーズンは9公演で、前季まであった日本人作曲家によるオペラ作品が入っていません その分料金的には安くなっているわけです。とは言うものの、現在のS席を継続する場合は9公演=184,500円で、決して安くはありません

しかし、発表されたラインアップを見ると、かなり魅了的です ワーグナーの2作品(「ワルキューレ」「ジークフリート」。両方とも新制作)をはじめ、大好きな「セビリアの理髪師」も「フィガロの結婚」も入っています 他の作品も含めて考えると全体的にバランスが良く取れたラインアップだと言えます

ということで、来季も現在のS席を継続することとし、「プルミエ公演継続申込書」を送付しておきました

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