守田です(20211025 20:00)
● 美浜原発3号機停止の意味するもの
10月23時午後に、本年6月23日に人々の反対を押し切って再稼働が強行された老朽原発、美浜3号機が停まりました。
テロ対策施設=特定重大事故等対処施設の建設が、期限までに間に合わなかったらという理由です。関西電力は同施設を2022年10月までには完成させ、再稼働させたいと表明しています。
とても危険な美浜3号が止まったことで、その分、私たちの安全マージンは増えました。しかしこの日、美浜3号が停止したことに重大な意味があるのに、マスコミがまったく触れていません。残念です。
まずすぐに分かることは、6月23日の再稼働が「特定重大事故等対処施設」の完成抜きに行われていたことです。あまりに酷い。自ら唱える「安全対策」抜きに再稼働させたのです。
そもそもこの「特定重大事故等対処」を「テロ対策施設」と略するのは間違いであり、電力会社のごまかしに乗るものです。実際にはフィルターベントなど、テロ対策とはいえない重大事故(過酷事故)対策のものも含まれるからです。
福島原発事故を踏まえたとする「新規制基準」の下で、設置が義務付けられながら、あの事故から10年以上経過して、まだ設置が終わっていない。それで老朽原発が再稼働されたわけです。
美浜3号停止を報じるカンテレ 10月23日
● 原子力規制委員会の「規制」は穴だらけ
これまでも何度も述べてきましたが、「特定重大事故等対処施設」の設置期限は、規制委員会によって2013年7月とされながら、加圧水型原発に限って5年の猶予が設けられてしまったもの。大甘の規制の上に乗ったものです。
猶予を設けたのは、沸騰水型の福島原発とは違う形式の加圧水型原発を先に稼働させようとしたからでしょうが、どの電力会社も設置に後ろ向きで、2018年7月にもとても間に合わないことが事前に分かってしまいました。
すると2016年1月に規制委員会は、さらに「本体施設工事認可後5年」と設置期限を伸ばしてしまったのです。大甘の上に大甘を重ねたのでした。
このため川内・高浜が2020年3、5、8、10月まで、伊方が2021年3月まで、美浜が2021年10月まで、玄海・大飯が2022年8,9月まで、再度の猶予が与えられたのですが、なんと電力会社はこれすら守りませんでした。
それで昨年、次々と原発が停止し、関西電力は一時期原発ゼロになったのでしたが、ここに見られることは、電力会社が「特定重大事故等対処施設」建設に一貫して後ろ向きだったこと、規制委員会もまともに規制を行なわなかったことでした。
危険性がより高い老朽原発美浜3号機の稼働に際してさえ、関西電力はこの施設を完成させることなしに稼働に踏み切った。あまりにひどいです。
こんな状態で再稼働が続くのはとても危険です。しかし自民公明政権が続く限り、これまで繰り返されてきたこの状態が続くばかり。それがいつしか深刻な事故に結びつきます。
目下の選挙の中で、再度「原発を止めよ」の声を高めましょう。原発ゼロに向けて、市民と野党の共闘の力を伸ばしましょう。野党候補に票を集めましょう。
繰り返されてきた設置期間の延長 守田作成
● 特定重大事故等対処施設についてしっかり学ぼう
脱原発の声をさらに高めるために、マスコミが「テロ対策施設」などと報道してしまっている「特定重大事故等対処施設」についての、しっかりとした学びも深めましょう。
以下、2020年3月川内原発1号機が停まった時にリリースした解説動画をご紹介します。この三つを見れば問題点をバッチリ把握できます。ぜひご覧下さい。
(1)実は新規制基準などいまだにきちんと適用されていない!
【動画】もりもり解説 川内原発1号機停止について
(2)できてないのは「テロ対策」以前のもの。各原発とも免震重要棟も出来ていない。
【動画】もりもり解説 特定重大事故等対処施設は「テロ対策」以前のもの
(3)そもそも新規制基準は過酷事故を前提にしている。そんな運転は認められない!
【動画】もりもり解説 そもそもベントがある段階で原発はアウト 重大事故等対処施設などあってはならない
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