ぼちぼち日記

大切な日々のこと

『あの日のおとだよおばあちゃん』

2006-07-26 05:27:35 | 息子と読んだ本のこと・児童書

あの日のおとだよおばあちゃん』 佐野洋子

「おばあちゃん、ぼくが、ここんちの 子になったときのこと話して」
そんな、『ねこ』のお願いに、おばあちゃんが答えます。それは、ある雪のふる夜のことでした。やってきたのは、なんと、大きなブタ。おばあちゃんは、大きなブタが、『ねこ』を連れてきたと言うのです。
びっくりする『ねこ』。「猫は、嫌いだったけど、うちにきた『ねこ』は、好きだよ」という言葉に、嬉しくてたまらない『ねこ』。
すると・・・なんと、また「あの日のおと」が、近づいてくるではありませんか。そう。大きなブタがやってきたのです!新しい猫を連れて!

おばあちゃんと『ねこ』、おばあちゃんと大ブタの掛け合いがおもしろく、ついつい、噴出してしまう。けれど、笑いだけではない。
新しい猫・『くろ』の登場で、ざわめく『ねこ』の心。
だって、『くろ』は、何でもできる天才猫なんだもの。何もできない平凡な子猫・『ねこ』の気持ちが手にとるようにわかって、なんだか切なくて、心が痛い。これが、嫉妬っていうものなんだなあ。嫉妬、ねたみ・・・
息子は、どんな風に感じただろう?ほとんど一人っ子同様の息子は、嫉妬という心を、どんな風に捉えるのだろう?

さて、『ねこ』の心の揺らぎにばかり、感情移入していた私だけれど、あとがきで、佐野洋子さんは、『天才猫・くろ』の孤独の方に焦点をあてていました。
天才ゆえに、何でも出来てしまうがゆえに感じる孤独。平凡と幸せについて、佐野さんは、書いています。
最後に訪れる、『ねこ』の平穏な日々にほっとしながらも、息子の心に想いを馳せ、佐野洋子さんの想いに想いを馳せ・・・なんだか、不思議な読了感でした。
返却カウンターに並んでいたものを、たまたま借りてきた作品でしたが、思いがけず、素敵な作品と出会うことができました。こういう偶然って、本当に嬉しいな。