ぼちぼち日記

大切な日々のこと

『ぶらんこ乗り』

2006-07-12 16:49:31 | わたしの読書

ぶらんこ乗り』 いいし しんじ

私は、整った文章が好きだ。そういう美しい文章を読むと、それを書いた人が作家であろうと、友だちであろうと、同僚であろうと、もう、ウットリしてしまう。
そんな私だから、この本を開いたとき、正直に言って「ぽか~ん」としてしまった。だって、そこには、お世辞でも、美しいとは言えない文章が並んでいたから。
私は、一度読むのをやめて、遠くからページを眺めてみた。
平仮名だらけで、まるで、あちらこちらに言葉がとっちらかっているような、そんな感じ。これは、まるで何かの呪文か何かじゃないか?そんな気までしてきた。
いや、きっと、呪文だったんだと思う。だって、私は、魔法にかけられたように、その、ちっとも私好みじゃない文章に、のめりこんでしまったのだから。そのうちに、なんだかわからない涙が溢れてきて、まだ、何の事件も起こらない、ほんの序章のうちから、私は、ホロホロと泣き出してしまった。

これは、小学生の女の子と天才と謳われた弟との、切ない思い出の物語だ。
(3歳から物語を書き始めたという)天才の弟くんの書いた物語をちりばめて、話は、どんどんと進んでいく。
在りえない夢のような物語。けれど、それは、私の幼い頃の思い出と、何度も何度もリンクする。それは断片であり、なんのツナガリもないのだけれど、何故か、何度も何度も頭の中に浮かんで、消えた。切なくて、切なくて、たまらない。

これは、いったいどういうことだろう?
全く、この物語の説明になっていないのだけれど、最後には、オイオイと泣き出してしまった私が、はっと気づくと、なんと、一日で読了していた。これは、本当に久しぶりのこと。
その日、息子は、旦那と一緒におじいちゃんの家に遊びに行っていたし、私は、友人との約束が雨で流れてしまっていたし、そんな偶然も重なって、魔法にかかったように読み干してしまったのです。
この本を読んだ誰もが、私と同じような体験をするのだろうか?もしかしたら、つまらなくて読めません!という人もいるかもしれない。
実際・・・その本良かったの?なんて質問を受けたら、もう、「わからない」としか答えられないのだ。不思議な不思議な一冊だった。説明のつかない一冊だった。完全に、いしいしんじの世界に、ハマッテいます。