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ぼちぼち日記

大切な日々のこと

『トムは真夜中の庭で』

2007-08-20 12:57:49 | わたしの読書

『トムは真夜中の庭で』
フィリパ・ピアス(著), 高杉 一郎(訳)

息子の誕生日のプレゼントを購入するときに、ことり文庫さんから送ってもらったリストの中にあった本。
プレゼントには、違うものを選んだのですが、題名だけは、以前から知っていたこの本に、興味深々。早速、借りてきました。

はしかにかかった兄から隔離され、おばさんの家に行くことになったトム。
何か面白いことはないかなあ?そんなことを考えならベッドにいたトムは、壁にかけられた大時計が13回、時を刻むのをきいた。
時間を超え、今は、コンクリートと家に変わってしまっている庭園に入り込んだトムは、そこで、ハティという少女と出会う。
ハティとの楽しい時間。果たして、トムは、どこに迷い込んだのだろうか?


正直、途中までは、とても長かった。
暑さもあると思う。
でも、古典的な雰囲気の文章だからか、詩的な文章だからか、なかなか、頭に入っていってくれなかったのだ。けれど、いつの間にか、夢中になって読んでいた。

最後の最後まで、秘密がわからない展開。
ラストの方では、どうしても本を閉じれなくなってしまい、娘を抱っこしたまま読み続けてしまった。
ごめんね、娘ちゃん。
そして、秘密が解けた瞬間!
何故だろう?悲しい訳でも、嬉しい訳でもないのに、涙がホロリとこぼれた。不思議。
腕の中の娘は、もっと不思議そうに私を見上げていたけれど。

旅行に行く前に、息子にも読んであげたい一冊。
けれど、今読んでいる本が、読み終わりそうにない。
う~ん。間に合わないかなあ・・・残念。
息子なら、時間を越えて、別の世界に旅が出来るかもしれないな。いつか、是非。

保存版として、ハードタイプの本も出ているようです。昔から読み継がれてきた本なのですね。今回は、購入しなかったけれど、いつか、手元に欲しいなあ。
読み終わるのに時間がかかってしまい、
(終わってみれば、どうして、そんなに時間がかかったのか不思議な位、面白かったのだけれど)
いしいしんじの新刊『みずうみ』の方が、貸し出し期限までに読み終わらなかった。あー。悔しいー!!
予約から、やり直しですが、絶対に読むぞー!


『歩く』

2007-07-31 11:54:28 | わたしの読書
『歩く』
ルイス・サッカー (著), 金原 瑞人; 西田 登(訳)

前作『穴』に比べると、やはり、スケールの大きさは、負けてしまうかなあ。
物語の運びかたの巧妙さも、やはり、負けてしまうと思う。
でも、青春小説としては、負けない面白さだと思う!
それより何より、今回は、最初の数ページで、読み手を、完全なる「主人公の味方」につけてしまうことに成功する。よって、ハラハラ・ドキドキしっぱなし。
だって、「よせばいいのに」、人の良い主人公は、次々に騒動に巻き込まれていってしまうのだもの。

これは、『穴』の登場人物であるアーム・ピットとX・レイの、その後のお話。
レイク・キャンプ(更生施設)を出たアーム・ピッドは、仕事を持ち、学校に通い、まっすぐと歩き始めていた。ところが・・・。X・レイの持ちかけた金儲け話に、アーム・ピッドが、断わりきれずに乗ってしまった所から、物語は始まる。

「ああ、どうしてOKしちゃうのよー!」
「彼は、真面目に生きていこうとしているのよ、誰か、助けて!!」
叫びだしたくなる衝動にかられる。興奮しすぎて、何度も本を閉じてしまった位。
・・・という訳で、またもや悪い癖が出てしまい、先に結末を読んでしまった。
クライマックスを、3回も読んだのは、私です。

青春小説のような明るさ、すがすがしさに、ドキドキがプラスされた、この本。
面白くない訳がないのです。
いつも、ドキドキしすぎちゃう私には、主人公の味方が、何人も登場してくれるのも、嬉しかった。
また一人、レイクキャンプ(更生施設)の仲間が、真っ直ぐ歩いていくことが出来たのだと思うと、それも、嬉しい。
レイクキャンプの仲間が更生していくストーリーは、やっぱり、『穴』のファンとしては、何より嬉しいストーリーなのです

『はつ恋』

2007-07-24 12:08:55 | わたしの読書
『はつ恋』
ツルゲーネフ(作), 小川 洋子(訳), 中村 幸子 (絵)

ツルゲーネフの描く物語は、なんて、冷たく、静かなんだろう。不気味な程の静けさ。
ページをめくる度に、言葉が、心の奥深くまで、突き刺さっていくようだ。
淡々と物語が進み、惹きつけるような展開がある訳でもない。

面白かった?と、聞かれたら、
さあ。どうだろう?と、答えるしかない。
それなのに、何か、深みにはまっていくような、そんな感じがする。
表現が悪いけれど、イケナイ薬をやると、こういう感じになるんじゃないだろうか?
そんなことを思ってしまう。

この本。
短編で、麻薬のような結末を書く作家・小川洋子が訳したのだから、もう、この深みから抜け出せないのは、当たり前。
大好きな『ミーナの行進』に出てくる一冊だというのも、私を特別な気持ちにさせる。
大人の絵本として出版されたこの本。絵も、また不思議な雰囲気で良かった。
すべてのページに描かれた「蝶」は、何を意味していたのだろう?

『魔法使いのチョコレートケーキ』

2007-07-17 12:04:47 | わたしの読書
『魔法使いのチョコレートケーキ』
マーガレット・マーヒー(作), 石井 桃子(訳), シャーリー・ヒューズ(画)

この春。入学・進学祝いにと、友人や先輩の子どもたちに本を贈りました。
ことり文庫さんで、素敵な本を選んでもらって・・・。
その中に、この本がありました。

しばらくして、プレゼントした子どもたちから、お礼の手紙が届いて(女の子ってマメですね。筆不精の息子を持っているせいか、とても羨ましくなりました)、どうしても、自分でも読みたくなってしまいました。
図書館から届いた『魔法使いのチョコレートケーキ』。
これは、『マーガレット・マーヒーの第一お話集』『第二お話集』『第三お話集』の三冊の中から、石井桃子さんがお好きな、ふしぎなことの出てくるお話を選んで、訳出したものだそうです。
×2の成人式を目前に控えたおばさん。少女に戻って、読了です。

この本を読んで思ったこと。
子どもは、いつだって、誰だって、魔法使いに出会えるってこと。
感じる心と想像力。
これさえあれば、あとは、
手助けをしてくれる、素敵な本があれば、それだけでいい。

でも、大人になってしまった私には、魔法は、かからない。
魔法使いに、魔法をかけてもらっていた頃を思い出して、懐かしく、切なくなることしかできなくて、それが、とてもとても悔しかった。
子どもたちに、激しく嫉妬なのです(笑)

でも、私にも、魔法使いに出会わせる手助けは、してあげられる。
この本を、子どもたちにプレゼントして良かった。
子どもたちは、魔法使いに出会えただろうか?

お気に入りは「葉っぱの魔法」と「遊園地」「幽霊をさがす」。
子どもの頃に、こんな魔法に、出会ったことがあった気がするの。
そんな頃に、この本に出会えていたら、もっと、素敵な魔法が起こっていたかもしれないな・・・。
そう思ったら、ちょっと残念。

『友だちは無駄である』

2007-07-11 13:31:11 | わたしの読書

『友だちは無駄である』 佐野洋子

この題名を読んだ瞬間に、ノックアウト!
この人のエッセイは、何を読んでも、何回読んでも、本当に面白い!!
しかも今回は、谷川俊太郎氏とのインタビューが、軸になっているのです。
この二人がおしゃべりして、面白くない訳がない。

佐野洋子さんのエッセイでは、いつも、彼女の幼い頃の思い出が、生き生きと描かれるのだけれど、それを読む度に、私は、自分の幼い頃を思い出して、つい、自分を重ねてしまう。
もちろん、生きてきた時代は、かなり違う(というか、母親ほどの年の差)。
それに、大人しかった(たぶん)私は、彼女とは、正反対に近い性格だったと思う。
なのに、彼女の幼い頃の話を読むと、「そうそう。そうだよねー。楽しかったなあ。」とか、「そうそう、そういうの嫌だったよ」と、頷いてしまう。
大人しい子も、そうでない子も、子どもの頃の思い出は、案外、同じだったりするのかもしれない?

木を登り、そこらじゅうを駆けずり回り、おしゃべりをし、意地悪をし、苛められもした。
子ども独特の噂ばなし、おまじない。そして、小さな冒険?の数々。
純粋で残酷で、目の前の「今」を精一杯生きている。
いつの時代も、どんな子どもも、みんな同じなのかもしれない。

「友だちは、無駄である。」
「でも、無駄なことが、どんなに大切か。」

彼女のメッセージが、胸に響いてくる。
これは、中学・高校生向けに企画された本なのだそうだ。
(だから、他のエッセイよりも「毒」が少なかったのか!)
まさに、無駄なことに夢中な頃の人たちが読むと、いったい、どう感じるんだろう?
おばあちゃんからの応援歌・・・って感じかしら。

この本の解説に、イジメのために自殺を選んだ子どもたちを報道するマスコミや、それに乗せられて騒ぎ立てる大人たちについて、書かれてあった。
それを読みながら、ぼんやりと考える。
この本は、中学・高校生だけでなく、大人にもおススメ・・・。きっと、おススメ。

「友だちは、無駄である。」
「でも、無駄なことが、どんなに大切か。」
私を含め、それを忘れてしまっている(判っていても、ついつい、余計なことを言ってしまう)大人は、結構、たくさんいるもの。


『ポーのはなし』

2007-07-08 13:33:55 | わたしの読書

『ポーのはなし』 いしいしんじ

究極のいしいしんじ、ここにアリ。

コノヒトノ アタマノナカ ハ ドウナッテルノダ?

物語の序盤。ずっと、そのことを考えながら読んでいました。
すごい。すごすぎます。
あまりの凄さにあてられてしまい、途中、気持ち悪くなってしまった程で、
「面白いけれど、絶対に、この本は、再読しないだろう。」
と、心に誓ったほどでした。

うなぎ女の息子・ポー。
何よりも純粋で無垢で、ゆえに、何よりも残酷で邪悪。
純粋と邪悪は、紙の裏と表のよう。知と痴は、紙の裏と表のよう。

ポー。うなぎ女。泥。川。海。雨。穴。ひまし油。メリーゴーランド。
女ぬすっと。犬じじい。ウミウシ娘。鳩。白いウナギ。そして、空。

個性豊かな登場人物たち。
意味ありげのそれらの登場人物が、何の隠語なのだろうかと考えては、
また、物語の波に飲み込まれていく・・・ということを繰り返す読書でした。
美しい「嘘」の世界という人もいるかもしれない。
でも、私は、作られた世界だとは思えない。ポーの世界は、確実に、
いしいしんじの頭の中に存在している。そして、今、私の頭の中にも存在する。
例え、物語を忘れてしまっても、この感覚は、一生私の中に残る気がする。
うなぎのぬるぬるとか、泥の臭さとか。そういう感覚が・・・

ポーが、どうして愛するウミウシ娘を失ってまでも、海底の温泉を知らせたのか?
(そんなに心を許した訳でもない漁村の人々を救うために、どうしてそこまでしたのか?)
ポーの「償い」とは、何だったのか?
ポーの存在とは、何だったのか?
白いうなぎは、なぜ、うなぎ女ではなく、犬じじいの元に戻っていったのか?

後半。それらの疑問が渦のように私を取り巻いて、今も離さない。
あれだけ、もう二度と読まないと思って読んでいたのに、いつか、必ず再読してみよ
うと思って、本を閉じました。

この本。きっと、好きか、嫌いか(or意味わかんない)にしか、分かれようがない本。
究極のいしいしんじ、読みました。


『かはたれ』

2007-06-29 10:15:00 | わたしの読書

『かはたれ』 朽木祥・作 山内ふじ江・画

マーガレットさんのブログで出会った一冊。
これは、両親と兄弟を失った子河童・八寸と、母親を亡くした女の子・麻の心の物語です。

母親が亡くなってから半年。寂しいながらも、父親と犬と一緒に、静かに暮らしていた麻。ところが、ある日、それを狂わせてしまう事件が起こります。
先生が、「綺麗でしょう」と言って持ってきたフリージア。
フリージアが美しいのは、先生が「きれい」と言ったからなのか?先生が言わなかったら、美しいと思えるのだろうか?美しいとは、どういうものなのか?
麻の中の価値観が、大きく揺らぎだすのです。そして、いつしか、自分の心を見失って・・・

価値観って何なのか?始まりは、どこからきているのか?
私も、しきりにそのことを考えたことがあります。「青」は、「あお」という名前でなかったら、どんな風に見えるのだろうか?動物の名前は?と考え始め、きりがなくなってしまったことを覚えています。
そう考えると、世界のすべてが、なんだか、違うもののように思えたりして、頭がこんがらがってしまったのです。堪えられなくて、母に質問しましたっけ。
しかし、クールな母は、いつものごとく、私の無理難題に「くだらないことばっかり、考えてるんじゃないの!」と一蹴(笑)。いつも、このパターンそんな質問ばかりしてる女の子だったから、もう、呆れていたのかもしれませんね。
けれど、私は、それ以上悩むことなく、そのうちに、すんなりと「青」を「あお」として受け入れることが出来ました。
しかし、麻は違います。
一度、揺らぎ出した価値観は、もう、自分では、とりもどせなくなってしまいます。

主人公の少女・麻の心の叫びが、ずんずんと迫ってきて、「なんとかしてあげたい」そんなことを考えて・・・・「だれか、麻の心を助けてあげて!」と、叫びだしたくなりました。
でも、大丈夫。最後に、ちゃんと、麻の心は救われます。救うべき人の手によって。

自分の価値観の元は、親から受けてきた愛情「そのもの」だったのだと再確認でき、ほのかな幸せを感じられる一冊でした。
けれど・・・・・・。この本を子どもが読んで理解できるのか?と問われたら・・・それは、よくわかりません。難しいような気もします。
でも、
成長の過程で、自分の根っこを探そうともがいている子どもたちに、すすめてあげたい・・・そんな気がしました。


『まほろ駅前多田便利軒』

2007-06-22 13:20:57 | わたしの読書

『まほろ駅前多田便利軒』 三浦しをん

あのハチャメチャエッセーの後の小説。興味津々で借りてきました。

う~ん。
面白いんだけれど、漫画みたい。
人物設定も物語も、かる~い漫画を読んでいるようでした。もしくは、大人版「コバルト文庫」?
直木賞作家ということで、違うイメージを抱いていたので、ちょっと驚きです。
でも、面白いことは、面白かった。
次のページが読みたくて、やめられなかった位だもの。
テレビドラマを見ているような、スピード感もありました。

それにしても、三浦しをんさん。小川洋子さんのエッセイを読んだ後、あまりに普通の人で驚いたのとは、逆バージョンです。
エッセイでは、どう考えても普通じゃない(笑)しをんさん。
小説の方は、意外にも、「普通に」楽しかった。変な誉め方


『クローディアの秘密』

2007-06-19 11:57:09 | わたしの読書

『クローディアの秘密』 E.L.カニグズバーグ(著), 松永 ふみ子 (訳)

『ロールパン(ベーグル)チームの作戦』に続いて、『クローディアの秘密』を読みました。
カニグズバーグのすっきりとした文章は、読みやすく、軽快で、読み手を飽きさせることがありません。
ハラハラドキドキ
児童文学と侮ることなかれ。私など、結末が知りたくて知りたくて、いてもたってもいられなくなり・・・いつもの、ちょっとだけ最後・・・をやってしまいました。
どうして、我慢できないんだろうなあ。私ったら、もう

さてさて、どんな物語かというと・・・・
11歳のクローディアは、優等生の自分にも、両親の自分に対する態度にも、もう飽き飽きしていました。そして、家出をすることを計画するのです。相棒は、ケチでお小遣いを貯めることが大好きで、ちょっとユーモアのセンスもある弟、ジェイミー。
お風呂にも入りたいし、下着は毎日取り替えたいし・・・だから、森の中になんて家出するのは、絶対に無理。そこで、家出先に選んだ場所は、「メトロポリタン美術館」!!!
最初は、隠れるスリルを楽しんでいたクローディア。ところが、その興味は、いつしか、美術館が新たに入手した「天使の像」に傾いていきます。
果たして、「天使の像」の作者は、ミケランジェロの真作なのか?その謎を解くことで、クローディアは、違った自分に変われるのではないか?と考え始めます。
果たして、「天使の像」は、ミケランジェロのものなのか?クローディアは、自分自身を変えることができるのか?

子どもなら、誰でも憧れる?であろう家出。
クローディアも言っていますが、計画を立てる所までが、一番、面白いのですよね。
小学生の時に立てた、自分の「家出」計画を思い出して、本を読んだ後、しばし、思い出に浸ってしまいました。

もちろん、海と山しかない田舎に住んでいたので、港のそばにある洞穴(防空壕?)に隠れること位しか考え付かなかったのですが、一度、下見をしに行ったら、ものすごく怖くて、とんで帰ってきてしまったという情けないオチ。
もう1つ、家の天井裏(と言っても、今にもツブレソウな古い家だったので、ロフトなんていう素敵なものではありません)に、ずっと隠れて「心配させてやろう」と企んだこともありました。
おやつを持って、埃だらけの屋根裏の梁の上に座って、みんなが騒ぎ出すのを待っていたのですが、結局、夕方になる前に怒りが収まってしまい・・・未遂。

唯一、実行したのが、来るべきその時に備えて(いつ、決定的瞬間が訪れるか、判りませんから)「食べ物を確保」するということでした。
クローディアは、こそこそ食べ物を調達しておくなんて、そんな野暮なことはせず、お金持ちの弟を選んで連れていったのですから、なんて、賢いんでしょう。私ときたら、ビニール袋にお菓子を入れて、裏庭に穴を掘って隠すという、なんとも、浅はかな計画。
実際に、穴に埋めたところまでは記憶に残っているのですが(お菓子が、土の下に隠れていく映像が、しっかり頭に焼き付いているのです)、あの後、途中でやめたのか?そのままにしておいたのか?掘り返して食べたのか?覚えてないのです。
どうしたんだっけなあ。やはり、計画までで、胸が一杯ということなんでしょうか。

さあ。こんなことを考えていたら、気になって仕方がない。
「息子は、家出を計画したことがあるのか?」
知りたいなあ。教えてほしいなあ。
毎日、寝る寸前まで身体動かしていて、のび太君も顔負けの早さで寝てしまう息子だから、そんなことを計画する時間など無いだろうなあ。いや・・・まさに今、家出計画の真っ最中だったりして
あと10年位したら、教えてくれるかもしれない。楽しみだなあ~。10年後


『海』

2007-06-15 10:07:42 | わたしの読書
『海』 小川洋子

これぞ、小川洋子という短編集でした。
不思議で、ゾワゾワする恐ろしさがあって、それなのに、すぐ隣で起こっていそうな物語。『ミーナの行進』は、今のところ、小川さんの作品で一番好きだけれど、やっぱり、彼女の短編集には、長編とは違う魅力があるなあ。
特に、彼女独特のラストは、どの作品においても、最高のインパクトです。ラストを読み終わったときに生まれる、なんとも言えない空虚感。これに、いつも参ってしまう。まるで、麻薬のようです。

『アンネの日記』にまつわるエッセイを読んだとき、小川洋子という人は、なんて、普通の女性なんだろうと、拍子抜けしてしまったのを覚えています。
でも、普通の女性だからこそ、こういう、不思議空間を作ることが出きるのかもしれないなあ。
耳をすませて、目をこらして・・・当たり前の風景を愛おしく感じることが出きる人だからこそ、日常に潜む不思議や愛や悪を、こんなにもリアルに描けるんじゃないかなあ。

基本的に、外国文学を除き、自分より年下の作家と女流作家は読まない人でしたが、それを見事に打ち破ってくれたのが、小川洋子さん。それどころか、いつの間にか、ファンになっています(笑)
さあ、次は、何を読もう。

この短編集の中の一番のお気に入りは、『ガイド』でした。

ミルリトン探偵局

2007-06-02 20:21:04 | わたしの読書
『夜に猫が身をひそめるところ Think―ミルリトン探偵局シリーズ〈1〉』
『世界でいちばん幸せな屋上 Bolero―ミルリトン探偵局シリーズ〈2〉』

吉田 音

様々な品物を持ち帰ってくる、Think という名の黒猫。あるときは、16個のボタン、あるときは、映画の広告、そして、あるときは、チョコレートの包み紙だったりする。音は、それらを元に、Thinkが、それらの品物をどこから持ってきたのかを推理する「ミルリトン探偵団」を結成するのでした。
これは、ミルリトン探偵団の推理と、その品物の持ち主たちの物語です。

シンクが持ってくる品物以外にも、いくつもの小さなキーワードが、別々の物語にちりばめられて、それぞれは全く違う物語なのに、実は、大きな1つの物語になっているという、不思議な本。
それらのキーワードがツナガル度に、胸がキュンとして、なんだか、温かい気持ちになります。ああ、人は、知らない誰かと、知らず知らずのうちに、ツナガッテルものなんだなあ。なんて素敵なんだろう。
この本は、そんな黒猫の魔法にかかったような本なのですが、なんと驚いたことに、読者である私にも、素敵な魔法をかけてくれました。

まず、第一の魔法は、この吉田音が暮らしている場所・豪徳寺。
豪徳寺は、まだ娘がお腹にいるときに行った、絵本屋さん・ことり文庫さんのお隣の駅なんです!
最初から、この本に夢中になってしまったのは、まずは、この魔法からでした。
豪徳寺は、猫にまつわるお寺なのだそうで、猫観音を祭る招き猫殿があるらしいのです。珍しいですよね。いつか、行ってみたいと思っていた場所だったのです。
ああ、私も、ツナガッテル!

そして、最後の最後に、もう1つのサプライズ。物語を結ぶキーワードの1つが、『鏡の中のアリス』だったのです!!
この本を妹から借りたのは、実は、もう3ヶ月も前。あの時、読み始めていたら、このサプライズには出会えなかったはず。(アリスを再読したのは、ごく最近ですから)
今、読むように、きっと、魔法がかけられていたに違いないのです!

大人になっても、こんな魔法をかけてもらえるのだから、やっぱり、読書はやめられない。そんなことを思った、今回の読書なのでした。
ああ、早く、第3弾が出ないかなあ~。

『夜に猫が身をひそめるところ』では、『ホルン奏者』。『世界でいちばん幸せな屋上』では、『世界でいちばん幸せな屋上』と『ボレロ』が、お気に入り。どの物語の登場人物も、ちょっぴり孤独を抱えていて、でも、どの人も幸せだっていうのが、とてもいい。

息子くんとのアリスは、残すところ、あと一章。裁判もクライマックスを迎えました。

『猫の建築家』

2007-05-26 13:26:43 | わたしの読書

『猫の建築家』 森 博嗣 ・佐久間 真人

私の実家では、猫を二匹飼っている。白に黒のブチ猫の姉妹だ。
猫は、本当に不思議な同居人だった。
餌は貰うけれど、決して媚びない。
猛然と抗議してきたかと思うと、私が、落ち込んでいるときには、どこからともなく現れて、体をこすりつけて慰めてくれたりもする。
そんな猫たちが、窓の外に拡がる空を見上げ、何やら思案している姿を思い出す。
まるで、何かを思い出しているかのように、目を細めた猫たちの、優しい二つの瞳を思い出す。
彼らは、何を考えていたのだろう?何に、想いをめぐらせていたのだろう?

本のページをめくりながら、何度も、あの愛すべき猫たちの姿を思い浮かべた。
そうか。猫って、建築家であり、哲学者なんだね。
佐野洋子さんの絵本にもあるけれど、猫って、本当に、何回も生まれ変わっているに違いない。だから、その哲学は、重く、深く、とても、人間なんて敵わないのだ。

『少し変わった子あります』のミステリー作家・森博嗣さんと、画家・佐久間真人さんの紡ぎあげた物語。
これを読んだ人は、道を歩く猫に出会ったら、きっと振り返ってしまうはずです。
空を見上げている猫のとなりに立って、一緒に見上げてしまうはずです。
そう。そこに隠されている真実を探して。


『ノーム』

2007-05-23 19:28:13 | わたしの読書
『ノーム』
ヴィル ヒュイゲン(著),  遠藤 周作, 寺地 伍一, 山崎 陽子(翻訳), リーン ポールトフリート(絵)

小学生の頃、学校の図書室で、佐藤さとる氏の『だれも知らない小さな国』という本に出会った。そして、その瞬間から、コロボックルの虜になってしまった。
このシリーズが大好きで大好きで・・・・・。おかげで、空想ばかりしていた、夢見心地の少女は、毎日、コロボックルを探すことになったのでした。

足の早いコロボックルを見つけるために、さっと振り返ったり
「いつかきっと、選ばれた人になるんだ(コロボックルは、選ばれた人間にだけ、姿を見せるのです)」と心に決め、母親の手伝いをしたり
悪いことをしそうになった時(妹に意地悪するとか)には、自分をたしなめたりもした

(ちなみに、コロボックルの他にも、地底人を信じていて、これまた、よく穴を掘っている子どもでした。
鏡の向こうにも、人が住んでいると信じていたし・・・・・
『霧のむこうの不思議な町』を読んだときには、天気が良いのに傘を持ち出したりしてね。行きたかったな・・・不思議な町。
今考えると、なんて変な子だったのだろう。実は、息子の上をいっていたかも? )

さて、残念ながら、選ばれた人になれなかった私は、コロボックルと会って話すことは出来なかったのだけれど、心の中には、ずっと、小さい人が住み続けています。これは、その小さい人の仲間、ヨーロッパ・北アメリカに生息している「ノーム」についての研究書!?です。
またまた、ことり文庫さんのブログで見つけてしまいました。

私の心の中に住んでいるコロボックルとは、ちょっとイメージが違うところもあるけれど(何しろ、私の中のそれは「村上 勉 氏の挿絵」そのものですから)、それは、人種の違いなのだと勝手に解釈。
そうかあ。小さい人は、世界中にいるのですねえ。知らなかったなあ。
今度は、世界の小さい人の物語を読んでみようかな。
そして息子にも・・・・・。そろそろ、読んでも良い頃かなあ。私の宝物の本

『不思議の国のアリス』

2007-05-20 13:24:59 | わたしの読書
『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル (著), 脇 明子(訳)

少しずつ、岩波少年少女文庫を読み進めています。
子どもの頃、読んだことがある本もあれば、題名すら知らなかった本もあり、それは、なかなか楽しい読書です(全部読むには、一生かかるかもしれませんから、一生の楽しみですね)。
今回、借りてきたのは、『不思議の国のアリス』。
昔むかしに読んだことがある一冊ですが、その後、アニメなどでも見ているので、記憶のどれが原作のものか、アニメのものか、さっぱり判らなくなっていました。
読み終わってから、「あれ?ハンプティ・ダンプティが出てこなかったぞ?」なんて、思ってしまった程。えへへ。ハンプティ・ダンプティは、『鏡の国のアリス』ですよね。駄目だなあ。

それにしても、この本。こんなに面白かったんですね。
驚くほどのナンセンス。驚くほどのブラック・ユーモア。
特に、ブラックの方は、これは、日本では在りえないなと思う程の強烈さ。お国の違いって、あるもんだなあと思う。言葉遊びも、こんなに手が込んでいるとは、知りませんでした。

この話を妹にしたら、シェイクスピアの作品にも、言葉遊びがたくさん隠されているのだそうだ。
そして、イギリスで、ブラックジョークといえば、「ミスター・ビーン」を思い出します。大好きで、ビデオにとったこともあったっけ(笑)。そういえば、インテリの人がコメディアンになるという話も聞いたことがある。イギリスって、ジョークが文化なのかしら

日本の子どもには、たぶん・・・この本にちりばめられた言葉遊びと、ブラックを理解するのは難しい。でも、ナンセンスは、大人の何倍も楽しめるだろう。
これは、是非、子どものうちに一回読んで、大人になってから、再読すべき本だなあと思いました。
うん。アニメでは、このナンセンスの強烈さは、半分も伝わらないと思うなあ。
訳者の方が、音にして楽しめるように訳したと書かれていたし。ふ~む。
貸し出し期日を延長して、息子に読んでみようかな。

ということで、早速、息子と読み始めました。息子は、毎晩、大笑いとツッコミ、ズッコケに忙しくしています
続編は『鏡の国のアリス』。
アマゾンの書評に、「ブラックが過激なので、子どもには読ませるかは、親御さんが判断した方が良い」と書いておられる方がいたので、私の方は、お先に『鏡の国のアリス』の方を、一人で読んでみようと思います。
『不思議の国のアリス』でも、赤ちゃんをぶん投げちゃったり、すぐに死刑になっちゃったりと、かなり過激なんですけどね(笑)。
それをジョークととれる寛容な心を、育てたいとは思っていますが・・・

『見えない誰かと』

2007-05-16 13:40:32 | わたしの読書
『見えない誰かと』 瀬尾まいこ

『図書館の神様』という題を目にしたことがあり、いつか読んでみたいと思っていた。
でも、なんだか手にとる機会がなくて、なぜか、先にこの本がきました。初めて読む瀬尾作品。これは、彼女の中学校教師としての日常を描いたエッセイ?
・・・エッセイと言うには、あまりに美しすぎる気がするのは、私だけでしょうか。

さすが、国語の先生。文章が、とても美しく読みやすかったのですが、、、。
内容も美しすぎて、ちょっと、毒のあるエッセイが好きな私には、NG。
こんな素敵な先生がいた、こんな素敵な学校があった、こんな楽しい生徒がいたという話が満載で、彼女の豊かな生活が、手にとるようにわかるエッセイでは、あるのですが。。。これを読んで、面白いか?と言われたら・・・
やっぱり、椎名誠のようにハチャメチャか、佐野洋子のように超・毒々しいか、村上春樹のツッコミどころ満載のエッセイが好みです。

彼女の人柄が伝わってくるエッセイなので、小説を読んで、彼女を知りたいという所から入っていたら、また違った感想があったかも。作品の背景が感じられて、楽しかったかもしれない。
でも、読んでしまったものは、仕方ない。
今度は、是非、小説の方を読んでみたいと思います。