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ぼちぼち日記

大切な日々のこと

『ロールパン・チームの作戦』

2007-05-08 11:25:54 | わたしの読書

『ロールパン・チームの作戦』
カニグズバーグ(著),  松永 ふみ子 (翻訳)

そらこさんのブログで紹介されているのを見て、どうしても読みたくなった一冊。
紹介されていた本は『ベーグル・チームの作戦』(アマゾンの画像でも)。でも、私の借りてきたものは、『ロールパン・チームの作戦』。きっと、ベーグルが、日本では、ほとんど知られていなかった時代の訳なのだろう。昔から読まれてきた、名作なのでしょうね。ちょっと古い?いえいえ、物語は、ちっとも色あせていないのです。
それどころか・・・最高に面白かった!

カニズバーグの原文が良いのか、訳が素晴らしいのか、まずは、その文章の虜になってしまいました。
パリッとした清潔なワイシャツのような・・・そんな文章。一行読んだだけで、相性がピッタリだと確信しました。そして、グイグイと引っ張られるようにして、あっという間に、読了。もう少し、読んでいたいような、そんな気にさせられる文章でした。

さて、物語は、どこにでもいる、ちょっと生意気な12歳の男の子から見た、家族、友だち、女の子、社会。主人公の少年が所属する野球チームの、ある年のリーグ戦を軸にして、それが、見事に描かれています。
面白かったのは、主人公が、常に大人たちを観察しているところ。ああ、私も、そうだった。寝たふりして、親の会話を盗み聞きしたり、あれこれ分析したり。

けれど、親となった私が、一番おもしろいと感じたのは、やはり、物語に描かれた親子の関係。
何より、素敵だったのが、主人公のお母さんでした。最初は、感情的だし、言いたいことはストレートに言うし、なんて母親なんだろうと思ったのですが、これが、本当に素敵なお母さんなのです。
一番気に入ったシーンは、プレイボーイという(裸の女の子が出てくる本ですね)雑誌を巡る騒動が持ち上がったときの、彼女の毅然とした態度でした。親に隠し事をするなんてと、とがめるおばさんに、きっぱりと言い放つのです。
「・・・どんな子でも何か母親にかくすものが必要なのよ。・・・・・あの子がベッドのマットレスとスプリングの間にじぶんだけのコーナーを持ちたいなら それもいいと思うわ。」と。

胸が、チクリと痛くなりました。
幼い、幼いと思っていた我が息子だけれど、最近、「親には見られたくない」という感情が芽生えたらしいのです。それは、まだ、たかが宿題で書かされた詩だったりするのだけれど。でも、以前は、そんなことなかった。
「見せて。」「見せたくない。」「いいじゃない~」「いやだ。」
つい最近、そんなやりとりをしたばかりだったのです。これから、もっと増えていくのであろう、息子の秘密。すべてを知っていて当然だった頃は、もう、終わりなのかもしれません。

まだまだ、善悪の基準が曖昧な息子。「知らなくていい」の線を、どこで引くのか、これは、親の裁量なのだろうなあ。そう思えば思うほど、この主人公と母親のような関係が築けたら、どんなに素敵だろうと、思わずにはいられない。また、無関心のようでいて、要所要所で、的確なアドバイスしてくれる父親も、とても素敵だった。
親として、憧れの一冊。そして、自分の12歳の頃を思い出す一冊でした。

息子が読んだら、どう感じるだろう?これも、それを強く思った一冊でした。まだまだ、冒険ものや、事件が巻き起こる物語が大好きな息子。6年生になったら、勧めてみようかしら。
朝日新聞の「天声人語」を読むのが好きなのですが、以前、カニズバーグの『クローディアの秘密』が、そこで紹介されていました。ずっと読みたいと思いつつ、そのままになっていた一冊。カニズバーグの本。次は、これを読もう!!


『裏庭』

2007-05-04 15:30:30 | わたしの読書
『裏庭』 梨木 香歩

最近の梨木作品から入った私には、ちょっとビックリの一冊でした。
この方は、こんなファンタジーも書く、作家さんだったんですね。
正直に言えば、最近の作品の方が「好き」なんですが、なんやかや言って、最後まで読んでしまった所、嫌いじゃないのだと思います。

でも、何となく、文章の完成度がイマイチという気が。
梨木さんの作品は、美しく、まとまりすぎている位のイメージだったので・・・
なんとなく・・・いつもと違う!という感じを受けました。これは、個人的な、文章との相性の問題なのだと思いますが。
それに、外国のファンタジーを思い浮かべさせる裏庭シーンも、やはり、なんとなく、壮大さにかける気がしたのは、エンデを読んだばかりだからでしょうか。裏庭のキーワードとなる竜の設定も、よく判らないまま終わってしまいました。

それでも、読了。面白かったことは、面白かったのです。
特に、登場人物の設定や描写は、とても魅力的でした。そこは、相変わらずの梨木作品。彼女の描く女性(女の子)は、強くて、個性的。
何がいいって・・・・・。最後に、必ず、強くなって立ち直るのが好きです。
弱い女の子代表だった私。読み終わると、昔の「自信がなくて、コンプレックスの塊だった自分」が救われたような気がするのです。少女の頃に、この作家さんに出会った女の子は、幸せでしょうね。

「庭」というテーマだったことから、バーネットの『秘密の花園』という本を思い出しました。
中学1年生の時に読んで、あまりの面白さに、本の世界にのめり込んだ思い出が。
どんな物語だったんだろう?あんなに好きだったのに、内容を忘れてしまうなんて。
再読してみたくなりました。いつか、岩波少年少女文庫を読破したい!という野望を持っていたのですが、これは良い機会かも。むふふ。

『旅のコラージュ』

2007-04-29 19:00:25 | わたしの読書
『旅のコラージュ』 les deux

表紙に「バルト3国の雑貨と暮らしの本」とあった。
バルト3国って?
エストニアの名前は、すぐに出てきたけれど(なんとな~くという感じで)、リトアニアとラトヴィアの名前は出てこなかった。バルト3国という言葉をきいたのは、高校の地理以来かもしれないなあ。その位、縁遠い国だ。
ただ、地図帳の中、ロシアの先に、くっつくようにして存在している3つの国の姿だけは、すぐに思い浮かぶ。どんな国なのかも知らないけれど、大国の先に、寄り添うようにして存在している3つの国の形を、はっきりと覚えている。へんなの。

これは、娘を出産する時に、病院に、差し入れしてもらった本。
どこのページから読んでもいいし、ちらりと見るだけでも楽しいからと。
残念ながら、病院では、傷の痛みがひどくて、本を開くどころではなかったのだけれど、家に帰ってきてから、パラパラとめくっては、楽しんでいます。
最初から最後まで、色鮮やかな写真で綴られている本。独特の文化を持つ3つの国の風景と、かわいらしい雑貨が、目を楽しませてくれます。

特別、オシャレな訳でも何でもない、素朴な雑貨たち。
素朴な人々の暮らし、遠い異国の地の文化。北欧とも違う、ロシアでもない、独特の文化。
それにしても、寒い国ならではの色彩は、本当に、素敵だなあ。私の好きな、ニット雑貨が一杯あるのも、また嬉しい。
ああ。雑貨って、見ているだけで楽しいですね。これが、目の前にあると、全部買い占めたくなっちゃうから、本で見る位が、私には調度良いのかもしれません。
それにしても・・・。この地球には、私の知らない営みが、たくさんあるのだなあ。
それを感じる瞬間って、なんだか、ワクワク・ウットリしてしまう。

北欧、アイルランド、オランダ、オーストリア・・・赤毛のアンの島にも。ああ、スイスにも、もう一度行ってみたいな(新婚旅行でした)。行ってみたい国は、山程あるのだけれど、これまた、旅してみたい国が増えてしまったようです。
いつか、どれか1つにでも行けるのかしら?
今は、オッパイの間に、本をながめながら、しばし、行った気分
ときどき、娘を抱っこしながら、バルト三国に旅立つのでした。(すぐに、現実に引き戻されますが)

今日は、風がありましたが、良いお天気でした
そこで、娘と一緒に、今流行?のスリング(手作りの品をおさがりで貰いました)で、プチお散歩。先日、友だちに使い方を教えてもらったのだけれど・・・・・なんか、ちょっと違うような気がします。
ううむ。病院の待合室にあった育児雑誌では、とても簡単そうだったけれど、これは、慣れるまで時間がかかりそうです。

『リンさんの小さな子』

2007-04-18 11:43:00 | わたしの読書
『リンさんの小さな子』
フィリップ クローデル(著) 高橋 啓(翻訳)

『子どもたちのいない世界』の不思議な読了感が忘れられずに、借りてきた。
何とも言えない独特の雰囲気が、物語から、文章から漂ってくる一冊。何だろう?この雰囲気は。フランス文学ならではなのだろうか?とにもかくにも、一行目から、その世界に引き込まれてしまった。
あとがきで、訳をされた方がその裏話をしているのだが、一読して、その「簡素で力強い文体」に驚嘆したとか。日本語になっても、その、淡々としているようでいて、グイグイと引っ張っていく文章は、まさに驚嘆です。

戦争で、家族と祖国を失った男・リンさん。残されたのは、小さな孫娘ただ一人だった。
そんな、遠く離れた異国の地に、難民として辿り着いた彼が出会ったのが、妻を亡くしたばかりの大男バルク。
一切言葉が通じない中で、言語を越えて通じ合う二人の男。温かい二人の友情、そして、訪れる悲劇・・・そして

この物語には、具体的な国の名前は、一度も出てこない。ヒントになるようなものもない。作者は、あえて国を限定しないことで、この世界のあらゆる所で起こっている悲劇を描きたかったのだろうか。

ラストに向かうにつれ、悲劇的な予感が頭をよぎる。鼓動が激しくなり、もう、普通に読んでいることに耐えられなくなってしまう。そしてとうとう・・・悲劇でないことを期待して、ラストのシーンのページをめくってしまった。けれど、「いやいや、こんなに、しっかり読んだら駄目。面白くなくなっちゃう」と思い直して、元のページに戻る。
これを、何度、繰り返しただろう?何度めかに、動揺して、ちっとも物語を読み進められていない自分に気づいた。深呼吸。動揺が始まったページに戻って、最初から、ゆっくりと読み始めた。
そして迎えるラストは、もう、涙でくもって、よくページが見えないほどでした。

文体も、国籍のない物語も、何もかもが不思議な本。とにかく、おもしろかった。惹きつけられた。
この作者、もう一冊『灰色の魂』(4・23訂正しました)という、こちらはサスペンスの本が出ているようです。ただ、調べてみたら、図書館には置いてない。ああ、読みたいなあ。

息子くんとのエーミール再読(講談社・青い鳥文庫)は、とうとう、最終巻にやってきました。
長いなあ~。でも、最終巻は、やっぱり特別におもしろい!昨日は、エーミールが酔っ払って、大騒動を巻き起こす物語。大人でさえ、こんなに面白いんだから、憧れの目で読む子どもは、どんなに面白いだろう。あと少し、楽しみながら読みましょうっ!
読み聞かせをしているときは、娘は、パパに抱っこ。いつも、寝グズリ(最低3時間は、さわいでいます)の真っ最中で「ひーひー」泣いている中、息子と集中して読んでいます。
パパが夜勤のときは、最後の手段、オッパイをあげながら作戦。
先日は、エーミールに夢中になりすぎて、終わったときには、オッパイが、すり切れんばかりに痛くなっていました
寝グズリの最中は、何時間でもオッパイを吸っていられる娘。おかげで、一ヶ月検診では、体重が、退院時より1000g以上増えていました。栄養指導問題なし!だそうです。が、どうなんだろう?その増え方の理由は。

『パタポン』『おはつ』

2007-04-12 15:06:09 | わたしの読書

『パタポン~幼い子の詩集①②』
『おはつ』 工藤直子

お気に入りのブログのコメントの中に、素敵な詩を見つけた。
これが、今の私の気持ちに、ぴたりとはまってしまい、もう、いてもたってもいられなくなった。

「あかちゃん」 まど・みちお
「おはつ」 工藤直子

この二つの詩。どうしても、活字になって印刷されているものを読みたくなって、早速、図書館のサイトで予約して、詩集を借りてきてもらった。借りてきた3冊の詩集。どの詩集にも、他に、好きな詩がいくつも見つかって、まるで宝箱のよう。
そう。詩って、宝物みたい。ひとつひとつが、キラキラ輝いているの。
これは、小説には、ないものだなあと思う。本当に、不思議。

何度も読み返して、気に入った詩をノートに書き写した。
そうだ!赤ちゃんのアルバムの最初のページには、「あかちゃん」と「おはつ」を書いて入れよう!そんなことを密かに決心。
気分が高ぶりすぎの私は、そのうちに、書くだけでは収まらなくなってしまった。
無性に、朗読したくなったのだ。小学生のときみたいに、大きな声で。
旦那さんが会社に行った隙に、眠っている娘の横で、朗読!!

いやあ。詩集に、こんなに心沸き立ったのは、久しぶりです。くすくす。
私ったら、子どもみたい。
でも、そういう詩が、一杯つまっている詩集なのです。この3冊の詩集は。
そう。この詩集のせいなのです。きっと。

そんなとき、思いがけない人から、出産祝いの小包が届いて・・・なんと、そこに詩集『おはつ』が!
シンジラレナイ!!こんなサプライズ、あって良いのだろうか!
嬉しいやら、ビックリするやら。
我が家に届いた『おはつ』には、素敵な物語が加わって、さらに、素敵な詩集になりました

詩を朗読しながら、小学生の頃、よく教科書にのっている詩を暗唱したのを思い出した。今でも覚えているのは、「太郎をねむらせ 太郎の屋根に雪ふりつむ. 次郎をねむらせ 次郎の屋根に雪ふりつむ」。色々な詩がのっていた教科書。どうして、これが私の中に残っているのかな?そんなことを考えるのも、またオモシロイ。


『ミーナの行進』

2007-04-09 11:19:01 | わたしの読書
『ミーナの行進』 小川洋子

「出産後は、目を使っちゃ駄目だよ」
色々なところで言われた。そして、自分なりに決めた約束。「3月一杯は、読書禁止」。
そんな時に限って、図書館から、何ヶ月も前から予約していた本が、ようやく届いたりする。
なんとか3月一杯我慢して、4月1日からスタート!人気のある本は、次の予約がつまっているから延長が出来ない。かなり焦ってのスタートでした。

が、そんな心配は無用。あれよあれよという間に読了です。
読みやすいの一言につきます。いやいや、この作家さんとは、とことん波長が合うというのが、正解なのかもしれません。
ドキドキ・ワクワクで次を読むというよりは、す~っと文章が身体に入っていくカンジ。
読書中、ずっと、この心地よさを感じていました。

これは、13歳の主人公の少女が、富豪の伯母さんの家に預けられ、美しくも病弱な従妹・ミーナと暮らした一年間の物語。
誰にだってある・・・、そう、私にだってあった、美しくも切ない、少女時代。
読んでいる私も、すっかり少女に戻ってしまった。ハンサムな伯父さんにドキドキし、バレボールの選手に熱をあげ、図書館員のお兄さんに憧れを抱く。ミーナとの会話を楽しみ、台所のお手伝いを楽しみ、邸宅のシャンデリアにドキドキする。
いつの間にか、伯母さんの邸宅の住人の一人になっているような、この感覚。いいな。

コビトカバを始めとして、伯母さんの家に暮らす人々は、みな少しずつ変わっていて、孤独な人々。
小川洋子の文章は、いつも、こういう変わった者たち、ひっそりと生きている者たちへの愛情に、溢れている。「ブラフマンの埋葬」でも「博士の愛した数式」でも。
やっぱり、小川洋子の作品って好きだ。改めて実感した一冊でした。

本の好きなミーナのために、主人公が図書館で借りていく本も興味深い。どれも、受験か何かで覚えた?題名ばかり。だけど、恥ずかしながら、読んだことがない本たち。いつか、読んでみよう。
「はつ恋」ツルゲーネフ
「園遊会」キャサリン・マンフフィールド
「眠れる美女」川端康成

『子どもたちのいない世界』

2007-03-07 08:41:11 | わたしの読書

『子どもたちのいない世界』
フィリップ・クローデル
高橋啓 訳

いずれは大人になる子どもたちのために。そして、かつて子どもたちだった大人たちのために

最近の子どもたちはお話を鵜呑みにしたりしないが、それでもやっぱり子どもは子ども、かれらなりの苦悩や純真さ、疑問や希望をもっているものである。

不思議で、奇抜な20の物語がつまった一冊。
作者の上の言葉を、何度も噛み締めながらの読書となった。

先日、大好きな番組「英語でしゃべらナイト」を観ていたら、「日本人は、ジョークを理解できない」というテーマで、番組が構成されていた。たしかになあと思う。日本のお笑いは、外国のジョークとは、ちょっと違う。あの番組を観て「そんなことない!」と反論した日本人は、たくさんいただろうけど、私は、深く納得した。
もちろん、この本は、ジョークの本ではない。だけれど・・・

そんな違いを、なんとなく感じた一冊だったのです。
作者は、フランスの方。この違和感は、テレビで言っていた文化の違いによるものなのか?それとも、子どもの心を忘れないようにと思いつつも、すっかり忘れてしまっている大人の感覚のせいなのか?
何度も、この本と自分との間にある「壁」を意識して、悶々としてしまった。
(もしかしたら、子どもは、難なく受け入れてしまうのかもしれない。)

こんなに壁を感じた一冊なのに、不思議なのは、ちゃんと読了したこと。そして、その後も、気になる物語を、何度となく読み返してしまったこと。
読み終わったあとも、自分の中に生まれた「
説明の出来ない感覚」に、悶々としています。全く、理解できない感想文ですね。うふふ。
ある意味、とても面白い一冊だったのかもしれない。

この作者には、『リンさんの小さな子』というベストセラーがあるらしい。
怖いもの見たさ?
こんなに違和感を感じた本だったのに、こちらも読んでみたいと思いました。


『飛ぶ教室』

2007-02-26 15:45:23 | わたしの読書
『飛ぶ教室』
ケストナー(著) 高橋 健二(訳)

エンデを読み始めて、古典の児童文学に、すっかり魅せられてしまい・・・。今更だけれど、岩波少年少女文庫を読んでみようかと借りてきました。
実は、子どもの頃に、こういう文学作品に出会うチャンスがなかった私です。

高等中学校で暮らす、個性豊かな少年たちの学校生活が、生き生きと描かれた一冊です。
実業学校とのケンカ、上級生との確執。それぞれの少年が抱える心の問題、家庭の問題。多感な少年たちは、次々と、それらの問題に立ち向かっていきます。そして、尊敬できる先生との心の交流。
少年たちが、読者に語りかけてきます。本当の勇気とは?本当の正義とは?

ケストナーの名作と謳われている、この本。
実は、最初の方で、何度か挫折しそうになりました。
これぞ青春!という物語。あまりの爽やかさ、眩しさに、くらくらしてしまったのです。
「ごもっとも!わかるんだけど・・・・・。ちょっと、美しすぎて、眩しすぎて、ついてけないかも。」
そんな感じでした。ヒネクレテいるせいかなあ。
でも・・・何故か、最後まで読んでしまいました

不思議なのですが、結局、途中で本を置くことが出来なかった。グイグイと強く惹きつける何かが、あるようでした。強い力・・・。う~ん。その強さが、そのうち快感になっていたのかもしれません。
ガムをくちゃくちゃやっているうちに、その歯ごたえが、何とも快感になってしまい、やめられなくなってしまった感じ いやあ、ちっともわからない感想ですね(笑)

これは、青春真っ只中の息子に読んでもらって(一人で読むようになったらね)、感想をぶつけ合いたい一冊かもしれません。勇気について、正義について、息子と語り合う?なんだか、面白そうだなあ・・・なんて。
子どもと大人では、全く違う感想が生まれそう。男と女では、全く違う感想が生まれそう。そんな一冊でした。


『モモ』

2007-02-22 08:43:01 | わたしの読書
『モモ』
ミヒャエル・エンデ (著), 大島 かおり (翻訳)

ミヒャエル・エンデの作品とは、きっと波長が合うのだと思う。
どうして、この年になるまで読まなかったのだろう・・・今さら言い出しても仕方ないのですが、できることなら、もっと若いときに一度読みたかった。そして、仕事を始める時、母になる時、そんな節目に読み返したい一冊だと思いました。

時間どろぼうと ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語

表紙に書かれている、この文章を読めば、容易にストーリーは想像できてしまいます。きっと、この忙しい社会を風刺した作品なのだと。もちろん、その通りなのですが、物語の壮大さは、私の想像なんて、軽く飛び越してしまいました。
『はてしない物語』同様、風刺だとか、作者の想いだとか・・・そういうものが、物語の根底に、明らかに見え隠れしているにも関わらず、それが、全く気にならないのです。本当に不思議。エンデという人は、なんという作家なのだろう!!

そして何より、この作品が、1973年に出されたというのですから驚きです。
「時間がない」「ひまがない」。
私たち人間は、こんな前から、こんな言葉に縛られて生きてきたのだなあと、つくづく考えてしまいます。けれど、時間泥棒を根絶することはできなかった。脈々と、そして確実に、時間泥棒は、人間の心を蝕み続けてきた。
そして、今、まさに、時間泥棒の魔の手が、確実に子どもの社会にも及んでいるのかもしれません。時間泥棒たちは、「一番手ごわい相手」だと言っていた子どもたちの心にすら、とうとう、入り込むことに成功したのだ。そんな気がしてなりません。
「時間」を倹約する大人たちの手によってつくりだされた、この物があふれた社会の中で、確実に蝕まれていく子どもたちの心。

「教育再生」や「少子化問題」を考えている政治家の方々は、絶対に、この本を読んだほうがいい。そんなことを思いました。
そして、子どもに携わる仕事をする人たち、親となった人たち、物を与えることで、子どもを愛していると勘違いしている大人たちへ、是非とも読んで欲しい一冊。
『モモ』は、私の生活も子育ても、確実に、時間泥棒に蝕まれていたなあ・・・と、気づきを与えてくれました。本を閉じた後、なんだか心が軽くなった気がしたのは、きっと、気のせいではないでしょう。

『ワニ』『マジョモリ』

2007-02-18 09:57:19 | わたしの読書
『ワニ-ジャングルの憂鬱草原の無関心』
梨木 香歩(著) 出久根 育(画)

絵が、とにかく素晴らしい。美しい。
この物語の根底を流れる恐ろしさ、怖さを、さらに引き立てている気がして・・・。もう、釘付けでした。
主人公は、自分が一番、エゴイストのワニ。
ワニにとっては、兄弟ですら、自分を満たしてくれる獲物に過ぎない。そんなワニに、「自分は爬虫類の仲間なのだから、食べてはいけない。」と迫るカメレオン。
エゴイストの心の中に、生まれて始めて芽生えた疑惑が、彼を破滅させてしまう。彼を破滅させたのは、なんと、無関心。ああ、無関心のままでいたら、ワニは破滅しないですんだのか?
一体、何がエゴで、何が摂理なんだろう?人間社会を風刺しているような、そうでないような?読み終わった後、ぼんやりと考え込んでしまった一冊でした。

『マジョモリ』
梨木 香歩(著) 早川 司寿乃(画)

まるで、ハーブのような物語だなあ。そんなことを考えました。
本当に、透明感のある文章なのです。ミントの葉を噛んだような・・・、いえいえ、森からの風が吹き込んできたような、そんな感覚。
そして、日本古来から受け継がれてきた文化というか、感覚というか、そういうものを感じさせてくれる物語。。。これが、梨木作品の根っこなのかなあ~と思いました。
小説としては・・・
張られた伏線を楽しむ小説に慣れている私には、「ちょっと物足りないもの」を感じたのは事実なのですが、この不思議な時間を心地よいと思ったのも事実。
不思議な時間を感じてみたい時に(まさに、感じるという言葉が、私にはピッタリでした)、手にとりたい一冊です。

『銀のロバ』

2007-02-13 05:53:36 | わたしの読書
『銀のロバ』
ソーニャ・ハートネット著 / 野沢 佳織訳

お気に入りのブログで紹介されていたのを見て、気になっていた一冊。
なんと、図書館の飾り棚に、立てかけてあった。こういう偶然って、本当に嬉しい。まるで、本との出合いを演出してくれているようだ。うふふ。

海に近い森の中で、ふたりの少女が出会ったのは、盲目の兵士。
故郷に帰りたいと願う英国の脱走兵と、フランスの田舎で、平和に暮らしている少女たち。さあ、脱走兵は、無事に家に帰ることができるのだろうか?

少女たちと兵士との触れ合いが、物語を優しく包んでいる。
だからこそ、一層際立つ、その中に潜んでいる戦争の残酷さ、人間の愚かさ。その対比が切ない。人間の作り出す世界は、こんな矛盾に満ちているのだ。


ロバが教えてくれる、本当の勇気、本当の思いやり、本当の愛。
人間であることが、恥ずかしくなってくる。どうして、人間という動物は、こんなにも愚かなのだろうか?
それでも、少女たちの無垢な心は清らかで、強く・・・。やっぱり人間って、捨てたもんじゃないなあと思う。美しいなあと思う。ああ、ここにも、矛盾があるのだなあ。

これは、オーストラリア児童図書賞を受賞した作品なのだそう。
戦争の残酷さを描きつつも、同時に、人間の優しさや強さを教えてくれる物語には、絶え間ない紛争と貧困に満ちたこの世界に、ひとすじの光を与えてくれる気がした。

『少し変わった子あります』

2007-02-06 11:43:37 | わたしの読書
『少し変わった子あります』 森博嗣

題名も装丁も不思議だけれど、内容は、もっと不思議。
こういう本って、始めてかもしれない。なんて、静かなミステリーなんだろう。

大学教授である主人公は、後輩が失踪したことで、彼が通っていると言っていた、一風変わった料理店に行ってみようと思い立つ。
その店は、なぜか、予約のたびに場所が変わり、毎回違う女性が、食事に相伴してくれる。
女将さんの名前も知らない、店の名前も知らない。もちろん、一緒に食事した女性たちの名前も知らない。それなのに、なぜか落ち着き、安心できる・・・。
不思議な料理店で出会う「少し変わった子」たちが、主人公はもちろん、読んでいる者も不思議な世界に導いてくれるのだ。

読んでいると、ピンと張り詰めた空気が、本の中から立ち込める・・・・そんな不思議な感覚に襲われた。あまりに、清く、美しく、静かな、ミステリアスな世界。この不思議さは、どう表現したらよいのだろう。
その不思議なゾクッとした感覚が、また、たまらないのだ。
一章につき一人の「変わった女の子」が、主人公を迎えてくれるのだが・・・。私も、主人公と一緒に、彼女たちの作り出す不思議な世界に、じっくりと身を置きたい気持ちになり、一日一章を、ゆっくりと読みすすめていった。そして、その度に、日常生活に潜んでいる孤独について、ひっそりと考える。この本と過ごした数日間は、なんとも言えない、ミステリアスな数日間だった。
ラストには、何も起こらない、何も変わらない、そういう恐ろしさが待っている。
こうやって、人は、今まで懸命に生きてきた自分の人生を、絶ってしまうのかもしれない。なんて、思いながら・・・。

『からくりからくさ』

2007-02-03 06:19:13 | わたしの読書

『からくりからくさ』
梨木 香歩

図書館の返却コーナーに並んでいた一冊。
なんだか、本が「読んで」と言っているような気がして、借りてきてしまいました。うふふ。
予約したり、「これを読もう」と決めて借りてくるのも楽しいけれど、こういう偶然のめぐり合わせて借りてくるのって、なんだか楽しい。
そんな風にして、家に連れて帰ってきたのですが・・・。読んでみて、そうやって借りてくるのが、必然だったのだという気がしています。そういう、不思議な物語でした。

でも、正直に言うと、人間関係が複雑すぎて、理解するのが大変。 おまけに、とても緩やかに物語が進むから、最初は拍子抜け。 何しろ、ハラハラ・ドキドキの読書が続いていたから・・・。ギャップが、大きすぎたのです。
でも、静かに、静かに、染み渡ってくるような物語に、ついつい頁をめくっていました。

いや、それより何より・・・
私は、主人公・蓉子のような人が好きなんだ。 きっと。
静かで、野心なんてこれっぽっちも見せず、でも、足がしっかり地についている人なのです。蓉子は。生活を愛し、慈しむ術を知っている人。
自分とは、対極にある彼女に、ついつい惹かれてしまいます。

それに、物を作り出す仕事をする人たちも、好き。
この本には、物を作り出す人たちが、たくさん出てくるのです。 染色家であったり、織物を織る人であったり、画家であったり、人形作家であったり。
どんなに憧れても、自分には、そんな才能はないのだけれど・・・でも、そんな才能があったらどんなに素敵だっただろうと思わずにはいられません。きっとそういう人たちは、伝統とか歴史とか、血とか、自然の力とか・・・そういうものを感じながら、仕事をするのだろうなあ。

読み終わった今、 世代と場所を越えて受け継がれるものについて、この世界を動かしている「
目に見えない力」のようなものについて、想いを馳せています。 そういう不思議な力を感じて生きていくのって、いや、感覚を研ぎ澄ませていくのって、なんだか、素敵だなあ・・・。
なんだか、不思議な世界に足を踏み入れてしまったような、そんな気がした一冊でした。
不思議な物語で・・・ストーリーは、とてもまとめられそうにありません。興味のある方は、是非、アマゾンさんへ。
 息子と読書は、『大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる 』に入りました。途中、私の風邪で頓挫。今日から復活です。


『イリュージョン』

2007-01-27 06:39:50 | わたしの読書

『イリュージョン』
リチャード・バック 作
村上龍訳

夏目漱石を再読し、その面白さに感激した勢いで、この、懐かしの一冊を手にとりました。ボロボロになった一冊。どんなに引越ししても、持ち歩いていた本の中の一冊。
・・・・・正直に言うと、かなりショックを受けています。本にではなく、自分自身に。

始めて読んだのは、たしか、高校生のときか?大学生のとき。
頭を殴られたような衝撃だったはずなのに、 あんなに興奮して読んだのに、私の世界観を変えたかもしれない、とにかく、ものすごく影響を受けていた一冊だったのに・・・

今の私は、ものすごく冷静だった。
へえ~っ。ふ~んって感じで、読んでいた。 そうかあ。そういう考え方もあるね・・・と。
もちろん、間違いなく面白かったけど、これは、頭に残っている衝撃の一冊とは、別ものだ。
あの頃、何に、そんなに衝撃を受けたのかも、思い出せない。

ああ、友だちと明け方まで『イリュージョン』の世界を語り合ったっけ。
夜明けまで語った?この本で?ああ。何を、そんなに語り合ったのかさえも、思い出せない。
・・・大人になるって、ちょっぴり寂しい。
でも、もしかしたら、『イリュージョン』で語られている言葉は、すでに私の中の言葉になっていて、だから、衝撃にならなかったのだろうか?
・・・大人になるって、ちょっぴり不思議。

息子くん、たくさん本を読みなさい。
沢山の本から、たくさん感じて、怒って、泣いて、恐れて、笑って・・・

大人になるって、ちょっぴり寂しいけれど、若い頃の自分の心の在り様を想うのは・・・・・・悪いもんじゃない。かな。
そうだ。次は、あの頃、ちょっと難しかった覚えのある『かもめのジョナサン』の方を再読してみようか?また、違うリチャード・バック像が、私の中に生まれるかもしれないな。

中学生?高校生?になった息子に、この本を送ってあげよう。そんなことを考えながら。


『穴』

2007-01-23 11:03:29 | わたしの読書

『穴』
ルイス・サッカー作 /幸田 敦子 訳

よくおじゃまする書評のブログで、紹介されていた一冊。
「児童書だけど侮れない」・・・というコメントを読んで、すっかり、興味をそそられてしまいました。
無実の罪で少年更生施設に送られた少年の物語・・・ときいて、YAコーナーにあると思いきや、本当に、児童書コーナーに並んでいました。借りたときは、それが意外でたまりませんでした。でも・・・

主人公の少年・スタンリーは、学校では「デブ」といじめられ、「まずいときにまずいところにいた」ために、やってもいない罪を着せられ、少年更生施設-グリーン・レイク・キャンプに送られてしまいます。
レイクと言っても、そこには干上がった湖があるだけ。そして、曰くありげな所長やカウンセラーたち。
スタンリーは、炎天下の中、ひたすら穴を掘る日々を送るのですが・・・。


更生のためだという穴掘りには、どうやら秘密があるらしい。物語は、このスタンリー少年の物語を軸に、スタンリーの「ひいひいじいさん」の物語、このグリーン・レイク・キャンプの地で起こった悲恋物語などが、交互に語られていきます。
このパズルのような構成が、なんとも面白い。そして、そのパズルが、頭の中でバシッと繋がったとき、物語も急展開!一気にラストまで走っていきます。

とにかく面白くて、面白くて!!
これは、児童文学とか、そういう枠を取っ払った面白さです。
児童向けに書かれているせいか読みやすいし、ハラハラドキドキで止められない。とにかく、夢中で読み干しました。おかげ様で、一日で読了です!(パパが、息子を野球に連れていってくれたし)
最後の最後は、もう少し明確なハッピーエンドが欲しかった感もありますが、面白かったから、我慢したいと思います。その代わり、自分の頭の中で想像しておきました。主人公とその友だちの、最高の「その後」を

読了後に、爽快感というか、心の底から力が湧いてくるような感覚があり、これが、児童文学として、アメリカで賞をとった所以かと思いました。
これを子どもの時に読んだら、また、違うドキドキ感や爽快感を味わえたでしょう。そして、生きる力、生き抜く力に変えることができたかも
しれない。
無実の罪を否定しないで、受け入れてしまった主人公スタンリーが、最後の最後、「嘘だ!」と叫んだように。(この本、「中学生以上からの翻訳シリーズ」の一冊のようです)

それにしても・・・村上春樹病かもしれませんが、こういうパズルのような物語構成、好きだなあ。全然違う時代、場所で語られる物語が、実は、回文のように繋がっている。この世界は、そうやって廻ってるんだ~と思うことがあるのです。