強いストレスを抱えながら、人間の最大の能力を発揮する仕組みが解明できれば、人類の福音になります。そのストレスに打ち勝ちながら、能力を発揮する基礎条件が睡眠であることが薄々分かってきました。競技スポーツや最先端の研究成果を問われる分野で、睡眠の質が問われる時代になってきたのです。高校受験や大学受験に望む受験生も、大きなストレスが付きまといます。このストレスを緩和する良質の睡眠とは、どんなものなのでしょうか。
そこで、受験に対するストレスと睡眠について考えてみました。できれば、この2つを結びつけて、利益を生み出すことができないものかと、欲張った考えを持ってしまいました。韓国では高校進学率はほぼ100%になり、大学進学率は83.8%に達します。科挙の国でもあり、日本よりも学歴が重視されている国です。学歴を重視する韓国では、幼いころから受験競争が繰り広げられています。「今が幸福ですか」という調査に対して、日本の高校生の30%が幸福と答えたの対し、韓国では10%程度でした。ちなみに、アメリカも30%程度です。韓国の受験競争は、厳しいものがあります。1回の受験で、全ての人生が決まるともいわれています。大学受験の日には、受験会場の上空を飛行機が飛ばないことになっているのです。もし、この韓国で実力を十分に発揮できるホテルが出現したらどうなるでしょうか。
一時、韓国は経済成長が低下した時期がありました。でも、実質所得と消費がマイナスを記録したその時でさえ、私教育費は4%以上増加したお国柄なのです。受験を良好な状態で受けられるホテルに関心を示すことでしょう。受験において、自分の持つ能力以上の成績は獲れません。でも、質の高い睡眠ができれば、自分の能力を出し切ることができるのです。良質な睡眠の三大要素は、個々人に必要な睡眠の長さ、眠る時間帯、睡眠の深さになります。一般に、入眠の前には手足の指先が温かくなることが知られています。手足の指先が温かくなるのは、末梢から熱を逃がすために毛細血管が拡張しているからです。手足の指先の毛細血管が拡張したとき、体温と脳の温度が下がるときに眠りが訪れます。脳の機能を、休める時間になるわけです。もし、この休める時間を持たないと、脳は十分な働きをしない状態になります。受験には不利な状態になるわけです。眠ろうとしても、手足が冷えていると睡眠に入る状態になっていないので、睡眠が不十分なる可能性が出てきます。
余談ですが、睡眠不足の状態は、脳振とうを起こしているのと同程度の悪影響を及ぼします。学習内容を思い出せない状態が、続くわけです。脳振とうを起こした状態で、受験に望んでも良い結果は得られません。もう一つは、「午後10時から午前2時がゴールデンタイム」だから、この時間に寝なければならないというものです。でも、これには根拠がないようです。肝心なのは、最初の睡眠単位で、きちんと深いノンレム睡眠をとることなのです。ノンレム睡眠の状態が、脳を休める時間帯になるわけです。
韓国の受験強は、歴史的社会的背景があるようです。朝鮮半島の歴史は、外国からの侵略があっても、数百年に一度なのです。戦争の比較的少なかった歴史が、学問重視の文化を構築していったようです。これが両班文化に繋がり、ものづくりを軽視する社会を作りあげたようです。若年層の就職は、厳しさを増しています。調査でも、「良い職業に就く条件を得る」との回答が増え、「徳のある人間になる」が減っています。儒教社会が、徐々に変質しているようにも見えます。
受験生の皆さんは、とにかく有名大学に入ることに最善の努力をつくしています。その受験生を支える親族の方も、最大の援助をしているのです。受験産業では、ある程度合格できる受験生とできない受験生の区別ができます。でも、ときどき本番に弱い受験生の出現により、取りこぼしが出てきます。実力を普通に発揮していれば、合格できたのにという受験生の存在です。その何人かは、受験当日のコンディション調整の失敗です。特に、睡眠にその問題があることが多いようです。そこに、受験産業とホテルの提携の話が出てきます。このホテルに泊まると、必ず熟睡できるという実績と評判を勝ち取るのです。受験産業の方でも、有力な受験生に保険をかける意味で、熟睡できるホテルを推薦することになります。両者の経験が蓄積されれば、個々の受験生にあった睡眠環境を整えていくことができます。もちろん、最初は日本のホテルと受験産業がタイアップして、熟睡率を上げていく仕組みを構築していきます。ある程度できたところで、韓国で試すということになります。受験の厳しい国は、韓国だけでなく、お隣の中国も負けてはいません。強いストレスの中で、最大の能力を発揮する良質の睡眠を提供するホテルが出現してほしいものです。
蛇足ですが、睡眠が記憶の定着に寄与することは、よく知られています。日中、学習しているときに何らかの匂いを嗅いでもらうのです。ノンレム睡眠中に、この同じ匂いを提示すると、記憶の定着がよくなるというものです。匂いは、記憶に関係する脳の海馬と呼ばれる部分の活動を増幅することが分かってきました。でも、受験はインプットではなく、アウトプットが重要になります。もし、アウトプットを強化する仕組みが、ホテル側で開発したならば、このホテルは安泰ですね。