トンネルの向こう側

暗いトンネルを彷徨い続けた結婚生活に終止符を打って8年。自由人兄ちゃんと天真爛漫あーちゃんとの暮らしを綴る日記

ゴーストライター

2006-12-23 20:53:42 | 元夫婦
「あー。吐き気が止まらない。夜も全然眠れなかったよ。。うっ!おえー!うえっ!」と目の前で何度も何度も吐きそうになっている夫
見ているだけでこっちまで気持ちが悪くなってくる

夫がタバコをやめると言い出して2日目。
「お茶をポットに入れて。」と言うので紅茶を入れて持たせてあげた

お昼にまた帰ってきて「うえっ!吐き気が全然止まらない。飴の舐めすぎで頬の内側の皮が剥けてきた」とグズグズと言っていた

「大丈夫?」と聞くと充血した目を見開いて
「大丈夫じゃないよ。。。うえっ!!!苦しい」

「病院へ行ったら。吐き気止めもらってみたら?」
「禁断症状なのにそんなの飲んでどうすんだよ!」とイライラして言う

なるべく関わらないようにしようと後は何も言わずにいた

夫はしばらくオエオエ言いながらまた出かけて言った

あんな姿を見せられると本当に心がざわついて嫌だ
「本当に迷惑だ!」と呟きながら家の事をしていた

でも心のざわつきは収まらなかった
私は禁煙した時あそこまで酷くはならなかった
ふと思いついてパソコンで「禁煙 掲示板」と入れてみた

なかなか読みやすそうなサイトが現れた
そこに来る人はみんなが励ましあって禁煙を目指していた

あんな風に吐き気に襲われる人もいるのだろうかと思った
ちょっと聞いてみようかなと軽い気持ちだった

此処で私は大きな間違いを犯してしまった
なんと夫に成りすまして掲示板に書き込んだのだ

何時間かしてそのサイトを覗いてみるとビックリするくらい応援の
レスがついていた

症状が同じ人やどうやったら乗り越えやすいかとか親切に真剣に
レスをくださっていた

「なんて事をしてしまったんだろう。。。。馬鹿だ。私って本当にアホだ」ともの凄い後悔が押し寄せてきた
でも夫の為にこんなに応援してくれている人達がいる

夫に教えてあげなくちゃ
でもこんな事をしてなんて夫に伝えよう
自問自答を繰り返した

帰ってきても夫はまだ「うえー」とか「おえー」とか言っていた
口がただれてソーメンしか食べられないという
「もう吸っちゃおうかな」とか弱音を何度も吐いていた

「あのさー。こんな事しちゃいけなかったんだけどあんまり吐き気が辛そうだから
禁煙サイトに書いてみた。。。。お父さんの名前で。。。。そしたら凄い応援メッセージがついていてお父さんのお気に入りに入れたから読んで見て。。。」とおずおずと言った

夫は別に驚いた様子もなく「そうか。分かった」と言った
夫はサイトを見て喜んでいた

次の朝夫は私に
「昨日の返事宜しく!ゴーストライター君」と言った

今まで夫に成り代わって何でもやってきたから夫は全然違和感がないんだと気がついた
夫の為に書いてくれたメッセージなのに私に書けとは。。。

「悪いんだけどそれは出来ない。私が書いた物だけど
みんなが真剣にお父さんを応援してくれているんだから自分で返事を書いて。
ごめんね」と言った

消えてしまいたいほど恥ずかしかった
夫はそれから自分で返事を書いていた
それにも沢山の人がレスをつけてくれたらしい

心底自分が恐いと思った
あの瞬間私はやすやすと夫との境界線を飛び越えてしまったのだ

私は共依存症を乗り越えることが出来るのだろうか
今のままじゃ私は夫のゴーストラーターなのだ
夫の人生の後ろにぴったりとくっつき夫の代わりにシナリオを書き続ける
ゴーストライター

私は私自身のシナリオを書けるようになりたいと心の底から思ったのだった

今日も聞いてくれてありがとう