(写真)いっぱいに植栽されたコキアの紅葉
好天気に誘われ清水公園を散歩したら、花ファンタジアに紅葉したコキアの群生があった。こののどかな光景は捨てがたい。
夕陽を映した羊の群れのようでもあり、月の大地で生存する未確認物体のようでもあり、時間感覚を麻痺させる。
新しいのか古いのか。新鮮なのか懐かしいのか良くわからない。
アメリカの草原・乾燥した砂漠の端に群生していたので北米原産かと思っていたが、ユーラシア大陸原産の一年草で、日本には中国から伝来し、ホウキグサなどと呼ばれ乾燥した枝を束ね箒として使われていた。
草丈100cm程度で、根元から密に枝分かれし丸くまとまっているので、箒にうってつけの形態をしている。
1753年にリンネはこの植物にアカザ属のスコパリア(Chenopodium scoparia)と命名した。種小名の“scoparia”は、“ほうき状の”“ごみ収集人”を意味するので、既にこの当時にはごみ掃除の道具として日本だけでなく使われていたようだ。
しかし、最近では広いスペースを装飾デザインする植物として人気があり、丘一面をコキアで埋め尽くすところもでてきた。10月になると緑から紅葉し、朝陽、夕陽に映えるコキアは格別の美しさで、“fire-bush,”“burning bush”と呼びたくなるのも良くわかる。
コキアの種は秋田名物の“トンブリ”
(写真)「トンブリ」(見た目がキャビアだね!)
トンブリは、秋田県米代川流域に住む民が飢饉のときに食べたのが始まりといわれる。以来、秋田名物のひとつとなっていて10月から旬のものが出回る。
山かけの上に飾ったトンブリは黒緑色が鮮やかでかき混ぜて食べるとプリッとした食感が良い。味は無味なので、冷采のトッピングとして色彩と食感を楽しむ使い方がされるので、酢の物、納豆などだけでなくパスタ、チラシ寿司などにもあいそうだ。
しかし、このプリッとした食感を出すのは秘伝の技があるそうだ。
ホウキグサからトンブリにする工程は、秋に取り入れた実を乾燥させ、これを煮て冷水につけ、手を切るような冷たい水で手もみで殻を取るそうだが、この単純な工程に技があるという。
名前の由来は、トンボの方言である「ダンブリ」から、或いは、「ぶりこ(ハタハタの卵)に似た、唐伝来のもの」を意味する「とうぶりこ(唐ぶりこ、唐鰤子)」が省略され転訛したとする説がある。
中国から何時頃日本に伝来したかは定かでないが、平安時代の醍醐天皇に侍医として仕えた深根輔仁が延喜年間(901-923)に編纂した「本草和名」に薬草として、同じ頃の905年から藤原時平らが編纂を始め927年に完成した「延喜式」には、『武蔵国より地膚子一斗五合、下総国から地膚子一斗を貢献する』と記載されているので、これ以前に伝わり、10世紀初めには栽培も関東まで広がっていたことがわかる。
日本が面している高齢化と放射性物質の体内蓄積の問題を解くキーワードのひとつが“不必要なものを対外排出”することだが、トンブリは利尿促進効果がありそうなので、体内の悪いものを排出するところで注目を浴びる食材かもしれない。
今はわからないがそんな秘めた力を持っている食材のような気がする。
(写真)コキア植物画
(出典)University of Wisconsin - Stevens Point
コキア(kochia)
・ アカザ科の一年草
・ 学名は、Bassia scoparia。種小名の“scoparia”は“ほうき状の”を意味する。英名は、沢山ありkochia scoparia(以前の学名)、fire bush, summer cypress, belvedere, fire-bush, burning bushなど。和名はホウキギ、ホウキグサ、ニワグサ。
・ 原産地はユーラシア大陸で平安時代には中国から伝わっていた。
・ 草丈30-150cm、根元から密に枝分かれする。
・ 開花期は8月、花は目立たない。
・ 伝統的な漢方薬として代謝性障害(高脂血症、高血圧、肥満とアテローム性動脈硬化症)予防、利尿促進の生薬として使われる。
・ 北米では家畜の飼料として使われる。
・ 日本では、乾燥させた種子を沸騰したお湯で煮て冷水に一日つけ、殻を取ると黒緑色の秋田名物“とんぶり”の珍味が誕生する。見た目、食感はキャビアで“畑のキャビア”とも呼ばれる。
※ コキアは3回分類が変わった。
1. Chenopodium scoparium L.(1753)
1753年リンネによってアカザ属に分類される。
2. Kochia scoparia ( L. ) Schrad.(1809)
1809年には、ドイツの医師・植物学者シュレーダー(Schrader, Heinrich Adolf 1767-1836)によってコキア(Kochia)属に分類される。属名の由来はドイツのエルランゲン大学薬学・植物学教授コッホ(Koch, Wilhelm Daniel Joseph 1771-1849)による。
3. Bassia scoparia (L.) A.J. Scott (1978)
1978年にスコット(Scott, Andrew John 1950- )によって現在の学名であるバシア(Bassia)属に分類しなおされる。属名の“Bassia”は、イタリアの植物学者でボローニャ植物園の教授Ferdinando Bassi (1710-1774)にちなんで名づけられた。
好天気に誘われ清水公園を散歩したら、花ファンタジアに紅葉したコキアの群生があった。こののどかな光景は捨てがたい。
夕陽を映した羊の群れのようでもあり、月の大地で生存する未確認物体のようでもあり、時間感覚を麻痺させる。
新しいのか古いのか。新鮮なのか懐かしいのか良くわからない。
アメリカの草原・乾燥した砂漠の端に群生していたので北米原産かと思っていたが、ユーラシア大陸原産の一年草で、日本には中国から伝来し、ホウキグサなどと呼ばれ乾燥した枝を束ね箒として使われていた。
草丈100cm程度で、根元から密に枝分かれし丸くまとまっているので、箒にうってつけの形態をしている。
1753年にリンネはこの植物にアカザ属のスコパリア(Chenopodium scoparia)と命名した。種小名の“scoparia”は、“ほうき状の”“ごみ収集人”を意味するので、既にこの当時にはごみ掃除の道具として日本だけでなく使われていたようだ。
しかし、最近では広いスペースを装飾デザインする植物として人気があり、丘一面をコキアで埋め尽くすところもでてきた。10月になると緑から紅葉し、朝陽、夕陽に映えるコキアは格別の美しさで、“fire-bush,”“burning bush”と呼びたくなるのも良くわかる。
コキアの種は秋田名物の“トンブリ”
(写真)「トンブリ」(見た目がキャビアだね!)
トンブリは、秋田県米代川流域に住む民が飢饉のときに食べたのが始まりといわれる。以来、秋田名物のひとつとなっていて10月から旬のものが出回る。
山かけの上に飾ったトンブリは黒緑色が鮮やかでかき混ぜて食べるとプリッとした食感が良い。味は無味なので、冷采のトッピングとして色彩と食感を楽しむ使い方がされるので、酢の物、納豆などだけでなくパスタ、チラシ寿司などにもあいそうだ。
しかし、このプリッとした食感を出すのは秘伝の技があるそうだ。
ホウキグサからトンブリにする工程は、秋に取り入れた実を乾燥させ、これを煮て冷水につけ、手を切るような冷たい水で手もみで殻を取るそうだが、この単純な工程に技があるという。
名前の由来は、トンボの方言である「ダンブリ」から、或いは、「ぶりこ(ハタハタの卵)に似た、唐伝来のもの」を意味する「とうぶりこ(唐ぶりこ、唐鰤子)」が省略され転訛したとする説がある。
中国から何時頃日本に伝来したかは定かでないが、平安時代の醍醐天皇に侍医として仕えた深根輔仁が延喜年間(901-923)に編纂した「本草和名」に薬草として、同じ頃の905年から藤原時平らが編纂を始め927年に完成した「延喜式」には、『武蔵国より地膚子一斗五合、下総国から地膚子一斗を貢献する』と記載されているので、これ以前に伝わり、10世紀初めには栽培も関東まで広がっていたことがわかる。
日本が面している高齢化と放射性物質の体内蓄積の問題を解くキーワードのひとつが“不必要なものを対外排出”することだが、トンブリは利尿促進効果がありそうなので、体内の悪いものを排出するところで注目を浴びる食材かもしれない。
今はわからないがそんな秘めた力を持っている食材のような気がする。
(写真)コキア植物画
(出典)University of Wisconsin - Stevens Point
コキア(kochia)
・ アカザ科の一年草
・ 学名は、Bassia scoparia。種小名の“scoparia”は“ほうき状の”を意味する。英名は、沢山ありkochia scoparia(以前の学名)、fire bush, summer cypress, belvedere, fire-bush, burning bushなど。和名はホウキギ、ホウキグサ、ニワグサ。
・ 原産地はユーラシア大陸で平安時代には中国から伝わっていた。
・ 草丈30-150cm、根元から密に枝分かれする。
・ 開花期は8月、花は目立たない。
・ 伝統的な漢方薬として代謝性障害(高脂血症、高血圧、肥満とアテローム性動脈硬化症)予防、利尿促進の生薬として使われる。
・ 北米では家畜の飼料として使われる。
・ 日本では、乾燥させた種子を沸騰したお湯で煮て冷水に一日つけ、殻を取ると黒緑色の秋田名物“とんぶり”の珍味が誕生する。見た目、食感はキャビアで“畑のキャビア”とも呼ばれる。
※ コキアは3回分類が変わった。
1. Chenopodium scoparium L.(1753)
1753年リンネによってアカザ属に分類される。
2. Kochia scoparia ( L. ) Schrad.(1809)
1809年には、ドイツの医師・植物学者シュレーダー(Schrader, Heinrich Adolf 1767-1836)によってコキア(Kochia)属に分類される。属名の由来はドイツのエルランゲン大学薬学・植物学教授コッホ(Koch, Wilhelm Daniel Joseph 1771-1849)による。
3. Bassia scoparia (L.) A.J. Scott (1978)
1978年にスコット(Scott, Andrew John 1950- )によって現在の学名であるバシア(Bassia)属に分類しなおされる。属名の“Bassia”は、イタリアの植物学者でボローニャ植物園の教授Ferdinando Bassi (1710-1774)にちなんで名づけられた。
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