モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

バラの野生種:オールドローズの系譜⑧ 日本からのバラ

2008-12-09 10:18:59 | バラ

モダンローズの親となった日本のバラ
400万年前の鮮新世期のノイバラの化石が兵庫県明石で出土し、
日本でも、バラの野生種が人類よりも早くから自生していたという。

日本には14種の野生種があり、ノイバラRose multiflora Thunberg、テリハノイバラR.wichuraiana、ヤマイバラ、タカネイバラ、サンショウバラR.hirtula Nakai、ナニワイバラR.laevigata、ハマナスR.rugosa Thunbergなどがある。

このうち、ノイバラ、テリハノイバラ、ハマナスの3種がヨーロッパに渡り、現代のバラの親として品種改良に使われた。

そのヨーロッパへの伝播についてみると、伝播の時期・ルートなど不明なことが多い。このようなことを前提として、
最も早くヨーロッパに入ったのはハマナスのようで、日本に来たリンネの弟子にあたるツンベルグがヨーロッパに存在を紹介したのは1784年で彼の著書『フローラ・ヤポニカ』で、“ローサ・ルゴサ(Rosa.rugosa)”と命名された。

このハマナスは、1796年にはロンドンの「リー&ケネディ商会」で栽培されており、何処から入ったかは不明だ。
「リー&ケネディ商会」は、この当時のヨーロッパ育種業界No1の企業であり、海外からの仕入ルートがあった。仕入れルートは秘密で明らかにならないが、中国か日本に滞在している外交官或いは植物学者或いはマッソンのようなどこかのお抱えプラントハンターから内密で手に入れたのだろう。

しかし、同時期に中国から四季咲きのコウシンバラがヨーロッパに入り、注目がこちらに移った影響なのか、「リー&ケネディ商会」のハマナスはここで立ち消えになる。
ヨーロッパへの再登場は1845年で、シーボルトが日本から輸入して販売カタログに掲載している。

さらにしかしだが、ジョゼフィーヌのマルメゾン庭園にはハマナスがあった。これはルドゥーテの『バラ図譜』5番目の絵として確認できるので間違いはないだろう。『バラ図譜』(1817-1824)の出版時期と兼ねあわせると、シーボルトが輸入した物ではないことは間違いない。

このハマナスは、日本での原産地が寒冷地であるため、耐寒性が強く寒冷地でのハイブリッド・ローズの品質改良に生かされることとなる。

ノイバラ、テリハノイバラに関しては、カタログを参照していただきたいが、ワンポイントコメントすると、

ノイバラがヨーロッパに伝わるのは、1810年でフランスに紹介される。これが、ポリアンサ・ローズの親の一つとなり、フロリバンダ・ローズや現代のミニチュア・ローズを生んでいく。
ポリアンサ・ローズ、フロリバンダ・ローズなどに関しては、プレモダン・ローズで書く予定。

テリハノイバラは、1891年にフランス・アメリカに導入され、品種改良の基本種として利用される。また、改良されて現在の観賞用つるバラの基礎を作る。

ハマナス
Rosa.rugosa Thunberg ローサ・ルゴサ

※ビジュアルは、Rosa Rugosa Kamtchatica( Kamchatka Rose)

・和名:ハマナス
・学名:Rosa.rugosa Thunberg ローサ・ルゴサ
・英名:英名:Japanese Rose
・日本原産で、花色は深い紅紫色で雄しべの黄色が目立つ美しい花。花径6-10cm、強い芳香がある。
・太平洋側は茨城県以北、日本海側は鳥取県以北の海岸線の砂地に自生する。
・種小名のルゴサは、しわのある葉を持ったバラという意味。
・耐寒性が強く、この特質を現代のバラに取り込み寒冷地でも栽培できるバラが誕生する。
・1845年にシーボルトがヨーロッパに輸入したのは間違いないが、これ以前にイギリスに入る。
(参考サイト) 「あんたがたルゴサ」

ノイバラ
Rosa mulltiflora Thunberg ロサ・ムルティフローラ

※ビジュアルは、Rosa Multiflora Platyphylla(Seven Sisters Rose)

・和名:ノイバラ
・学名:Rosa mulltiflora Thunberg ロサ・ムルティフローラ
・英名Mulltiflora Japonica 
・花は白色、
・花径2.5-3cm、花弁数5枚、
・花期は5-6月、円錐花序で多数の花をつける。房咲き性は、ノイバラが現代のバラに伝えた特質。
・香りよい。
・耐寒性、耐暑性、耐乾性、耐湿性、耐病性が強いため、改良品種の基本種となる。
・ポリアンサ系、フロリバンダ系の親となる。
・1810年ヨーロッパに伝わる。
※ルドゥーテの『バラ図譜』ではノイバラ2品種が掲載されているが、花の色が白ではなく品種改良されたものがマルメゾン庭園に存在していた。ということは、1810年以前にヨーロッパに伝わっていた可能性がある。
実際のノイバラ :(参照:リンク:ボタニックガーデン)

テリハノイバラ
Rosa wichuraiana Crepin ロサ・ウィクライアーナ

※写真の出典:『身近な植物と菌類』http://grasses.partials.net/

・和名:テリハノイバラ
・学名:Rosa wichuraiana Crepin ロサ・ウィクライアーナ
・英名:Memorial Roseメモリアルローズ
・日本原産で海岸や明るい山の斜面に自生する。
・葉が照り輝くことから名前がつく。別名ハマイバラ、ハイイバラ
・花は純白で、花径3-4cm、花弁数は5枚。花弁の先はへこみ、倒卵型で平開する
・雄しべは黄色で数が多い。
・甘い香りがする。
・花は円錐花序で10数個つく。
・茎は地をはって伸び鉤状の刺がある。
・1891年フランス・アメリカに導入され、改良されて現在の観賞用つるバラの基礎を作る。
・ランブラー・ローズの系統をつくる。


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