浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

フリッツ・クライスラーとラフマニノフによるベートーヴェン

2012年08月31日 | 提琴弾き
ベートヴェンの提琴奏鳴曲第八番は其の番号から晩年の作品だと思ってゐる方もおられるだらうが英雄交響樂と同時期に筆が進められてゐた作品である。クライスラーの此の演奏はLPでの復刻(たぶんRCAのラフマニノフ全集アルバムだったと思はれる)で聴いた録音ではあるが、Biddulphの復刻CDは以前からいつかコレクションに加えようと思ってゐた盤だった。念願かなって今聴いてゐる。

BiddulphによるSP復刻は其の原音に対する執着とでも言ふのか、類まれな復刻技術によって世にいにしゑのレコヲドの歴史的価値を問い直し続けてきた。スクラッチノイズの有無とか聴きやすさとか言ふレベルではなく、目の前で演奏家が自分の為に演奏してくれてゐるといふ実感とでも言ふのか、なにか其のやうな不思議な感覚にさせられるCDを発表し続けてきた。

今日、念願かなって手元に届いたBiddulphの記念すべき第1作目のCDアルバムを、ある種の感慨をもって聴いてゐる。当然のことながらひいき目もあって此の演奏に対する思い入れは以前に増して高まってゐる。

ベートーヴェンの奏鳴曲とふ古典だからこそ分かるクライスラーの味わいをBiddulphの素晴らしい復刻で堪能してゐる。ビブラートやポルタメントのかかり具合など当時の維納の文化の芳醇なかほり漂う演奏を愉しんでゐるのだが、ラフマニノフの露西亜の臭い(匂いではない)を極力押し殺したレコヲディングに臨む姿勢にはある意味で感謝してゐる。ラフマニノフのショパンなどの演奏に不満を感じてゐた僕には意外な喜びなのである。純粋にクライスラーの提琴に酔いしれて今晩は速い目に床に就くことにしやう。夏の最後の夜にふさわしいCDを手にして喜びも一入である。

写真はクライスラーがヨーゼフ・ホフマンとのリハーサルで互いに企みを打ち合わせてゐる場面。

盤は、英國BiddulphによるSP復刻CD LAB001~3。

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