浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

『スカートをはいたエルマン』によるアレンスキーのセレナーデ

2008年03月02日 | 提琴弾き
『スカートを穿いたエルマン』と評された提琴家のことをご存知だらうか。1890年生まれの彼女は16歳から数年間、ぺテルスブルグでレオポルド・アウアーに師事した。彼女の演奏で、アレンスキーのセレナーデといふ優雅な小品を愉しんでゐる。

彼女の名はキャスリーン・パーロウ。一度、本ブログにも登場いただいたことがあった。6歳で聴衆の前に現れ、15歳のときにはアレクサンドラ女王の御前で倫敦響と協演した。アウアーに師事したのはその後といふことになる。タリー・ポッター氏(ハリー・ポッターとは特に関係は無い)の解説によると、アウアー自身が『スカートを穿いたエルマン』と絶賛したのは、彼の指揮の下、パーロウが協奏曲を演奏したときのことで、アウアーとの協演での成功はパーロウにとって忘れられない出来事となったやうである。パーロウはその後、提琴ケースにアウアーの写真をいつも忍ばせてゐたといふ。

アレンスキーの上品なサロン音楽をパーロウは情感豊かに歌い上げてゐる。自由奔放なテンポ感覚で歌い上げるものだから伴奏者は大変だが、なかなか息の合ったデュエットを聴かせてくれてゐる。パーロウはテンポを大きく揺り動かすが、エルマンよりも理知的な演奏に聴こえる。

1929年から7年間、米國カリフォルニアで教鞭を執り、1941年には母国加奈陀に帰り、四重奏團やトリオを結成するなど室内樂で活躍した。1963年8月19日、僕が幼少時期を過ごしたオンタリオの地でこの世を去った。

盤は、英國PearlによるSP復刻CD BVA1。


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