浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

フィリス・セリック&シリル・スミス夫妻のデュオで「空飛ぶ医者」

2012年10月08日 | 提琴弾き
シリル・スミスについては英國APPIANからラフマニノフとドホナーニの全録音が復刻され発売されてゐるが、夫妻のデュオは入ってゐなかった。ミヨーの自作自演アルバムのボーナストラックに夫妻の演奏による「スカラムーシュ」(空飛ぶ医者)があった。

英國のラフマニノフ弾きとして名を馳せたシリル・スミスの録音は1909年生まれにしては非常に少ない。それは40歳代で左手が動かなくなったためと思はれる。右手が動かなくなった場合はラヴェルやスクリャービン、サンサーンス、プロコフィエフなど多くの作品があり仕事に困らなかったはずだ。残念なことだ。

さて二人の演奏だが、豪快に弾き飛ばすオールソンの演奏でなじんだ僕の耳にはいたって真面目で枠からはみ出ない不自由さを感じる。ポリトナリティやジャズの影響を受けながら大衆的な音楽を数多く書いたミヨーの作品はもう少し遊び心を持って聴きたいものだ。

「スカラムーシュ」は「空飛ぶ医者」といふ変わった題名の劇に付けた音楽といふことだ。作者はモリエールである。「人間に死がある限り医者は金儲けできる」と皮肉たっぷりに医者をこき下ろすモリエールのことだから「金の夢見る医者」といった風の内容なのだらうか。もっと不真面目に演奏してもらえると嬉しいのだが。

盤は、墺太利DuttonによるSP復刻CD CDBP9711。


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