大きいサイズのメモ。
52×39cm。
クレヨンと鉛筆、色鉛筆を使用。
わたしは武内の絵を最初に見る人である。
そして、意表を衝かれ気持ちが落ち着かなくなる人でもある。
この絵もそうでした。
「武内の頭の中は、いったいどういう風になっているのだろう。」とか、
「いったいこれは何だ!」とか、
「これは理解されるのだろうか?」とか、
「こうやって、摩訶不思議絵画によって、食えなくなるのか?」という不安が出てくる。
そう、初めて見た瞬間、驚くのが常。
しかし、時間が経過し見慣れてくると、目が慣れるのか、いろんな思いが出てきます。
今や気持ちは春待ち状態。
そんなこともあって、発芽しはじめた種のようなイメージを持ちました。
ピートバンの上で、ちょこんと根を出し始めた種のようだと。
昨年撒いたビオラの種は、まさしくこんな感じで、その後、双葉が出てきました。
そんなふうに見ていると、このメモの絵はたいへん可愛らしく思え、
明るい気持ちになる。
この絵を見ながら、夕食を食べていると、春を考えずにはいられない。
そう思って、横にいた武内を見た。
目が合うなり、「ウクライナのことを考えると憂鬱でねぇ。」という言葉が・・。
武内は、幼少の頃は戦中で、空中から狙い撃ちされたという経験があるので、
(飛行機の荷の重さを軽くする為に、アメリカ兵が捨石のように弾を消費することがよくあったという事です。
決して殺そうと思って打ったものじゃないらしい。
冗談半分に打ったんでしょうと、戦時の事に詳しい編集者の方が教えてくれました。
冗談だとしても、エグイな、とわたしは思うのですが)
その恐怖や平和がない時代を思いだして、ウクライナのことを考えているようでした。
「そういう中で、わたしが絵を描くということは、どういうことだ。」
と、切実な顔をして言い、わたしを見る。
こういう問いかけは、答えがなく難しい。
武内の苦悩している姿を見て、かなり重苦しくなって憂鬱になっているようだ。
時々、こうやって重苦しくなることも悪いことではない。
親身になって思いやっているのが良くわかる。
武内のヒューマンな面が出ている。
そこで、わたしは、
「もし、ウクライナの人が絵を見て、心が明るくなって希望を持つ絵があったらいいじゃない?」と言った。
「そういう絵があったらいいじゃない?」と繰り返した。
その時、本当にそう思ったのです。
武内は、ちょっと気を取り直したようで、仕事台の前に座りに行った。
そういう絵があるなら、見てみたいものだ。
未知の分野ということです。
こういう話題になったことで、取り上げたい画家がいます。
「香月泰男」という画家です。
よくNHK等でも取り上げられる画家で、太平洋戦争にて、ソ連に抑留されシベリアの強制労働をさせられ、
この原体験を描いた画家として、よく紹介されます。
わたしは、この<シベリアシリーズ>を見て、
「なんとも暗く辛い絵だ。」という気持ちで一杯になり、黒い絵柄が脳裏に焼きついた。
それから、香月泰男という名前を見ただけで、その絵柄が浮かび見ないようになった。
このシリーズの絵を見ると、全部同じ気持ちで埋め尽くされるからだ。
↑香月泰男《復員〈タラップ〉》1967年 油彩・方解末・木炭、カンヴァス 山口県立美術館蔵
これが、シベリアシリーズの一枚。
↑こちらも
《ダモイ》 1959年 油彩・方解末・木炭、カンヴァス 山口県立美術館蔵
こういう絵が、わたしの脳には、この方の絵とすり込まれました。
ところが、美術雑誌、芸術新朝で紹介されたページの香月泰男氏を広げると、
↑こんなページが出てきたのです。
こちらは、山口県にあった香月泰男宅の台所の壁画。
思わず、「台所が、なんと素敵なこと!」と、うっとりしたのです。
ここで、香月泰男氏の絵のイメージが一転したのです。
他には、パリの街角を描いたものや、ブリキのおもちゃがありました。
↑この絵は、パリの街角を描いていますが、なかなか洒脱です。
シベリアシリーズとうって変わって、軽いタッチ。
↑このブリキの人形達も洒脱で、今にも動き出しそうだ。
もう、動いているのかも。
これは、<おもちゃ箱>シリーズだそう。
その雑誌の香月泰男の特集を眺め終わってから、
あの<シベリアシリーズ>ばかり紹介するのは、やめた方がいいのではないだろうかという思いが・・・。
評価が高いのが<シベリアシリーズ>らしいが、それもどうだろうか?
わたしには、どちらも等価に思われます。
人生の中には、辛いときもあれば楽しい時もあり、その両方があるということは貴重だ。
香月泰男氏の紹介では、その両面を取り上げてこそ作家を知ることになると思いました。
そのことによって、シベリアシリーズも違った観点から鑑賞することが出来そうです。
最後に、種を継いで育てているビオラに新しい色合いの花をつけました。
↑電球の色で暖色がかって写ってしまったのを、
なるべく花びらの色を再現と思いカラー調整で出してみました。
グレーがかった藤色に黄色の花びら。
食卓の机に置いていると、ヒロク二さんが、「新しい顔だねぇ。」と言う。
「もう、ビオラの花が顔に見えるのなら、あなたもわたしの仲間だね。
長年見ていると、顔にしか見えないのォ。」
と言い、笑った。
このビオラの種は採取して、今年も育てるつもり。
今日は、大きなメモを紹介しました。
武内の絵を見て、脳がくるくると回転していつもと違う部分に刺激が行く時があります。
その感じが伝わっただろうか?
ウクライナでの紛争のことから、わき道にそれ、
シベリアでの過酷な試練を受けた「画家・香月泰男」の絵についてを書きました。
わたしが思い込んでいたように、暗く辛い絵の画家という認識を変えて、
美と生きる喜びの絵も素晴らしいと思って頂ければ幸いです。
最後まで読まれた方、いつもありがとうございます。
「もし、ウクライナの人が絵を見て~」という言葉、とても良いと思いました。明日の生命も生活も尊厳もわからないときの感情は到底わからないのですが、それでも心が感動する、そんな瞬間に人は救われると思うのです。
「香月泰男」を始めて知りました。シベリアシリーズ、壮絶感に畏怖し、震えました。でも、台所の壁画、色は地味ながらもなんと明るい花畑なのでしょう! 木綿の生地の柄にしたらすてきだなと思いました。
おもちゃ箱シリーズもキュートだし、香月泰男の本質は繊細な美しさとキュートさなのではと思いました。
ビオラの花びら、紫の斑点がかわいらしいです。紫と黄色は、ヒトが服装に取り入れるには組み合わせと着こなしが難しいと思うのですが、自然の植物はその難しさを軽くクリアしてしまうのですね。
前回のコメントに書いた「金剛石林山」、ネットで調べていただいたのですね。ありがとうございます。ネットの記載の通り、ごつごつした大きな石がゴロゴロしている山道でした。蛇は湿った場所の石の間にいることが多いので、「ここ、絶対ハブいるに違いない」とビクビクしながら歩きました。
この1週間、夫の確定申告の処理をしていました。e-Taxの申請なので税務署には行かないのですが、PCの前で何度も申請内容を見直して「なんとか税金がもう少し減らせないか……」と試行錯誤を繰り返していました。
いつまでも見つめていても仕方がないので、明日頃に覚悟を決めて申告する予定です。税金や社会保険料や生活費、もうちょっと楽になりたいものです。
我が家は今シーズンの灯油を全部使い切りました。これから暖かくなるまで、灯油なしで過ごす予定です。去年、1缶余らせてしまったので今年は量を決めてこれ以上の購入をやめました。
明日以降、どうか暖かくなってくれますように!
冒頭に鳥のヒナとあり、このとらえ方もいいな、と思いましたよ。意表をつかれました。読んだ時に目の前が明るくなったような気がして、気持ちがパーと晴れました。なにか発見したような感じになりました。
私は、ウクライナの事は、理不尽な目にあっているとしか思えなくって・・・。それにロシアのようなやり方が通用するようになったら、と思うと空恐ろしい。ヒロク二さんは心情に思いを寄せていて、とらえ方が違うけれど、同じようにウクライナの事を思っていることでは共通しています。絵でなくてもいいから、一筋の光をウクライナの人は見つけて進んで欲しいと思う。今、物量の面で苦戦しているので、この部分を突破して欲しいと。私は、物の見方が現実的だと思います。だから、ヒロク二さんに提案してみました。
「香月泰男」は、よく特集を組まれる画家で、気が付けば時々目にするようになると思います。シベリアシリーズを。(笑)私も本質は、洒落た面を持っていて繊細な人なんだと思います。
ビオラは、今年は紫と黄色の花が多い。たくさん花を付けたらどんな感じになるのか?紫と黄は補色なのでメリハリが利きすぎる色合い。服の色としては、難しいでしょう。植物は、葉の緑があるからいいのかも?
確定申告は、念のため「市」が設けている作成相談所に行きます。分からないことを聞けるし、「こうしたらいいよ。」と気軽に教えてくれるから。パソコンですると便利そうなんだけど、しない派です。経済的には、私達は貧乏組み。物の値段が上ってからは、厳しいものがあります。ゆとりがある人って、いるのでしょうか?周りにはいないのが悲しいわ。
どんな所だろうと思って、調べましたよ。天国って書いてあったからね。(笑)沖縄もハブがいるのですね。ヒロク二さんは、子供の頃、罠にかかったハブが集められている所を目撃しているらしくって、ハブ嫌い。もう、蛇を見るのも嫌だそうで、所有の辞典の蛇の写真のページは、折り込まれています。恐怖そのものらしい。
少しづつ暖かくなってきていますね。日曜日はとても暖かいらしい。私も期待して過ごしています。
お互い、春待ちね。
コメントありがとう。