田舎生活実践屋

釣りと農耕の自給自足生活を実践中。

ビシマ道具のルーツ(2013/6/10)

2013-06-10 23:50:44 | 一本釣りの歴史
ビシマ釣り

 昨年の夏まで、木工職人のSG氏の釣りグループの山陰の汐巻での釣りは、ビシマ釣りといって、手釣りで道糸に小さい鉛の錘(ビシ)を20センチ間隔程度に締めつぶしている道具を皆さん使っていた。これで深さ80メートル程度の底をとって、鯛やらアマダイなどを沢山釣っていた。40年続いたこのグループもさすがに釣り人も船頭も高齢になり、とうとう昨年の7月で解散。そのあと、釣り人の比較的若い工務店のS氏が中心になり、今度は若松の岩屋漁港の遊漁船の船長にお願いして、月2度程度の釣りを続けている。私も汐巻は2年程、若松はこの1年釣りの仲間にしてもらっている。
 私は、深さ80メートルで手釣りの自信なく、しばらくリールで竿の道具で釣っていたが、皆さんの真似で、やがてビシマ釣りに変更。やりとりがリールより楽しく、気に入っている。
 誰が考案したものだろうと不思議に思っていたが、今日、少しわかった。一本釣りの漁船の船尾につけた三角帆(スパンカー)の発明で有名な、千葉の漁師、石橋宗吉氏の話をまとめた本の「一本釣り渡世」(筑摩書房)にその伝播の様子が描かれている。昭和6年の5月の話し。

「一本釣り渡世」(筑摩書房) P101
「どこから来た旅船だろう、見たことのない形の船だった。一隻に四人乗りのチャカ(電気着火)船で、動力を切って一人が櫓を練り、三人が釣り手であった。こうした場合、至近距離であっても挨拶を交わすことはない。お互いに無視して釣っている。
 われわれのタイ道具は鴨居式と呼ばれるものを使っていた。人造テグスの道糸に二十匁の中錘、その先に約十メートルの本テグス、先端にカブラ錘付の鉤がある。・・・・この日、午前中の潮は素直でいい漁になったが午後になると上潮が走り出した。二枚潮で上下の潮の速さが違う。それまで真っ立ちで指せた道具が上潮に押されて斜めに降下する。糸ふけが出る。当然のことながら魚の当たりがとりにくくなるし、漁獲が落ちてくる。
 ひょいと旅船を見ると、午前中と同じペースでこべりに固定した竹に糸を滑らせてタイを取り込んでいる。そこで初めて旅船の道具に目がいった。野郎どもどこの者だ、二枚潮を気にしていない。いったいどんな道具を使っているんかい。ちらちら上目づかいに見ているとおかしなことに気が付いた。私も親父もあぐらをかいて釣っているのに、旅船は全員が正座をして釣っているではないか。・・・・これが紀州のタイ釣り名人、中口佐市との初めての出会いであった。・・・私は水揚げしている旅船を浜勝浦に訪ねていった。・・・「現場で会った松部の弥惣兵衛で妙八丸の石橋宗吉であるが、タイ道具について聞かせてほしい。」多分そんなことを言ったと思う。・・・とうとう旅船の道具を見ることが出来た。名うての紀州漁師の、これがグミ道具(ビシマ道具)と称するタイの手釣り道具であった。紀州のグミ道具、こんな道具は初めてみたよ。・・・基準は24メートルと短い絹糸に柿渋をかけた道糸、これに小さいビシ(鉛の錘)が何十と圧着してある。・・・グミ道具の先端からは本テグス約十メートル。カブラがついた鉤は鴨居式と同じものだった。この紀州道具なら二枚潮でも真っ立ちで道具が底に行くから、素直な潮と同じように当たりが取れるという。さすがに漁業先進国紀州の手の込んだ道具だ。たまげてしまった。・・船の中で私の相手をしたのが、私より9歳年上の温和な中口佐市だった。紀州・雑賀崎からきた。・・・恥は一時、とうとう紀州道具をみたなあ。
 さて翌日だ。勝浦のタイ釣り船は全船が沖休みをして見てきた私の講釈で紀州のグミ道具を作り始めたよ。・・・・・この道具を使ってみると、二枚潮でもなるほど縄立がいい。当たりも十分に取れる。鴨居式の中錘を小さくばらしてつけている理屈で道具の重さは変わらない。縄立がいいだけにむしろ軽い。これはいい、そこで以後のタイ釣りは全船が紀州式のグミ道具を使うようになった。」


 なにげなく使っているビシマ道具、こういう先人の努力があって、私のような素人も愛用できているのかと、臆せず訪ねた石橋宗吉氏と、気前よく道具を見せた中口佐市氏の二人の名人に、ありがとうございましたと、手を合わせたくなります。今度の日曜日、天気がよければ、白島沖で、ビシマテンヤの手釣りに出かけるが、スパンカーの生みの親の千葉の釣名人とその釣り名人にビシマ道具を伝授した紀州の釣り名人にお神酒のビールを供えることにしました。
 冒頭は、私のビシマ道具と先端のテンヤ(セブンスライド)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 西谷温泉でのんびり(2013/6/9) | トップ | 農園でカボチャの棚作り(2013... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

一本釣りの歴史」カテゴリの最新記事