梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之旅日記’08 身延探訪

2008年07月19日 | 芝居
今日中に甲府から名古屋へ移動すればよいという<移動日>でしたので、身延山久遠寺に詣でることにいたしました。
朝5時半に起きてホテルを発ち、6時27分甲府発の<ワイドビューふじかわ>に乗って50分で身延駅着。駅前からバスで10数分で身延山駅、ここから徒歩で参詣です。
立派な三門をくぐると、杉木立の中の参道に入りますが、まだ7時過ぎということで、人もほとんど通らず、鳥の声のほかは風が枝葉を過ぎ行く音くらいの静かな世界。うっすら湿り気をおびた朝の空気を思い切り吸い込んで、樹々や岩肌の気を感じながら歩いてゆくうちに、徐々に心が研ぎすまされてまいります。日の光や水の流れ、目や耳で味わう自然の美しさ。



菩提梯(ぼだいてい)は、本堂へ至る最短通路ですが、おそらく現代の建築基準法なら絶対認可されないような超急勾配と段高の石段(287段)で、さすがに汗がにじみました。振り返ると怖くなっちゃうくらいですが、木立の中の石段を上りきると、朝日に照り映える白砂がまばゆい境内が一気に目の前に飛び込んで参ります。日蓮宗の総本山としての偉容を誇る本堂は黒を基調とした造りで、その対比がなんとも美しく…。


参拝の後は本堂裏手にある<久遠寺駅>からロープーウェイで身延山山頂へ参ります。歩いたら2時間半かかるそうですが、この時期蜂もマムシも熊も恐いですからね。眼下の景色を眺めながら7分で楽々行けちゃうのがお手軽。途中カモシカに遭遇しましたよ。


山頂からの眺めの素晴らしさはちょっとこの写真では伝えきれませんが、南、北それぞれにある展望台から望む山々と大空。うわ~、心がノビノビ解き放たれる~。
しばし時を忘れてボーッと、といきたかったのですが、怖い怖いハチさんが飛び回っていたので、短時間で切り上げざるを得なかったのが残念! でもホントに気持ちよかった~。

日蓮様が安房の国の両親を慕って日々登ったという事跡をしのんで建てられた<奥之院 思親閣>に参拝してから、<山の食堂>で山菜そばで朝食をとり(ここまで空腹で挑んでました)下山。次に向うのは日蓮様のご廟所と草庵跡です。三門脇の道を入ってゆくと身延川沿いにございますが、青葉もみじの鮮やかな緑が美しい参道を辿りますと、ポッカリ開けたところに、静かに、厳かに、立派な石塔がまつられております。今日この地を訪れることができた<ご縁>に感謝し、巡業の無事もお願いいたしました。(畏れ多いので写真はナシ)

鞍馬山をめぐった時も感じましたが、信仰の地をゆっくり自分のペースで歩いておりますと、なんだか周りのあらゆるものからエネルギーというのでしょうか、パワーみたいなものをもらったり、逆に自分の中のイヤなものがスーッと消えてゆくような感覚をおぼえます。



ここまでまわって時間はまだ午前11時。いや~早起きっていいもんですね。日差しも強くなる前にめぐり終えることができました。ふたたび<ワイドビューふじかわ>で静岡、それから<ひかり>で名古屋入り。本日梅雨明けだとか。

煩悩ばかりの私ですが、こうしてときには身を清めておりマス。