梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之旅日記’08 塩竈散歩

2008年07月07日 | 芝居
今日は<移動日>。お昼過ぎに仙台にはいりました。
体の調子もよかったので(2日酔いにもならなかったし…)、神社めぐりとオイシイお魚を訪ねて塩竈へ行ってきました。
仙台駅からJR仙石線で約30分、本塩釜駅で下車。駅前の観光案内所でガイドマップを頂いてから、まずは奥州一之宮<鹽竃神社>へ。約200段の石段をヒイヒイいいながら上ると(やはり運動不足がたたっている)、しっとりと落ち着いた趣きの本殿が目の前に広がります。

うまい言葉がみつからないのですが、どこか<やわらかい>雰囲気のお社。雨風に自ずと色褪せた欄干や柱の朱、瓦の青緑、玉砂利の乳白色。どっしりとした偉容というのではなく、静かな風格とでもいったらいいのでしょうか…。社紋が桜なのも、なにかそういう雰囲気を醸し出しているように思ったりも。
境内にある、伊達家寄進の銅鉄合製の灯籠には、お馴染みの<竹に雀>の紋所が。


爽やかな風が吹き過ぎ、静かな時が流れ行く境内でボーッとしておりましたら、ホトトギスが鳴き出しました。初めて生で聞いた、どこか寂しいその声に、なるほど徳川慶喜公も感慨を抱くはずだなぁと思いました。(『将軍江戸を去る』)

続いて同じ山内に鎮座する<志波彦神社>にも詣でてから下山、すぐ近くの<御釜神社>へ。
名前で笑っちゃァいけませんよ。古来より伝わる<藻塩焼神事>で知られ、変異あるときはその水の色が変わるとも、どんな日照りでも枯れることがないとかどんな雨降りでもあふれることがないとか、数百年来の伝説に包まれ、そもそもこの<塩竈>の地名の由来にもなっている、四つの神釜が祀られているのです!
伝説ウォッチャーの私が、これを見過ごせるはずもなく、ドキドキしながら伺ったわけですが、意外とこじんまりした境内に驚き。しかし、社務所のおばあちゃまに、普段は閉ざしている扉を開けて頂き(初穂料をお納めすれば、いつでも開けて下さるとのこと)神釜を目の当たりにいたしますと、なんとも奇妙な形状(直径はそれぞれ1メートル近くはあるのですが、水をたたえる部分はものすごく薄く、釜というより大皿といった感じ)に唸るばかり。
おばあちゃまがとっても親切な方で、藻塩焼の神事のあらましや、境内の他の史跡のご講釈、この神社の辺りまでが古来浜辺であったことなどお教え下さり、勉強になりました。つい先日行われたというその藻塩焼神事で作られたお塩まで頂きまして、これで初穂料が100円となっているのが申し訳ないくらい(最初看板の文字が達筆すぎて、初穂料<百萬圓>と読んでしまい、さすが伝説の釜…! と納得しかけたのですが)。
神釜の写真は、畏れ多くて撮れませんでした。

有難い気持ちでいっぱいとなったところでお腹がすいてきて、まだ夕方でしたが駅近くのお寿司屋さんへ。いや~どのネタも新鮮で美味しいこと! 口にした瞬間、爽やかな磯の香が鼻へ抜けるホヤの酢の物、プリップリの赤貝、塩で頂くマコガレイは旨味たっぷり、金華ガツオの脂ののり具合、<目抜け>というお魚は初めていただきましたが、歯ごたえと、噛むほどに出る風味は今まで味わったことのないもの。これらを地元の酒<浦霞 禅>の冷やでやる幸せのひととき。最後がこの浦霞の酒粕を使ったムースで〆めるんですから、大満足でございます。

ホテルに帰ってからも、立ち寄った市場で買っておいたマグロ中落ちとアジ刺で一杯(もちろん浦霞で)。ありがとう塩竈!