梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

遅ればせながらお返事

2007年09月25日 | 芝居
いよいよ食欲の秋ということで、壁紙を変えてみました。

さて、今日明日はお休み。本日は旅の荷物整理&洗濯、浅草で買い物をしたぐらいで、なんとも面白みのない1日でしたネ…。
取り立てて書くこともないので、旅中に頂いた皆様からのメッセージから、ご質問頂いたことについて、まとめてお答えさせて頂きたいと存じます。日付順で回答してゆきますね。

9月6日 『頭取』さんは誰がなるのか?

歌舞伎興行にとって、大切な職分である<頭取>。楽屋内での庶務全般をとりしきる役目がございますが、役者を経験した者が専任するか、現役の役者が兼任で勤めるのが慣例となっております。両者いずれにしましても、舞台の裏表にわたり、様々な知識をもった方でなくては勤められない、責任の大きい仕事です。
毎日の上演時間の記録、名題、名題下での急な代役の差配、劇場側と役者との連絡のとりつぎ、楽屋の部屋割り…。数え上げたらきりがありません。

9月11 『毛剃』の鬘もヤクの毛か?

自宅で調べた限りではわからなかったので、いずれ正解をお伝えいたします。序幕のチリチリパーマみたいな鬘のことでしょうね。

同日 写真の名札の意味は?

コメント文にもお書き下さった通り、部屋割りを表しております。巡業中は毎回楽屋の間取りも形もかわりますので、それを先に挙げた<頭取>さんが見て判断し、どういうメンバーで使うことにするか決めてくださるのです。そのため、各人ごとの名札が作られており、その都度壁に貼り出すのです。

同日 『草摺引』の二畳台の車輪を外すときは危なくないのか?

私の知る限りではこれで怪我をしたという話はきいたことがないですし、今月この後見をなさった先輩からも、そういう危険さは伺いませんでしたから、さほど危ない作業ではないようですよ。ちなみに『草摺引』では、栓を外すだけでよく、車輪自体は台の中に置きっぱなしでいいのですが、『鏡獅子』になりますと、のちに上手(かみて)に持ち上げて移動するので、後見は栓も車輪も懐にしまうそうで、こちらのほうが手間はかかるとのこと。

9月16日 お休みの日の過ごし方は?

巡業では、宿泊地を移動する行程だけの<移動日>と、移動も公演もない<休演日>、このふたつの<空白の日>がございます。どちらにしましても、各人の責任において、自由行動となりますから、過ごし方は千差万別、皆々思い思いの休暇をすごしております。
温泉に行く人、買い物に行く人、ずーっとホテルで寝てる人…。私はブログに書いた通りです。

9月20日 写真の後ろ姿は誰?

御推量の通り尾上辰巳さんの頭ですね。この巡業では大変お世話になりました。いつも楽しい辰巳先輩は、終始楽屋を和ませて下さいました。

同日 <ボテ>は葛籠? 行李?

これは何とも難しいご質問で、芝居の<ボテ>は相撲の<明荷>と同じような使われ方ですが、明荷についての文章をみますと、行李と表現している例が多いですね。といって葛籠と書いている場合もあるし、なんともいえません。
<ボテ>は<ボテ>と言い切ってしまいたいところですが、えてして葛籠は最終的に漆でコーティングしているのが多いように思いますが、<ボテ>はそういうことはいたしません。私のイメージでは<行李>に近いものと判断しましたので、文中ではそのように書いた次第です。


…あらためまして、旅日記へ多くのコメントを頂戴いたしましたこと、御礼申し上げます。旅中の写真も少し整理ができましたので、ご覧頂けたらと存じます。