梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之旅日記’07 『旅の楽屋は…』

2007年09月06日 | 芝居
小倉【北九州芸術劇場】での2回公演。
大型ショッピングモール、NHKの支局、そして大学校舎までが複合された総合文化施設で、どこか博多のキャナルシティににた雰囲気です。劇場は建物の7階に入っていまして、数ある地方劇場のなかでもその高さは随一でしょう。
楽屋の出入りにはスタッフパスが必要というのがいかにも最近の会館らしいですね。大道具さんや松竹の事務局の方はずっと首から下げっぱなしでしたが、役者は部屋着に着替えてしまいますとね…。まあ見るからに関係者っぽい風体ですから、大目に見てもらいましょう。

さて、毎日毎日劇場を変えての公演では、当然ながら会館によって楽屋の数、大きさ、設備が変わります。毎回そうした諸条件を鑑みながら<部屋割り>をして、役者、地方(じかた)、衣裳さん床山さんといった一行全員の部屋を用意しなくてはなりませんが、これはすべて<頭取>さんのお仕事です。
頭取さんは歌舞伎の興行には必ず存在する役職で、楽屋内の庶務一切を取り仕切るお役目がございます。巡業では常に2人の<頭取>さんがいらっしゃり、お1人は一行と共に行動し様々な御用をなさり、もうお1人は一行よりも先に、翌日の公演場所に赴き、楽屋の具合を見て、部屋割りをし、必要な設備を用意しておく。こういう手順で円滑な巡業の楽屋生活が行われているのです。

私ども名題下は、巡業でも10余名にはなりますから、みんな一緒に、ちょっと大きめの部屋に入ることがほとんど。衣裳さんや床山さんと一緒になることもございまして、そういうときは楽屋での会話も職種を越えてはずみます。
名題下同士の席順は、基本的には先輩から順に決めてゆきますが、それこそ毎回毎回条件がかわりますから、それぞれが勤めるお役、仕事の効率を考えて、仲間内での席割りをしております。

一緒に出前のご飯を食べたり、普段よりも濃い人間関係になるのが巡業。仲良くなったきっかけが旅、ということもしばしばです。