梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之旅日記’07 『ゴロゴロと…』

2007年09月11日 | 芝居
<歌舞伎ダーツ部>の課外活動、普段からやってる人は強い! という当たり前の感想です。男4人で大盛り上がりでした。

さて、写真の物体は何だと思われますか?
答えは『草摺引』で、曾我五郎と舞鶴が乗って出てくる<二畳台>を動かす車輪です。
幕開きの置き唄がすみ、合方になりますと、長唄囃子連中が居並ぶ雛壇が二つに割れ、舞台奥から絵面にキマッた五郎と舞鶴がせり出してきます。この演出を<押し出し>と呼んでおりますが、二人が乗った二畳台は、写真左にあるような、木製の車輪で転がしているのです。
二畳台に車輪をはめ、写真右側にあるような棒を通して固定して準備OK。着付後見2人と、大道具方の手で押し出され、定位置についたあとは、後見が棒を抜き取りますと、車輪が台から外れ、動かなくなるというわけです。

二畳台が舞台で移動するのは、『鏡獅子』での胡蝶の出でも見られますが、『鏡獅子』の方は、後半さらに舞台上手へ台が移動しますから、車輪も撤収しなくてはなりませんが、『草摺引』では舞台中央に据え置きですので、棒を抜き取るだけでよいのだそうです。
至って原始的な仕組みですが、こういう方が、かえって<大時代>な趣きとなるものです。乗っている人間が多少グラグラするくらいが、<歌舞伎>なのでございます。



こちらは二畳台に取り付けたところ。外す時は少し台を持ち上げているそうです。