梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之旅日記’07 『取扱注意!』

2007年09月12日 | 芝居
【丸亀市民会館】での2回公演。
この劇場が、今回の巡業中、楽屋がいちばん小さいところでしょう。荷開けや撤収のときは狭い廊下に人、人、人で大変でした。小道具や大道具の一部も、置き場がないということで、表に出されておりましたが、こういうのもかえって旅らしい光景かもしれません。

さて、役者をはじめ、衣裳さん床山さん小道具さん、巡業に携わる人々の荷物は、全て東京から行李やケースに入れて持ってきているのですが、行く先々の会場で、<現地調達>する品もございます。
衣裳方さんが、衣裳についた白粉を落とすために使うベンジンです。
衣裳さんは毎日毎日何気なく使う品ですが、ご承知の通り揮発性も高く発火の危険もある劇薬。こういうものはトラックでの長期輸送や手持ちでのバス移動というわけにはいかないので、会館側で必要数を用意してもらうのです。(歌舞伎座などでは鍵付きの専用保管庫があります)
ひとくちにベンジンといっても、色々な商品が出回っていますから、いつも同じ品というわけではないようで、ものによっては白粉の落ちが悪かったり、ニオイがとてもきついものがあったりするそう。巡業中の衣裳部屋は、いつもより狭い空間になりますから、ニオイが強いのは困りものだそうです。

かくいう私も、衣裳さんと同じ部屋になった時、ベンジンのニオイで気持ちが悪くなってしなったことがありましたが、衣裳方のみなさんは、どういう品でもきっちり仕事をこなしていらっしゃる。頭が下がる思いです。