梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

No.24 出演者よりメッセージ<中村歌女之丞さん>

2007年07月30日 | 芝居
本日はA班で源蔵女房戸浪を演じられる中村歌女之丞さんからのメッセージです。
大旦那(六世中村歌右衛門)のお弟子さんですから、私とはごくごく近い一門の先輩ということで、公私にわたりお世話になっております。掲載こそ遅くなってしまいましたが、<平成中村座>公演の大変忙しい舞台の合間に、ニューヨークからファックスで届いた熱い文章をご堪能下さい。


「合同公演」としては、平成3年の第2回公演以来、2回目の『寺子屋』の上演です。
私が中村梅花師(梅之注・5代目歌右衛門の頃から修行されてきた脇役の名女形。その豊富な知識と、これぞ<大歌舞伎>の演技の素晴らしさは、いまだに古い先輩から度々伺っています。)に教えて頂いた最後のお役がそのときの<千代>でしたので、とりわけ思い出があります。その後「音の会」でも<千代>をさせて頂き、その2回ともが「寺入り」からの上演で、勉強会として丁寧な上演が、お客様からも好評でした。
しかし、<千代>は寺入りの件であまり底を割ってはいけないと、梅花師からご注意を受けました。

師、中村歌右衛門は『寺子屋』が上演される度ごとに、初代中村魁車(梅之注・戦前戦中大阪で活躍した女形。派手で技巧的な“魅せる”芸風が特色)さんの<戸浪>がよかったと言っておりました。
今回、初めて<戸浪>を勤めさせて頂くことになり、改めて、ひと幕の前半で芝居を盛り上げてゆくことの難しさを痛感しております。どの芝居もそうですが、後半よりも前半のほうが難しいのです!
「寺入り」での千代とのやり取り、「源蔵戻り」の件り、それと幕切れ近くの御台所との久々の対面も、目立たずに、お互い寺子屋へ至るまでの思いを表現しなければならないのです。

今回、監修・指導をして下さる中村吉右衛門師は今月巡業中のお忙しい中を、一座の中村吉六さん、松本錦次さん達にお稽古をしてくださったそうです。
また女形指導の中村吉之丞師も、今月初旬のお暑いうちからご指導下さいました。

C班は、成田屋さんのお許しと監修・指導で、我々の長い間の念願だった『歌舞伎十八番の内 勧進帳』、また藤間御宗家に御指導頂き『今様須磨の写絵』を上演させて頂きます。
A、B班もC班に負けないよう『寺子屋』『乗合船』を勉強いたしますので、何卒御見物下さいますようお願い申し上げます。


中村歌女之丞



よき時代のよき舞台を見知っていらっしゃる先輩に、お芝居の話を伺うのは本当に勉強になります。私には中村歌江さんや歌女之丞さんのような女形の大先輩がそばにいらっしゃるおかげで、一から出直しの女形修行をはじめられたようなものです。聞けるうちに聞くこと、教われるうちに教わること、お互いの都合もございますけれど、こっちがどんどんアンテナを張り巡らして、貴重な情報をキャッチしませんとね!
そういう意味でも、今年の「合同公演」は楽しみなのですよ!