梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

No.7 《発注会議》

2007年07月10日 | 芝居
9日午後5時より、国立劇場内の会議室にて、『合同公演』および『音の会』の<発注会議>がございました。
両会で上演される演目について、各場面各役の扮装、小道具、装置など、何を準備すればよいかを確認するこの会議。衣裳、床山、小道具、そして国立劇場の舞台監督、舞台美術、舞台事務所等、公演に携わるほとんどのスタッフの代表が集まりまして、出演俳優と協議いたしました。

歌舞伎という演劇は、いつも同じやり方しかしないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、衣裳の柄、鬘の結い方や飾り物の種類、装置の飾り方など、実はその都度その都度で変わるのが常。勉強会の舞台でも、演者の好みはもとより、振付、指導の先生方の意向でいくらでも変化するのです。
もっとも、古来からの<定式>が定まっている演目やお役もございますが、そういうものも含め、改めて<今回何が必要か>ということをスタッフさんと相談しておかないと、いざ舞台稽古という段になって、アレが足りないコレが無い、と、とんでもない事態をおこしかねません。
そういう失敗を未然に防ぐと同時に、“自分が勤めるお役”についてより深い知識を得て、責任を負うという意味でも、発注会議のもつ役割は大きいのです。

自分がかぶる鬘は何という結い方なの? 衣裳の色身、柄の名称は? 小道具は何を持ったらいいの? 足袋は何色? 簪の種類は? …調べだすと、あの俳優さんはアレだったけど、この人はコレだしなァ、じゃあ今回はどちらにしよう? と、考え込んでしまうことばかりなのです。『演劇界』のバックナンバ-や各劇場の筋書写真を資料とし、もちろん現役の衣裳方さん床山さんにも教えを乞い、最終的には指導の先生方のご指示を仰ぎ、ついに勉強会用の<附け帳>(いわば、総出演者の発注リスト)が出来上がるというわけです。

私が勤めさせて頂く『乗合船』の<鳥追い>役も、

『鬘:割れ島田
 衣裳:縞柄黒繻子襟の着付、黒繻子の帯に浅葱縮緬のしごき、緋縮緬の帯揚げ、襦袢、蹴出し、足は素足
 小道具:三味線、撥、編み笠、履物は無し、縮緬の踊り手拭(柄は好み)』

…という風に、ごく簡単に書いてもこのようになります。

このような会議に出席させて頂く度に、まだまだ勉強しなくてはいけないことが山ほどあることを自覚いたします。先輩の女形さんは、皆さん結い方や飾りの名、衣裳の柄など本当にお詳しい! 私も、少しでも早くに、そういう<心得事>をマスタ-したいものでございます。